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大手卸売業の事例に学ぶ流通業のCIOに求められる適性EDIは流通業全体のインフラを目指せ【第8回】

入手した情報をいかに活用するか? そうした観点でITを客観的にとらえなければ、企業の成長には結び付かない。その役割を担うCIOに求められる適性を、大手卸売業Paltacの特別顧問である山岸十郎氏の取り組みを基に考える。

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 ITが進化した現在、多くの流通企業では毎年情報システム関連に多くのコストを投入していると思う。しかし、その大半が既存システムの保守や維持管理に費やされており、新しいビジネスを創出するまでには至っていないケースは少なくないのではないだろうか。

 そこでわたしは、「EDIも使い方次第で問題解決ツールとして機能させることができる」「ITをうまく活用すれば、経営上の問題解決も図れる」など、これまで幾つかの提案をしてきた。競争が激化する市場で優位性を確保するためには、EDIやITで入手した情報を“いかに活用するか”が、企業の成長を左右する重要なキーになると思うからである。

人間に備わった認識能力をフル稼働する

 ITを知的に活用するためのベースとなるのは、人間だけに備わった認識能力であると、わたしは考えている。

 現在は、印刷された文字や手書きの文字を読み取る光学式文字読み取り装置(OCR)や、人の顔を認識するカメラ、人や障害物を認識するロボットのように、人間の認識能力に近いことができる製品が続々と登場している。しかし、どれほど精巧に作られたロボットだとしても、現状に潜む問題を発見したり、それを解決するまでには至っていない。

 例えば、「売り上げの伸びが悪いこと」はコンピュータでも認識することはできるだろうが、その理由について、「天候のせいだ」「営業方法がまずいからだ」「商品に魅力がないからだ」などと思いを巡らせることができるのは、人間ならではの特権、多彩で高度な認識能力である。

 ビルのエレベーターが遅く、待つのにイライラするという不満に対しても、この認識能力を働かせて、「待ち行列を分析し、スムーズに人が流れるようなプログラムを作ったらどうか」「エレベーターホールに鏡や花を配置しては?」「いやいや、人の流れ自体を制限すべき」というようなさまざまな問題解決策を考案することができる。

 それらの中から、どれが最も効果的な方法かを探るために実験を行い、問題解決を図っていくのが仮説検証である。当然ながら、その際は相応のコストが発生する。

 このときに有効活用できるのが今のITである。人とコンピュータとが有機的に融合するマンマシンインタフェースが格段に進歩し、PCに人間的価値判断をいくらでも盛り込めるようになってきたという環境を生かして、コストや時間を節約しながら仮説検証を行うわけである。

 新薬の開発では、AとBの物質を混合して化学物を作った場合、それはどういう特性を持ち、どのように人体に働きかけるかという、ドラッグデザインという手法が用いられている。また、ビル建設の構造計算においては、模型を作ることなく耐久性や耐震性はどうかという検証が行われている。実物を使って検証を行うには、物を用意するためのコストが掛かるが、ITを駆使すれば数値の設定を変えるだけでさまざまな問題解決法が検討できるというメリットがある。

 流通業のメーカーでは、マーケティング分野での仮説検証にITやEDIで得た情報を活用している企業もあるだろう。新商品のサンプルを作って消費者に配り、その反応を見るという旧式の手法ではなく、インターネットや携帯電話を使ってスピーディーに市場調査を行い、コストを低減しつつ、目的を達成するという方法が多く用いられているだろう。調査の結果、「水虫に悩んでいる」「髪の傷みが激しい」「部屋のにおいが気になる」など、消費者の多様なニーズが浮き彫りになり、それらを解決する商品開発へとつなげていくのである。

 小売店では、どういう特性の人が、どういう買い物をしているのかが分かるID-POSデータの活用が進んでいる。これを利用すれば店舗ごとの顧客特性も把握できるほか、売れ筋、死に筋商品、ブランドスイッチの見極めもできる。さらに、入手したデータを基に、販促計画やマーチャンダイジング(MD)計画、運営計画へと発展させることができるのも、大きな魅力といえる。

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