巨大金融システムのレジリエンスをどう強化するか
インフラ監視に潜む“属人化”リスク 三井住友FGが「Datadog」を選んだ理由
システムの複雑化に伴い、インフラ監視の属人化は障害や性能劣化の見落としリスクを招く。三井住友FGが、オンプレミスとクラウドにまたがる巨大金融システムの監視ツールに「Datadog」を採用した狙いとは。
サイバー脅威の高度化やAI技術の進展に伴い、企業システムはかつてないスピードで変化と複雑化を続けている。特に金融機関のシステムにおいては、脆弱(ぜいじゃく)性への迅速な処置や継続的な改善を進めつつ、高い信頼性と安定性を維持することが喫緊の課題となっている。
ここで直面するのが、オンプレミスサーバとクラウドサービスにまたがるインフラやアプリケーション監視の壁だ。特定の担当者の経験や知見に依存した運用体制では、障害や性能劣化の予兆を見落としたり、原因特定に時間を費やしたりするリスクがつきまとう。システム全体の状況をリアルタイムに把握し、変更やパッチ適用の影響を速やかに検知する仕組みが不可欠だ。
こうした課題を抜本的に解決するため、三井住友フィナンシャルグループ(SMBCグループ)は、グループ各社で一元化するオブザーバビリティ(可観測性)ツールとして、「Datadog」の採用に踏み切った。同グループがDatadogを選定した背景には、どのような狙いがあったのか。
巨大システムの監視に潜む「属人化」をいかに打破するか
SMBCグループは、三井住友銀行や日本総合研究所などグループ各社の共通システムとしてDatadogを採用した。2026年10月1日、Datadog社が発表した。オンプレミスサーバとクラウドサービスにまたがるインフラ、アプリケーション、ログ、ネットワークを単一のツールで一元的に可視化し、障害や性能劣化の予兆検出、原因分析の迅速化を図る。AI技術による運用の自動化・高度化も進め、特定の担当者の経験や知見に依存しない運営体制の構築を目指す。
生成AIやフロンティアAI(最先端AIモデル)の進展を背景に、企業システムはこれまで以上の速さで変化している。サイバーセキュリティの脅威も高度化しており、金融機関には、迅速な脆弱性修正や継続的なシステム改善を進めながら、高い信頼性と安定性を維持することが求められる。システム変更やパッチ適用の影響を速やかに把握し、障害や性能劣化の兆候を早期に検出するためには、システム全体の状況をリアルタイムに把握する仕組みが欠かせない。オブザーバビリティは、金融システムのレジリエンス(回復力)を支える基盤として重要性を増している。
SMBCグループはこうした課題を解決するため、Datadogをグループ共通の統合オブザーバビリティツールとして採用した。採用に当たっては、オンプレミスサーバかクラウドサービスかを問わず、インフラ、アプリケーション、ログ、ネットワークを単一のツールで一元的に可視化できる点を評価した。AI機能による運用の自動化・高度化、大規模なマルチクラウド構成に適合する拡張性、AI分野における継続的な機能強化も選定要素とした。
日本の金融機関に求められるガバナンス要件への適合を可能にする要件として、Datadog社が2023年に開設した日本国内のデータセンターインスタンスも評価した。
利用を予定する機能は以下の通りだ。
- Infrastructure Monitoring
- Application Performance Monitoring(APM)
- Log Management
- Real User Monitoring(RUM)
- Network Device Monitoring
- Network Path
- Bits AI
これらの機能によって、オンプレミスシステムとクラウドサービスを含む多様なシステムの情報を単一のツールで把握し、ネットワーク機器を含めたエンドツーエンドの観測を可能にする。障害や性能劣化の予兆検出、影響範囲の特定、原因分析の迅速化を図る他、システム変更やセキュリティ対策に伴う影響も可視化する。金融システムの安定運営とレジリエンスの向上につなげる考えだ。
DatadogのAI機能であるBits AIは、インシデント発生時の調査や運用業務の効率化、自動化に活用する。担当者個人の経験や知見に依存しない運営体制を構築し、障害対処の迅速化と高度化を目指す。
(※)この記事は本多和幸氏と谷川耕一氏によるIT事例メディア「CaseHUB.News」に掲載された「SMBCグループ、共通のオブザーバビリティ基盤にDatadog 金融システムの安定運営へ」(2026年10月2日)を、TechTargetジャパン編集部で一部編集し、転載したものです。
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