事業継続のリスクに
半数超のひとり情シスが告白「自分が休むとシステムが止まる」
アイアットOECが実施した調査によると、社内IT業務を1人で担う「ひとり情シス」の過半数が、自身の不在でシステム停止や業務への支障が生じると答えた。ひとり情シスの属人化を促進する要素とその対策を紹介する。
DX推進やセキュリティ対策、クラウド運用など、企業の情報システム部門(情シス)に求められる役割は年々広がっている。一方で、人員増強が追い付かず、社内のIT業務を実質1人で担う「ひとり情シス」に依存する企業は少なくない。
ノーコード業務アプリ作成ツール「@pocket」を提供するアイアットOECが実施した調査によると、ひとり情シスの半数が直近1~2年で業務量の増加を実感していることが分かった。さらに、自身が不在になった場合に「会社のシステムが停止し、業務に支障が出る」と回答した人は半数を超えており、属人化の深刻な実態も浮き彫りになった。
本稿では、調査結果から見えてきた「ひとり情シス」を追い詰める3つの負担を整理する。
ひとり情シスを追い詰める3つの負担とは
負担1.終わりの見えない業務量の増加
まず、「直近1~2年で、ひとり情シスとして担当している全体の業務量はどのように変化したか」を尋ねたところ、「やや増加した」が29.1%、「大きく増加した」が20.9%となった。両者を合わせると50.0%に達し、ひとり情シスの半数が業務量の増加を実感していることになる。
一方、「変わらない」と回答した人も25.5%いたが、情シスを取り巻く環境を考えると、業務量が減少した企業は少数派といえる。
近年は、クラウドサービスの管理、ゼロトラストや多要素認証(MFA)などのセキュリティ対策、生成AI活用支援、DX推進プロジェクトなど、情シスに求められる業務範囲は拡大傾向だ。従来のヘルプデスクやインフラ運用に加え、新たな役割が積み上がることで、1人当たりの負担は増加し続けていると考えられる。
負担2.専門外の領域まで1人で背負う
では、ひとり情シスは具体的にどのような課題を抱えているのか。
「現在抱えている業務上の問題」を尋ねたところ、最も多かった回答は「業務量が多く負荷が高い」(36.4%)だった。これに続き、「専門外のシステムも一人で対応しなければならない」(35.2%)、「社内に相談できる相手がいない」(33.9%)が上位となった。
この結果から見えてくるのは、単純な人手不足だけではない問題だ。
近年の情シスは、ネットワークやサーバの運用だけでなく、SaaS管理、セキュリティ、データ活用、AI導入支援など幅広い知識が求められる。しかし、ひとり情シスの場合、それら全てを1人で対応しなければならないケースがある。
社内に同じ専門領域を持つメンバーがいなければ、判断やトラブル対応を相談できる相手がいない状況となる。結果として、業務負荷だけでなく心理的な負担も大きくなる恐れがある。
負担3.「自分が休めない」という属人化リスク
調査結果の中でも特に注目したいのが、不在時の影響に関する回答だ。
「自身が不在となった場合、会社のシステム運用にどのような影響が出るか」を尋ねたところ、「一部のシステムが停止し、業務に支障が出る」が37.3%、「完全に停止し、業務に重大な支障が出る」が17.3%だった。
両者を合わせると54.6%となり、半数以上のひとり情シスが、自身の不在によってシステム停止や業務影響が発生すると考えていることになる。
これは担当者の負担の問題ではなく、企業の事業継続リスクでもある。
担当者の急病や退職、長期休暇などによって重要システムの運用や障害対応が滞れば、業務停止やサービス提供の遅延につながる可能性がある。特定の個人しか把握していない設定情報や運用手順が存在する状態は、企業にとって大きなリスクといえる。
7割が属人化を問題視、それでも解消できない現実
こうした状況を当事者自身も認識していることが調査から分かった。「自身の業務が属人化していることに対し、解消の必要性をどの程度感じているか」を尋ねたところ、「非常に感じている」が31.2%、「やや感じている」が39.7%となり、合計70.9%が属人化の解消を必要だと考えていた。
では、属人化を解消するために必要な対策として、どのようなものが求められているのか。
「属人化や業務過多を解消するために必要な取り組み」を尋ねた質問では、「IT人材の新規採用・増員」(38.8%)が最も多かった。続いて、「マニュアルや仕様書の整備」(35.8%)、「DXツールの導入」(34.9%)が挙がった。
興味深いのは、人材確保だけでなく、ドキュメント整備やツール活用もほぼ同水準で支持されている点だ。ひとり情シス自身も、「人を増やせば解決する」という単純な話ではなく、業務を標準化し、属人化を防ぐ仕組みづくりが必要だと考えていることがうかがえる。
求められるのは「ひとりで回す」から「誰でも回せる」環境への転換
調査では、「現場主導で業務を一元管理できる環境が整うことは、自身の業務負担軽減につながる」と回答した人が72.7%に達した。
情シス人材の不足はすぐには解決しないことが予想される。そうした中で重要になるのは、特定の担当者の頑張りに依存する運用ではなく、業務の標準化やドキュメント整備、ツール活用によって「誰でも回せる仕組み」を構築することだ。
今回の調査は、ひとり情シスの問題が個人の働き方の問題ではなく、企業全体のIT運営や事業継続に関わる課題であることを改めて示したと言えるだろう。
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