PaaSを3つに分類
注目のPaaSを一挙に紹介! ~Cloud Foundry、OpenShift、Herokuなど
Cloud FoundryやOpenShift、Herokuなど、今注目のPaaSを一挙に紹介する。主要コンポーネント、対応言語やデータベース、想定用途などをまとめた。
クラウドサービスのIaaSレイヤーの競争激化に伴いコモディティ化が進み、クラウドサービスの主戦場がPaaSレイヤーに一部シフトしつつある(関連記事:2011年クラウド業界を振り返る ~IaaSの発展、混沌としたPaaS業界の行方)。PaaSはIaaSレイヤーとの連携や一体化が不可欠であり、PaaSの種類によって提供される機能やサービスモデルは大きく異なる。
本稿では「Open PaaS」「複数のIaaSに対応するPaaS」「Proprietary PaaS」の3カテゴリに分類し、クラウド利用促進機構(CUPA)とNTTコミュニケーションズが共同で開催したオープンクラウドキャンパス テクノロジーミーティングのアンケートでユーザーの関心度が高かったPaaSを中心に、サービス概要を解説する(Open PaaSとProprietary PaaSの違いについては、オープンソースのPaaSはなぜ注目されるのか ~Open PaaSの魅力と課題を参照)。
PaaSを3つに分類(☆印は、記事で扱うサービス)
| PaaSの分類 | 主要なPaaS |
|---|---|
| Open PaaS | ・Cloud Foundry(ヴイエムウェア) ☆ ・OpenShift(レッドハット) ☆ |
| 複数のIaaSに対応するPaaS | ・DotCloud ☆ ・Heroku(セールスフォース・ドットコム) ☆ ・C4SA(リアルグローブ) ☆ |
| Proprietary PaaS | ・AWS Elastic Beanstalk(Amazon.com) ・Google App Engine(グーグル) ☆ ・Force.com(セールスフォース・ドットコム) ☆ ・Windows Azure(マイクロソフト) |
Cloud Foundry(ヴイエムウェア)
Cloud FoundryはヴイエムウェアのOpen PaaS戦略(文末コラム参照)に基づいて2011年4月に発表されたオープンソースのPaaSソフトウェア(Rubyで実装)で、ヴイエムウェアが買収したSpringSourceのJavaプラットフォーム「SpringSource Cloud Foundry」がベースになっている。複数のプログラミング言語や複数のフレームワーク、複数のデータベースなどに対応する(関連記事:楽天がプライベートPaaSを構築――「Cloud Foundry」を選んだ4つの理由)。
Cloud Foundryは、
(1)Cloud Foundry
(2)Micro Cloud Foundry
(3)Cloud Foundry for Enterprise
の3つのサービス(製品)を提供している。以下で順番に解説する。
(1)Cloud Foundry(PaaSサービス)
Cloud Foundryには、オープンソースコミュニティー(CloudFoundry.org)とβ版のパブリックPaaSサービス(CloudFoundry.com)がある。Cloud Foundryは、オープンソースのPaaSフレームワークで、特定のIaaSに依存せず、複数のプログラミング言語やフレームワークに対応している。また。パブリッククラウドおよびプライベートクラウドの双方に導入でき、主にアプリケーション開発者の利用を対象としている。現在は、β版のため無料提供となっているが、正式版では有償提供を予定している。
(2)Micro Cloud Foundry(PaaS製品)
Micro Cloud Foundryは、Cloud Foundry環境を開発者のデスクトップにある仮想マシン上で再現する手軽な開発環境を構築するソフトウェアで、デプロイするアプリケーションの開発・テスト環境として利用できる。Cloud Foundry 2011年8月にβ版をリリースしている。
(3)Cloud Foundry for Enterprise(PaaS製品)
Cloud Foundry for Enterpriseは、企業のプライベートクラウドへの導入や、クラウドプロバイダーがパブリッククラウドでPaaSサービスを提供することを目的に、商用版として提供を予定している。
最後に、Cloud Foundryのアーキテクチャについて紹介する。コアシステムは「Cloud Foundry(CF) Kernel」で、全コンポーネントの構成管理や制御コントローラーの役割を果たす「CloudController」、全てのユーザーアプリケーションを動かすエージェントの「DEA(Droplet Execution Agent)」などから構成される。また、「Orchestrator」はIaaS上に構築・運用・監視する部分で、Cloud Foundryには含まれないため、特定のIaaSに依存しない環境となっている。
OpenShift(レッドハット)
OpenShiftは、レッドハットが2010年11月に買収したクラウド配信・管理・監視ツールのMakaraがベースとなっており、Java EE6をサポートする数少ないPaaSである。現在はオープンソース化していないが、今後はオープンソース化を予定している。Cloud Foundryと同様に、特定のIaaSに依存せず、複数のプログラミング言語や複数のフレームワーク、複数のデータベースなどに対応している。
OpenShiftは、
(1)OpenShift Express
(2)OpenShift Flex
(3)OpenShift Power
の3つのサービス(製品)を提供している。以下で順番に解説する。
(1)OpenShift Express(PaaSサービス)
OpenShift Expressは、共有ホスティングモデルでクラウドベースのアプリケーション環境を提供する(スケールアウトには非対応)。具体的には、クラウド上でアプリケーション環境を作成・実装・管理するためのコマンドラインインタフェースを提供する。Gitリポジトリでアプリケーションを管理し、Gitリポジトリにプッシュすると、即アプリケーションの変更が反映される。主に、手軽に動くアプリケーション開発での利用を想定している。
(2)OpenShift Flex(PaaSサービス)
