広がるハイパーコンバージドシステムの選択肢、製品選択のポイントは?:「使いたければ全部買い替え」は解決するのか?(2/2 ページ)
ハイパーコンバージドシステムには、容量、処理能力、ベンダーロックインなど、何かと面倒な制約があった。しかし、その問題にベンダーが対処することで、企業は多くの選択肢を検討できるようになった。
ハイパーコンバージドインフラを使用する理由
ハイパーコンバージドインフラは、強力で機能が豊富な仮想サーバ環境を提供する。多くの場合、この環境は1時間以内でセットアップ可能で、運用やスケーリングが容易に行える。
ハイパーコンバージド製品は、比較的規模が小さいか、孤立した環境(部門別のコンピューティングなど)、あるいは遠隔地環境への導入で成功しているケースが多い。このような環境で勤務する従業員は、従来のITインフラをサポートできるだけの技術的な専門知識を持ち合わせていないことが多い。しかし、ハイパーコンバージド製品にとって重要な領域は、複数の場所にまたがり、そして、専門のIT部署やスタッフがいないビジネス環境だ。例えば、小売店チェーンや企業の支社などがそれに当たる。
コンバージドシステムと同様に、ハイパーコンバージドアーキテクチャはオールインワンの単体モデルを提供することで、調達プロセスをシンプルにしている。複数のラックが必要になるほどに多くのケースでITコンポーネントを組み合わせるのではなく、ストレージ、ネットワーク、コンピューティング要素を、業界標準規格のサーバケース1つに収容した製品だ。こうすることで、データセンターは、より小さな構成にスケールダウンして実装を大幅に簡略化できる。これが、ハイパーコンバージド製品の成功につながっている。
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ハイパーコンバージドインフラ製品が存続するには
ハイパーコンバージド市場の主要なターゲットは、今のところ遠隔地の支社や専属のIT部門がない小さい企業だ。ということは、より大きな環境でハイパーコンバージド製品は効果を発揮するのだろうか。現時点でハイパーコンバージェンスを実装している環境の多くは、システムの処理能力をそれほど必要としていない。しかし、だからといってシステムに実際のワークロードを処理する能力がいらないわけではない。
ハイパーコンバージド製品の処理能力を比較する場合、負荷テストは現実に近い条件で行う必要がある。比較対象となるのは、仮想サーバ環境または仮想デスクトップインフラ(VDI)になるだろう。
基本的な処理能力の指標は、サポートできるVMや仮想デスクトップの数だ。Evaluator Groupによる最新の「IOMark VM」と「IOMark VDI」テストを使えば、ハイパーコンバージドシステムは膨大なワークロードに対処できるという。
ハイパーコンバージド市場の足かせはスケーリングと実装
アプライアンスとして販売しているハイパーコンバージドインフラには、ストレージ、コンピューティング、ネットワークを含んでいる。そのため、従来のITシステムと異なり、全てのリソースを同時にスケーリングしなければならない。
「容量と演算処理能力は同時にスケーリングしなければならない」というクレームに複数のベンダーが対応を始めている。ほとんどの製品は、ストレージの柔軟性を高めるために複数のアプライアンス構成で使用できる(ただし、EVO:RAILは除く)。ストレージ専用のノードを提供しているベンダーも少数だが存在する。具体的には、メモリとCPUを最小限に抑えたアプライアンスだ。また、ハイパーコンバージド製品を既存のスケールアウトストレージ製品に接続できるようにしたベンダーもある。
ハイパーコンバージド以外の製品ではモジュールの追加について多様な構成オプションを提供しているが、ハイパーコンバージドインフラは、現時点でリソースの最適化に対応できていない。その結果、インフラの規模が大きくなるにつれてコストが上昇する。
ハイパーコンバージドシステムは自己完結型の総合ITインフラなので、既存のデータセンターSANやコンピューティング環境とは統合できない。さらに、後続のモジュールは全て同じベンダーから購入する必要がある。そのため、ハイパーコンバージド市場の製品については、顧客は特定のベンダーだけを選ぶことになる。従来のデータセンターでは、セットアップ時間の短縮や運用の容易さは、スケーリング、柔軟性、コストほど重要でなかった。そのため、部門単位、遠隔地の支社、中小企業で評価を受けているハイパーコンバージドシステムの導入が従来のデータセンターでも成功するとは限らない。
ハイパーコンバージドシステムは従来のITシステムを置き換えるだけでない
インフラのスタックを同じカテゴリーのアプライアンスで構成する小さなクラスタに凝縮することで、小規模な企業でも仮想サーバコンピューティング環境を実装できるようになっている。レンガを積むようにモジュールを接続して、分かりやすいメニュー選択式のスタートアッププロセスに従えば短時間でセットアップは完了だ。
ハイパーコンバージドシステムは「自分たちが実装できるシステム」で、これがハイパーコンバージェンスがもたらす最大のメリットといえる。ハイパーコンバージド市場の製品が、部門別のコンピューティング環境、遠隔地の支社、小規模企業でその地位を確立できた理由も同じだ。これらの利用場面では、ハイパーコンバージェンスが主流となっている。
だが、従来のデータセンター環境では話が変わってくる。
一般的に、ITについてより多くの専門知識を持つ中規模以上の企業で、既存のストレージやコンピューティングインフラをハイパーコンバージドシステムに置き換える例はほとんどない。このような企業では、管理すべき新しいサイロの追加ではなく、ITシステムを統合することへの関心が大きい。また、大半のハイパーコンバージドインフラ製品では特定ベンダーの製品で“統一する”ことになるが、大規模企業の多くは、導入する機材を特定のベンダーでそろえることを好まない傾向にある。
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