遠隔講義から文字認識まで 「ITpro EXPO」で見つけた学校向け注目製品を紹介:NEWS
開催中のIT総合イベント「ITpro EXPO 2014」では、教育機関向けのIT製品/サービスも幾つか展示されている。その中から注目の展示内容を紹介しよう。
日経BPは2014年10月15日〜17日、東京ビッグサイトでIT総合イベント「ITpro EXPO 2014」を開催中だ。同イベントでは、「教育ICTイノベーション2014」と題して、教育機関向けの最新IT製品/サービスを紹介している。本稿は、教育ICTイノベーション2014の展示ブースの内容を中心に、教育機関向けの展示の中から注目のIT製品/サービスをピックアップして紹介する。
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「時間割」でファイル共有を簡単にする新製品
教育ICTイノベーション2014の展示ブースで最大のスペースを確保しているのが富士通だ。同社は、2014年10月16日発売の小中学校向け授業支援システム「K-12 学習情報活用 知恵たま」を展示している。授業資料などのファイルの受け渡しに必要な機能に絞り込み、操作を単純化した。
知恵たまの特徴は、時間割を基にしたファイルの受け渡しを可能にしたことだ。教員がある授業でファイルを共有したい場合、知恵たまの画面にある時間割から、該当する授業名の枠を見つけて共有したいファイルをドラッグ&ドロップすると、その授業を受ける学習者全員にファイルを共有できる(写真1)。
ファイルの検索機能も充実させた。フリーワード検索に加え、ファイルを配布した授業の担当教員や教科、単元などで検索が可能。個別の学習者のファイル共有履歴はIDにひも付けて管理しており、進級しても過去の学年で共有したファイルを検索して閲覧することも可能だ(写真2)。
提供形態はオンプレミスで、クライアント/サーバ型のシステム構成を採用した。クライアント端末のOSはWindows 7から8.1で、現時点では米AppleのiOSや米GoogleのAndroid搭載端末では利用できない。価格は学校ライセンスで、50万〜60万円程度。
同社は知恵たまに加え、「K-12 特別支援 キッズタッチ V2 ひらがなかけるかな?」「同カタカナかけるかな?」といった特別支援学校/学級向けのIT製品も展示。学習者がタッチ操作を使って平仮名や片仮名の読みや書き方を学習できるようにして、知覚能力の向上を支援する。
文字/画像認識で適切な講義動画を紹介するシステム
NTTラーニングシステムズが展示していたSaaS形式の文字認識サービス「シラベテ」は、スマートデバイスのカメラで教科書や参考書といった書籍を撮影すると、関連する講義動画を一覧で紹介し、表示する機能を持つ。既に浜学園などでの採用実績がある(参考:立命館小学校は夏休み中、児童の「Surface」をどう守るのか?)。
シラベテは、教科書や参考書のページに書かれた文字をパターン認識し、どのページが開かれているかを認識する。該当ページにある学習内容や問題に関連した講義動画をシラベテに事前登録しておくと、ページ認識後に動画の一覧を表示。各動画のタイトルをクリックすると動画が閲覧できる仕組みだ(写真3)。
2014年8月に提供開始した機能強化版の「シラベテ ハイブリッド版」は、文字に加えて画像認識も可能にして、通常版では50%程度だったページ認識率を90%前後まで高めた。小学校低学年向けの教科書や参考書など、画像が多く文字が少ない場合でも認識しやすくした。
月額利用料金(以下、料金と価格は全て税別)は、複数の教育機関でサーバを共有し、動画ファイル登録をNTTラーニングシステムズに委託する「共有型」の場合、シラベテは5万円から、シラベテ ハイブリッド版が15万円から。単一の教育機関でサーバを占有し、自ら動画ファイルの登録ができる「占有型」の場合、シラベテは30万円から、シラベテ ハイブリッド版は40万円から。
映像講義関連の展示も
その他、大規模公開オンライン講義(MOOC)やリモート講義への活用を見据えた、映像講義に関するIT製品/サービスも展示されている。VQSマーケティング(京都市南区)が展示する遠隔講義システム「VQSコラボ」もその1つだ。
特に語学での活用を見据え、音質や安定性に配慮した。映像と音声を合わせる「リップシンク」機能を備え、講師の口の動きと音声にタイムラグがないようにした。また音声のみの配信に切り替えたり、使用帯域の上限を設定する機能を備え、通信状況によって講義が中断しないよう配慮している。
iOSやAndorid、Windows端末で利用できる。提供形式はオンラインサービスとオンプレミスを用意。オンラインサービスで同時接続3ユーザーの場合、月額利用料金は1万9800円。初期導入費用は4万円。提供形式によらず、端末には専用クライアントソフトウェアのインストールが必要になる。
スケジュール登録で自動
教育ICTイノベーション2014のブースではないが、パナソニック ソリューションテクノロジーのブースでも教育機関向けIT製品/サービスの展示がある。パナソニックグループのヴイ・インターネットオペレーションズが紹介する「ArgosView授業配信システム」は、専用スケジューラに日付と時間帯を登録すると、講義の様子を自動で撮影してサーバへアップロードする講義映像配信システムだ(写真4)。既に佐賀大学が講義室36室を対象に導入している。
事前にマイク付きのネットワークカメラを教室に設置して、スイッチングハブを介してArgosView授業配信システムと接続。撮影したい講義の講義室や担当教員、講義内容、添付資料などを専用スケジューラに登録すると、教室に設置したネットワークカメラを使って講義の様子を自動で撮影し、映像ファイルとして保管する。学習者はスケジューラから映像ファイルを閲覧したり、コンテンツ配信システムとの連係で、映像ファイルを端末へ直接配布することも可能だ。価格は4教室の講義映像を撮影する場合、ハードウェアとソフトウェア一式で300万〜350万円程度。
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