新型コロナウイルス感染症や季節性インフルエンザなどのパンデミックに対処する上で、「BCP」が果たす役割は大きい。企業のBCPを十分な状態に整えるにはどうすべきか。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行は、従業員の健康と事業運営にとって重大な脅威となっている。新型コロナウイルス感染症の流行について、世界保健機関(WHO)は「パンデミック」(感染症の世界的な大流行)だと表明している。今こそ企業はパンデミック対策を見直して更新すべきだ。新型コロナウイルス感染症や今後起こり得るパンデミックに対して、BCP(事業継続計画)を改善するための3つのステップを紹介する。
最初に、既存のBCPが、新しい製品やサービス、合併・買収(M&A)などの事業の変化を反映するように更新されているかどうかを確認する必要がある。少なくとも年に1回BCPを確認し更新しているならば、事業の変化に伴って企業のパンデミック対策も変更する必要があるだろう。BCPの変更頻度を確認した上で、パンデミック対策をどのように変更するかを検討しよう。
事業運営のために別の手続きと手順が必要な場合は、その変更がパンデミック対策に影響するかどうかを判断する。必要に応じて、パンデミック対策の手順を更新しよう。
次に、企業のパンデミック対策に関連付けられそうな従業員の福利厚生制度を確認する。会社が健康診断やインフルエンザの予防接種などを実施しているかどうかを確認する。福利厚生に変更がある場合は、その変更をパンデミック対策に反映する必要があるかどうかを判断する。
パンデミック対策の準備と更新に関する新しい情報については、疾病管理予防センター(CDC:Centers for Disease Control and Prevention)に確認する。CDCはパンデミック対策に関する広範な情報を提供している。パンデミック対策に関する新しい情報については連邦緊急事態管理庁(FEMA:Federal Emergency Management Agency)に確認する。自然災害や人為的災害を含む緊急事態に備えるための米国人向け公共サービス「Ready.gov」は、パンデミックに対する緊急計画を立てるのに役立つツールキットを提供している(注)。
※注 日本の場合は、厚生労働省や内閣官房新型インフルエンザ等対策室がパンデミック対策に関する広範な情報を提供している。経済産業省のWebサイトは新型コロナウイルス感染症による企業への影響を緩和する公的支援制度を案内している。中小企業庁は、事業継続力強化計画の策定に役立つ情報を提供している。詳しくは各省庁のWebサイトを参照のこと。
従業員と緊急対応チームのメンバーに計画の内容を熟知させるためには、パンデミック対策の演習を少なくとも年1回計画して実施しよう。BCPの次の演習を準備して実行する際に、パンデミック対策も含めることを検討するとよい。
次回予定しているリスク評価とビジネスへの影響度分析の際に、パンデミック関連の課題を含めることを検討する。パンデミックの発生は比較的まれだが、それでも組織と業務遂行能力に対する脅威だ。インフルエンザの頻繁な流行とワクチンに関する問題は依然として続いている。従業員の罹患(りかん)と生産性損失をもたらす、無視できないリスクだ。
深刻な感染症は多くの従業員が病気休暇を取ることになる可能性がある。そのため業務代行計画を立てる必要がある。これは特定の従業員がいない場合に、その業務を代行できるスキルを持つ従業員を把握しておくことを意味する。人事部門と協力してスキル調査を実施し、重複するスキルをマッピングする。この作業は、病気のために就業できない主要メンバーをバックアップできる従業員を特定するのに役立つ。
インシデント対応計画と緊急事態管理計画を確認して、パンデミックにも対処可能なことを確認する。パンデミックへの対応方法に関する緊急要員向けのトレーニングを計画して実施する。
緊急時の連絡体制と手順を確認し、パンデミック時の要件にも対処できることを確認する。新しい計画や計画変更の内容と、組織としてこれをどのように扱うかを、従業員に通知するプロセスを用意する必要がある。
企業のパンデミック対策には、適切な物資を手元に保管しておくことを含める必要がある。必要に応じて、個人用保護具(ヘルメットやゴーグル、マスク、防護服、手袋など)、保存食、水、事務用品を保管して、従業員が利用できるようにする。
BCPとパンデミック対策は密接に絡み合っている。BCPに何らかの変更を加える場合は、パンデミック対策も更新する必要があるかどうかを確認する必要がある。季節性インフルエンザや新型コロナウイルス感染症の問題は、パンデミック対策を見直して更新するための貴重な機会だと考えよう。
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