DB一元化の裏側
「止められないDB」を無停止でGoogle Cloudへ オーケーの決断とリスク回避術
店舗業務を支えるデータベースの移行において、長時間のシステム停止は致命的だ。ダウンタイムを最小化しながら新旧システムを一元化したオーケーは、どのように技術選定と移行作業を進めたのか。
企業のビジネスを根底で支えるデータベースのモダナイゼーションは、IT部門にとって避けては通れないプロジェクトだ。しかし、現場の業務と密接に結び付いているシステムの場合、移行に伴う長時間のシステム停止が許容されず、レガシーな状態のまま塩漬けになるケースは少なくない。
ディスカウントスーパーを展開するオーケーも、この壁に直面していた。同社は急成長するネットスーパー用と、日々の店舗運営を支える生鮮業務用の2つのコアデータベースを抱えていた。ネットスーパー用データベースはクラウドサービス内でデータがサイロ化しており、生鮮用データベースは長年稼働する“絶対に止められない”システムだった。
この課題に対して、オーケーは2つのデータベースを「Google Cloud」に一元化する決断を下す。長時間のシステム停止を伴う全面移行が不可能な状況下で、同社はいかにして業務への影響を最小化し、次世代のデータベースを構築したのか。
「止められないDB」をいかに移行するか オーケーの技術選定
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ディスカウントスーパーのオーケーは、ネットスーパー用と店舗の生鮮業務用の二つの基幹データベースの移行先を、Google Cloudの「AlloyDB」に統一した。移行はKDDIアイレットが支援した。2026年10月5日、Googleが公式ブログで公開した。システムを止められない生鮮のデータベースは、移行支援サービスで差分データを継続して書き込む方式を取り、ダウンタイムを最小限に抑えた。今後は、AI機能による検索や自然言語でのデータ活用を進める。
オーケーは関東と関西に180店舗以上を展開し、2020年にGoogle Cloudを使い始めた。オンプレミスのデータウェアハウスを「BigQuery」に移し、2021年にはネットスーパーを始めた。会員向けのスマートフォンアプリケーションも、「Firebase」で短期間に作った。こうした取り組みの一方で、システムの中心にある2つのデータベースの刷新が課題になっていた。
1つ目のネットスーパー用データベースは、将来の法人利用も視野に入れ、増えるトランザクション遅延なく処理できるスケーラビリティと、インフラ運用費用の最適化が求められた。Google Cloudとは別のクラウドサービスで稼働し、データが各システムにサイロ化しており、分析システムやAIツールと連携して、顧客にリアルタイムで個別の提案をする目標があった。2つ目の生鮮用データベースは、各店舗のマスター情報や仕入れ、棚卸し、販売実績を蓄積し、全店舗からの参照や帳票出力を担う。止められないシステムで、長年のオンプレミスインフラから脱却するに当たり、新旧が併存する間のデータの一貫性と、現場の業務に影響する一斉停止の回避が問われた。
オーケーは、基本方針の決定からネットワークの構築、概念実証(PoC)、データ移行、本番切り替えまでをKDDIアイレットに依頼した。Google Cloudの導入支援と運用最適化の実績を評価した。両社は2つのデータベースの移行先を統一し、AlloyDBを共通システムにした。KDDIアイレットの齋藤寛隆氏は、選定理由を5点挙げる。止められない業務を支える99.99%のサービスレベル契約(SLA)と約15秒のフェイルオーバー、標準的な「PostgreSQL」比で4倍以上のトランザクション処理性能、オートバキュームなどの自動化による運用負荷の削減、すでに使っているBigQueryとの親和性、移行支援ツールの充実だ。
移行では、オンプレミスのデータセンターや他社クラウドとGoogle Cloudを、「Partner Interconnect」の専用線で結び、インターネットを経由しない閉域網にした。ネットスーパー用は一部データの移行で、システムを止めることができたため、既存のPostgreSQLからエクスポートし、AlloyDBにインポートした。生鮮用は止められないため、「Database Migration Service」(DMS)を使い、従来のデータベースのトランザクションログから差分を解釈して、新しいデータベースに継続して書き込んだ。クエリを発行しないため、稼働中のデータベースへの負荷を抑えられ、差分だけを転送して、切り替え時のダウンタイムを極小化できると判断した。スキーマ変換はDMSの機能と「Gemini」の変換提案で効率化し、DMSが変換処理できない日本語のカラム名は、英数字の仮テーブルを経由して、移行後に再設定した。移行後のデータはGoogle Cloudの検証ツールで確認した。
BigQueryとの連携には「Datastream」を使い、セキュアな通信を保ったまま、AlloyDBからBigQueryへほぼリアルタイムにデータを連携できるようになった。従来、生鮮の現場では、担当者が独自のツールでデータベースからデータを抽出し、手作業で表計算ソフトウェアの集計や状況の確認をしていた。新たなシステムでは、BigQueryに生鮮のデータを集約し、天気情報や人流データ、客数予測といった外部データと掛け合わせることが可能になった。店舗の売り上げ情報を即座に反映して製造の推奨数を算出し、生鮮領域のロス削減と売り上げ拡大に向けた合理化を図る。
データ活用を定着させるため、AI機能をエージェント(自律)化し、自然言語でデータを使える取り組みも始めた。少子高齢化による人手不足を補う狙いもある。商品検索では、従来のキーワード検索で見つけにくかった「コレステロールが気になる人向けの油」といった問いにも、「AlloyDB AI」で意味や文脈をくんだ検索や類似商品の提案ができるようにする。
オーケーIT本部の荒川健児副本部長は「デジタル上で店舗の商品を見つけやすくすることは、顧客体験を向上させ、売り上げを伸ばす意味でも重要だ。今後もKDDIアイレットやGoogleのサポートを受けながら先進的なITを活用し、顧客に提供する価値を高め続けたい」と話す。
(※)この記事は本多和幸氏と谷川耕一氏によるIT事例メディア「CaseHUB.News」に掲載された「オーケー、止められない生鮮DBをAlloyDBへ移行 ネットスーパーと基盤を統一」(2026年10月7日)を、TechTargetジャパン編集部で一部編集し、転載したものです。
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