新型コロナで役割を再認識
Zoomなどの「Web会議」がいくら便利でも「対面会議」をやめられない理由
新型コロナウイルス感染症の流行で、さまざまな会議が中止や延期に追い込まれた。対策として活用が広がっているのが「Web会議」だ。ただしWeb会議が実現できることは、対面会議と同じではない。
医療ITベンダーのVeeva Systemsは2020年1月に、米フロリダ州オーランドで北米の従業員を対象に新年決起会を開催した。その数週間後、同社はアジアを拠点とする従業員向けに同様のイベントを開催した。ただし新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の大流行により、従業員は予定通りに東京に集まるのではなく、Zoom Video CommunicationsのWeb会議ツール「Zoom」に接続することを余儀なくされた。
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新型コロナウイルスがIT投資に与える影響
2つのイベントの違いは明白だった。オーランドでは同僚同士が食事を共にし、同じダンスフロアで時間を過ごした。その晩にはアミューズメントパークにも出向いた。1000人を超える従業員が一堂に会することで、同社は自社のビジョンや目標に対する明確な熱意を生み出した。一方で東京イベントの出席者は、各自のコンピュータの前に1人で座った。
「対面会議と比べてWeb会議には少しばかり損失があることは間違いない」と話すのは、Veevaで商用クラウド戦略部門のシニアバイスプレジデントを務めるポール・シャワ氏だ。
Web会議で失われるもの、得られるもの
Veevaと同様、企業の間では新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の感染拡大を受けて、移動を避けるためにZoomやCisco Systemsの「Cisco Webex Meetings」といったWeb会議ツールの利用が広がり始めている。感染拡大時にはWeb会議ツールが対面会議に代わる手段となる。だが同時に顧客やパートナー、従業員と個人レベルでつながる機会を逃すことにもなる。
アニメーションやコンピュータグラフィックス(CG)制作を手掛けるTheory Studiosは、カンファレンスに参加することで大半のビジネスを生み出してきた。Googleの開発者向け年次カンファレンス「Google I/O」が土壇場でキャンセルになり、Informa Tech主催のゲームカンファレンス「Game Developers Conference」(GDC)の延期が発表された後、同社は大急ぎでZoom会議のスケジュールを組んだ。
Theory Studiosの共同創設者デイビッド・アンドラーデ氏は「結局のところ、直接向き合って話すことに勝るものはない」と言い切る。「食事を共にするのは楽しいし、顧客からオフィス全体を案内するように求められることもある。そうした機会を通じて定期的に会合を設けることが、長く続く個人的なつながりへと変わっていく」(アンドラーデ氏)。同時に同氏は、実際に会う前から有意義な関係を築くためにZoomも使ってきたという。
ディスプレイベンダーViewSonicのユーザー企業の中には、営業担当者が敷地内に入ることを一時的に禁じている企業もある。同社でエンタープライズセールス部門のディレクターを務めるクリス・グレーフ氏は「営業部門の責任者としては、ビジネスに移動は不可欠だと常に考えたいところだ。直接会って対話する方が好ましいのは間違いない」と語る。とはいえ移動が制限される中で関係性を維持するには「Web会議が有効だろう」とグレーフ氏は話す。
Veevaにとって、Zoomでアジアの新年決起会を開催したことは「次善策」だったとシャワ氏は述べる。この形式には幾つかメリットもあった。例えば会議内容を全て録画していたため、会議に出席できなかった従業員も内容を確認することができた。またZoomのチャット機能は「活気のある質疑応答セッションの実現を下支えした」と同氏は説明する。
新型コロナ大流行が追い風となるベンダーも
Web会議ベンダーは、無料のサービスや機能を充実させることで、Web会議に対するニーズ拡大に対処している。CiscoはCisco Webex Meetingsの無料版で、最大100人の出席者が時間制限なく会議できるようにした。Zoom Video Communicationsは、中国においてZoom無料版の40分の会議時間制限を撤廃した。これらのベンダーは、新型コロナウイルス感染症に対する懸念が沈静化した後にも、現状のニーズがそのまま続くことを期待している。無料サービスは、有償顧客を生み出す効果的な手段になる可能性があるからだ。
Zoom Video CommunicationsのCEOを務めるエリック・ユアン氏は2020年3月に実施した投資家との電話会議で、新型コロナウイルスの感染拡大によってZoomのメリットが実証され、企業間での利用率が高まると予測した。「情勢は劇的に変わるだろう」(ユアン氏)。調査会社Frost & Sullivanによると、Web会議/ビデオ会議ベンダーは、2018年の約78億ドルから増加し、2023年までに約138億ドルの収益を上げることが見込まれる。
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