緊急事態のテレワーク基礎ガイド【前編】
「Zoom」だけじゃない、新型コロナ対策の在宅勤務に役立つITツールとは?
新型コロナウイルス感染症の拡大防止策の一環で、在宅勤務などのテレワークを取り入れる動きが世界規模で急速に広がっている。テレワークに役立つITツールと、技術面での課題を整理する。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の広がりにより、世界中の企業が従業員の在宅勤務などのテレワークに取り組み始め、関連技術に関心を寄せている。対面で仕事をする代わりに、リモートデスクトップやモバイルデバイス、コラボレーションツールでコミュニケーションをすることが日常になるとともに、テレワークの長所と短所が浮き彫りになってきた。
本稿は、企業のIT部門が従業員のテレワークに必要なIT環境を早急に用意するために検討すべき項目や、テレワーク関連ツールの課題に関する情報を紹介する。
在宅勤務に役立つIT
従業員のテレワークを支援するには、リモートコミュニケーション、データアクセス、セキュリティの整ったIT環境を用意することが重要だ。IT部門は必要になれば比較的迅速にこれらを用意できる。ただし従業員がそのツールを自宅で使えるかどうかは別の問題だ。従業員の職務要件やツールを快適に使用できる技術レベルの有無などを考慮する必要がある。
企業がテレワーク体制へと迅速に移行できるかどうかは、ITサービスデスク担当者の肩にかかっている。VPNの更新、エンドポイントセキュリティの強化、従業員がリモート作業を開始する際に発生するトラブルシューティング作業などが必要になる。
テレワークに必要なコミュニケーションツールとしては、Web会議サービス、ビジネスチャットツール、ファイル共有ツールなどがある。これらを利用できるネットワークインフラも不可欠だ。ファイル共有サービスの「Box」と「Dropbox」は、需要急増に対処するためインフラとセキュリティを増強したという。
Web会議サービスとビジネスチャットツールはスケーラビリティの実力を問われている。Cisco Systemsの「Cisco Webex Teams」などのビジネスチャットツールは2020年3月の平日に少なくとも3回、使用ができないか読み込みが非常に遅い状態に陥った。Cisco Systemsのコラボレーション担当ジェネラルマネージャーを務めるスリ・スリニバサン氏によると「前例のない」利用増加が原因だという。Zoom Video CommunicationsのWeb会議サービス「Zoom」も2020年3月には予期しないサービス中断が急増した。
ITのモダナイゼーション(最新化)を先延ばしにしていた企業は、従業員が新しいクラウドサービスやアプリケーションに頼って仕事をしている現状を見て、後悔しているのではないだろうか。既にIT化を進め、コラボレーションツールを導入済みの企業も、ツールの普及に苦労している。
テレワーク技術の課題
ほんの数週間前までは「Microsoft Teams」などのビジネスチャットツールの限界はそれほど問題ではなかった。今では従業員間に必要なコミュニケーションの支障となっている。例えばMicrosoft TeamsのWeb会議機能は原稿執筆時点では、直前に発言した最大4人の映像しか表示できない。最大25人のストリーミング映像を同時に表示できるCisco Systemsの「Cisco Webex Meetings」や、最大49人を表示できるZoomと比べるとずいぶん少ない。
数百人から数千人の従業員が自宅からアクセスするようになると、モバイルネットワークインフラに過剰な負荷がかかる可能性がある。Web会議や仮想デスクトップ、電話会議のインフラに利用が集中するピーク時には、接続の問題が発生しやすくなる。
新型コロナウイルス感染症の拡大を防ぐために自宅で仕事をする従業員は、自分自身の仕事や、仕事ができなくなった同僚の分の仕事までこなすことになって、通常よりも高いストレスを受ける可能性がある。その上、同じように在宅を強いられている家族の世話をしたり、慣れないツールで同僚や顧客とコミュニケーションしたりしなければならず、従業員と会社の生産性の低下につながる心配がある。
こうしたさまざまな課題が数多く報告されている。調査会社Forrester Researchのアナリストであるアンドリュー・ヒューイット氏は、新型コロナウイルス感染症の対策期間におけるテレワークのベストプラクティスを提言している。「テレワークで、できるだけ生産性を犠牲にせず、業務全体を維持するにはどうすべきか。それには従業員が適切なリモートアクセス技術を利用できるようにすることが不可欠だ」(ヒューイット氏)
中編はリモートアクセスのための手段を解説する。
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