“会社の発展を邪魔する男”から称賛の的へ
「私物スマホ禁止」をやめたら、会社も私も元気になった
CTOを務めるニール・ニコライセン氏は、私物のアプリや端末の利用を厳格に制限していた。だがそれは過去の話だ。同氏は今、過度な管理からかじを切り、“BYOxライフ”を楽しんでいる。
ITを面白くするものは、同時にITの脅威にもなる。あらゆるものに変化する可能性や必然性があり、しかもその変化は急激だ。
今やソーシャルはわれわれのあらゆる行動に組み込まれている。モバイルネットワークはより高速になり、モバイルデバイスはよりスマートになっている。クラウドサービスの広がりと信頼性は着実に向上している。こうした状況がもたらす変化とともに、時代を転換する流れが見えてきた。IT部門は、アプリケーションも、それを実行するデバイスも、もはやコントロールできなくなりつつあるのだ。
「管理しないこと」が信頼を生む
数年前まで、私は自分が管理する環境やアプリケーション、ユーザーをコントロールするために戦ってきた。誰かが会社のIT資産リストにない経費精算アプリケーションをダウンロードしたことをキャッチしたら、そのアプリケーションをクラッシュさせる方法を考えた。誰かが未承認のデバイスを購入したら、そのデバイスを会社のサービスに接続できないように妨害した。
その結果、私は“会社の発展を邪魔する男”という、ありがたくない名声をいただいた。人々は私と私のポリシーを悪し様に罵り、私のわら人形を火に投じた。廊下を歩いていると、誰もがあからさまに私から顔を背けた。
多少の誇張はあるが、私はこうした状況に直面してすぐに、機敏で先見の明があるIT責任者としての立場から足を踏み外していることに気がついた。そう認識した私は白旗を上げ、“Bring your own anything”(BYOx:あらゆる私物の持ち込み)のアプローチを受け入れたのだ。私を驚かせたのは、全てをコントロールすることを諦めた結果、私にもたらされた自由と信頼の大きさだった。
BYOxには幾つか素晴らしい側面がある。“理解のある”IT部門への高い評価、潜在的な直接コストおよび間接コスト削減効果、あらゆるタイプのデバイス、アプリケーション、ユーザーをサポートするために必要となるITプロセスの改善に向けた圧力などだ。BYOxで成功した経験から、そのメリットはマイナス面をはるかにしのぐと、私は断言できる。
ただし、そこに至るまでには、検討すべき問題が幾つかある。
- データは誰が所有し、どのように管理して、どのように安全性を確保するか
- アプリケーションやデバイスの購入、サポートに誰が責任を持つのか。私が一番望まないことは、オンラインで購入したアプリケーションのアップデートや修復ができずに、社員がヘルプデスクに助けを求めて電話してくる事態だ
- アプリケーションやデバイス、サービスに、どのような標準が適用されるのか、あるいは適用されるべきか
これらは簡単に答えられる問題ではない。こうした問題の重圧によって、BYOxイニシアチブが立ち行かなくなる場合もある。
BYOxをROIに変える4つのガバナンスとリスクに関する秘訣
以下は、コントロールのない人生へ移行するために、私が学んだ幾つかのポイントだ。
- どのような“不正”アプリケーション、デバイス、サービスがユーザーに利用されているかを洗い出す。少なくとも、インベントリを調べれば、現行のIT資産のギャップが明らかになる
- IT部門と非IT部門のスタッフを交えてブレーンストーミングをし、BYOxガバナンスモデルのたたき台となる簡単なガイドラインを作成する。非IT部門のスタッフを参加させるのは、ユーザーの実情やニーズを理解する一方で、こちらの懸念を伝えるためでもある。一緒に考えることで、BYOxを導入する場合に、繰り返し利用できるガバナンスの出発点を見つけ出すことができる
- データ消失の可能性と衝撃度の両面からリスクを評価する。まずは衝撃度から検討してみるのがよい。どのようなタイプのデータが利用されているか。そのデータが消失したり安全性が脅かされたりしたとき、会社にどのような損害がもたらされるか。衝撃度が高ければ(そしてこの場合、冷静に考える必要がある。われわれは衝撃を過大に評価しがちだ)、その可能性や衝撃を減ずる方法(モバイルデータ管理ツールやデバイスセキュリティ標準、アプリケーション標準の導入など)も検討しておかねばならない
- IT/非IT部門のスタッフが一緒にサポートモデルを定義する。私の場合、BYOxに対してサポートはせず、IT部門のスタッフは(少なくとも認識されている限り)BYOxアプリケーションまたはデバイスに関して一切関知しないとした。加えて、非IT部門の人々は、自分たちの利用するあらゆるテクノロジーについて高度に熟達していると見なした。実際、彼らの自宅はテクノロジーに満ちている
こうしたBYOxに対する協調的で合理的なアプローチは、IT部門と他の部門との関係を大きく改善した。コントロールを捨て、BYOxガバナンスモデルを構築し、ゆったり乗馬を楽しむこととしよう。
本稿筆者のニール・ニコライセン氏は、社員の認識プログラムの開発と導入を専門とする人材コンサルティング企業、米O.C. TannerのCTO。ITおよびITリーダーシップの変遷に関する執筆や講演にも携わる。米Massachusetts Institute of Technology(MIT、マサチューセッツ工科大学)で工学修士号、米Utah State University(ユタ州立大学)で経営学修士号(MBA)および理学士号を取得。
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