マイクロソフトはグーグルに勝てるか?:IT変革力【第17回】
Web2.0で始まった無料ビジネスソフトの隆盛が相次ぐなか、ソフトウェア産業のリーダーの座を巡る戦いがグーグルとマイクロソフトの間で始まろうとしています。Web2.0というコンセプトにおいて、先んじられているグーグルへのマイクロソフトの対抗策とはどのようなものでしょうか?
2005年11月にマイクロソフト会長のビル・ゲイツ氏が第2の聖戦(ジハード)を唱えて以来、マイクロソフトは大きく変わり始めています。筆者も先日、あるセミナーでマイクロソフトの執行役員から直接、戦略的な話を伺いました。どうやらグーグルと本気でぶつかるつもりのようです。すでに今年の夏のマイクロソフト恒例社内セミナーには、ゲイツ氏の姿はなく、引退への準備と戦略転換とともにマイクロソフトの世代交代が確実に進んでいるという話でした。昨年秋から、マイクロソフトはWeb2.0に対して本気で取り組み始めているようです。一方、グーグルも準備を始めていると言われています。
今年の秋ごろからマイクロソフトとグーグルの間でソフトウェア産業のリーダーの座を巡る戦いが実際に始まろうとしています。
本件に関する参照記事は以下の通りです。
さてWeb2.0というコンセプトにおいては、グーグルが花形企業として扱われており、古いWeb1.0企業の代表がマイクロソフトということで敵役になっています。
ではまずマイクロソフトの側は、Web2.0及び直接の相手であるグーグルからの脅威をどのように捕らえているのでしょうか。
広告費で稼げ!
グーグルの強みでありマイクロソフトの弱点と言われていたのは、広告費などで稼ぐインターネット事業でした。これはMSNと呼ばれている事業です。その性格は消費者中心の事業であり、マイクロソフトが相対的に得意とするビジネス分野ではない訳ですね。無論、Windowsは家庭にも多数入っており、Xboxなどのホームエンターテイメント部門にも力を入れていますが。
さてここに来て、マスメディアからインターネットへの広告費のシフトが本格的に始まりました。マイクロソフトの試算では、2005年の世界中の広告費総額は約50兆円であり、2010年までにその10%がインターネットにシフトすると考えられています。
これはマイクロソフトの世界規模での全体売り上げにかなり近い額という話です。
インターネットにシフトする広告費の大部分をグーグルに持っていかれるというのがマイクロソフトの第一の危機感でした。
Web2.0の無料経済を乗り切れ
さらにマイクロソフトの危機感を強めているのは、OSS(オープンソースソフトウェア)といわれるボランティアにより開発される無料のビジネスソフトの隆盛です。さらにワープロソフトや表計算ソフトなどのオフィス製品の領域には、グーグル・オフィスを発表してグーグルが進出を始めています。これは基本部分が無料で提供されると言われています。
マイクロソフトはWeb2.0がボランティアと広告料により支えられる経済、即ち原則、無料経済という要素が強い点は良く理解しています。従来の同社ソフトウェア・ビジネスモデルが無料のITサービスに侵食されるリスクですね。
電子メールソフトの「Microsoft Outlook」などは近い将来、廃止すると言い始めたマイクロソフトですが、ライセンス料で稼ぐと同時に広告料でも稼ぐと主張し始めました。
これはマイクロソフトがグーグルとのオフィス製品の(極端に言えば)無料戦争を戦う覚悟ができているということを意味します。(無論、マイクロソフトはここまでは明確に言い切りませんでしたが)無料の部分は広告費でカバーするというのがグーグル戦略です。その世界にマイクロソフトも入ろうとしているのでしょう。
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