OpenShift Flexは、専用ホスティングモデルでクラウドベースのアプリケーション環境を提供する(オートスケール対応)。また、Amazon Web Services上のアプリケーション環境を作成・実装・設定・管理・監視するためのGUIを提供する。将来的にはRed Hat Certified Cloud Providerプログラムによって、他のクラウドプロバイダーにも対応する予定である。企業利用を想定した本格的なアプリケーションを開発するプラットフォーム構築に適している。
(3)OpenShift Power(PaaS製品)
OpenShift Powerは、クラウド上で利用できるLinuxベースのアプリケーション環境を提供する。カスタマイズされたアプリケーションをクラウドにデプロイでき、OS設定のレベルまでフルカスタマイズが可能なアーキテクチャとなっている。仮想マシンにルートでアクセスでき、PaaS上でC言語のバイナリアプリケーションも扱える。取引システムやモデリングシステム、決済システム、メッセージングアプリなど、主に企業利用を対象としている。
Heroku、Force.com(セールスフォース・ドットコム)
Herokuは、Salesforce.comが2010年12月に買収した。買収当時はRuby専用のPaaSだったが、Javaなど多言語への対応を進めている。Heroku上でWebアプリケーションを開発し、すぐにリリース・更新が行えるのが特徴だ。作成したアプリケーションは、さまざまなモバイルデバイスに対応し、Facebookなどのソーシャルネットワーク上での実行も可能である。バックエンドのIaaSにはAmazon EC2を利用している。オープンかつスタンダードな技術を採用し、標準ではDyno(アプリケーションサーバ)、PostgreSQL(データベース)、memcached(メモリキャッシュ)を使う。2011年9月には、Facebookアプリのデフォルトの開発プラットフォームとなるなど、主にソーシャルアプリやモバイルアプリを対象としている。
一方、Salesforce.comはHerokuの他にForce.comも提供している。Force.comは、GUI操作で業務アプリケーションを開発でき、APIを介して他のアプリケーションと接続できる。また、全てのアプリケーションにモバイル機能とソーシャル機能が含まれる。プログラミング言語はApex、フレームワークはVisualforce、Force.com IDEなど、データベースはDatabase.comと、対応するサービスが独自のものに限定されたProprietary PaaSである(関連記事:豊富なテンプレートを備えたアプリケーションプラットフォーム「Force.com」)。
DotCloud
DotCloudは、“One Platform, Any Stack”というビジョンを掲げ、2011年6月から正式サービスを提供している。
開発者からニーズの高いさまざまなプログラミング言語やデータベースをサポートし、開発者はそれらを自由に選択して利用できる。ダウンロード可能な「DotCloud Command-Line Interface(CLI) client」を提供する。HA(高可用性)とダイナミックスケーリングを訴求する。IaaSはAmazon EC2の複数のAvailability Zonesで運用されている。料金体系は2サービスまで無料で、4サービスまでの「Pro」は月額99ドル、最上位には「Enterprise」を提供しており、個人開発者だけでなく企業の開発利用も対象としている。
C4SA(リアルグローブ)
C4SAは、東京大学発技術ベンチャーのリアルグローブが提供するLAMP(Linux、Apache、MySQL、PHP)という一般的なソーシャルアプリケーションのシステム構成に特化した、独自開発のクラウドホスティングサービスである。2011年にNTTコミュニケーションズのオープンラボ第2期パートナーとして認定された。主に、手軽に利用できるソーシャルアプリ開発者やキャンペーンサイトなどを対象としている。
Google App Engine(グーグル)
Google App Engineは、トラフィックやデータストレージの増加に合わせてスケーリングができるなど、スケーラビリティの高い環境でアプリケーションを開発運用できる。一方、実行できるプログラミング言語、フレームワーク、データベースの種類は限定される。プログラミング言語はPythonおよびJavaで、ランタイム環境を提供。データベースはApp Engineデータストアの他、MySQLを使えるようになるなど、エンタープライズ環境も想定したサービスの拡充を進めている(関連記事:「Google App Engine」企業利用におけるさまざまな課題)。
2011年11月にEclipse用Googleプラグインのオープンソース化を発表した。また、プレビュー版から正式版への移行を発表し、99.95%のSLAと新料金を発表している。
まとめ
本稿では紹介できなかったが、PaaSサービスには、MOGOK(インターネットイニシアティブ)、Windows Azure(マイクロソフト)、AWS Elastic Beanstalk(Amazon.com)、Kintone(サイボウズ)などがある。
Cloud FoundryなどのOpen PaaSの登場により、プログラミング言語やフレームワークなど、開発者の選択肢が豊富になっている点は大きなメリットとなる。一方、利用する言語が特定されており、スケール性の高い安定したサービスを開発する場合は、Google App EngineなどのProprietary PaaSが適しているといえる。
今後、Open PaaS製品を採用したクラウドサービスの登場も想定されるが、開発者などの利用者は、利用目的に合わせてOpen PaaSやProprietary PaaSなどを選択するため、両者が共存する形となるだろう。
林 雅之(はやし まさゆき)
NTTコミュニケーションズ株式会社 勤務
2007年より主に政府のクラウド関連プロジェクトや情報通信政策の調査分析、中堅企業のクラウド案件等を担当。
2011年6月よりクラウドサービスの開発企画やマーケティング等を担当。
国際大学GLOCOM客員研究員、社団法人クラウド利用促進機構(CUPA) アドバイザー。オープンクラウド実証実験タスクフォース OpenPaaS研究会チェア。
著書『「クラウド・ビジネス」入門』
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