社外とも簡単データ共有、「東映アニメーション」のアニメ制作を下支えするツールとは:アカウント管理の日々から解放(1/2 ページ)
数々の人気アニメーションや映像作品を手掛ける東映アニメーションは、ファイルサーバの運用管理やバックアップに課題を抱えていた。その課題をどのように解決したのだろうか。
「プリキュア」「ドラゴンボール」「ワンピース」といった人気アニメーションや映像作品の製作を手掛ける東映アニメーション。近年は映画やテレビのみならず、インターネットに向けても積極的に作品を展開している。同社が抱えるコンテンツ数は映画とテレビそれぞれ200本を超え、コンテンツをベースとしたキャラクター商品の開発や販売の他、キャラクターの版権事業も展開している。
その東映アニメーションが、コンテンツの製作工程における情報共有の仕組みとしてクラウド・コンテンツ管理サービス「Box」を採用した。データの共有方法やファイルサーバのアカウント管理、コンテンツのバックアップなどに課題を抱えていたためだ。導入に至ったいきさつとその効果を、東映アニメーションの情報セキュリティ管理士、賀東 敦氏に聞いた。
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アカウント管理の煩雑さと安全性に課題
アニメーションの製作は9つの工程で進む(図1)。物語を文章化する「シナリオ」、シナリオを基に作品の演出や方向性を説明する絵を作成する「絵コンテ」、絵コンテを基に構図やキャラクターのアクションを描く「原画」、原画間の動きを表現する「動画」、彩色や特殊効果を付ける「仕上げ」、彩色した動画と背景、CGなどを組み合わせ、タイミングを合わせる「撮影」、映像を物語になるようにつないだり放送用の秒数に合わせたりする「編集」、映像やせりふ、効果音、音楽を1つのデータにする「ダビング」、映像と音楽を1つのデータにして放送局などへの納品形式に変換する「オンライン」だ。
この工程のうち、動画以降の作業はデジタル化が進み生産効率も高まっていた。だが東映アニメーションは多数の作品を同時進行で製作しており、コンテンツ数も膨大なため、IT管理者の負担は大きかった。同社は、約380人のスタジオ内勤者に加え、子会社や協力会社7拠点のインフラを、ほんの数人のIT担当者が支えている状況だったという。
製作工程は内部スタッフの他、外部プロダクションやフリーランスのクリエイターなどが関わることが多い。賀東氏によると、一作品を作り上げるには「アニメーションのエンドロールで流れている関係者数の2〜3倍の人数」が関わっている。「どの製作フェーズで誰がどのような関わり方をしているのかを考慮する必要があり、アカウントのファイル権限管理は非常に複雑でした」と、同氏はBox導入前の状況を振り返る。Box導入前のデータ共有の仕組みは、システム管理者が各関係者にファイルサーバへのアクセス権限を個別に与え、各関係者が直接サーバにアクセスすることで実現していた。
アクセス権限を個別に設定する作業は大変だったと賀東氏は振り返る。作品ごとに契約している人、特定の話数のみで契約している人、期間限定で契約している人など、スタッフの契約形態はさまざまだ。アクセスできるファイルの種類だけでなく、閲覧しかできない、編集まで許可されているなど、アカウントのタイプもスタッフによって異なる。「アクセス権限の申請は平均で1日10件程度でしたが、緊急時や納期直前には突然申請が増えることもよくありました。アクセスが必要なくなった場合は、アカウントの削除も必要です。日々アカウント管理に追われていました」と同氏は話す。
ファイルサーバ以外でのデータのやりとりにも課題があった。スタッフや工程によっては、データをFTP(ファイル転送プロトコル)や個人向けファイル転送サービスを使ってやりとりしたり、サーバからデータをHDDに保存しバイク便で配達したりすることもあったのだ。「FTPのような安全性が確保されていない手法だと、新しいキャラクターのデータが流出するなどのリスクがあります。ファイル転送サービスはメールアドレスを間違えるとデータが流出してしまいます。そして物理的な配送サービスの場合、紛失や破損のリスクがあります」と賀東氏は語る。
システムのメンテナンスやバックアップも課題だった。東映アニメーションの作品に関わるクリエイターは、一般企業と異なるワークスタイルで仕事を進めるケースが多い。午前中は稼働人数が少なく、逆に夜遅くまで仕事をしている人が多いという。さらに複数のコンテンツ製作が同時に進行していることもあり、システムは24時間稼働している状態だったという。オンプレミスのシステム全般に当てはまることではあるが、同社もメンテナンスやバックアップのためにシステムを停止させることが困難だった。
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