「クラウドRPA」がすぐには売れない理由:クラウドRPAを取り巻く業界動向【中編】
ユーザー企業の間でクラウドサービスへのシステム移行が加速する中、クラウドRPAの導入が進まない。「オンプレミスRPA以外は選ばない」というニーズも根強い。この理由を、専門家はどう見るか。
調査会社Gartnerのアナリストであるアーサー・ビラ氏によると、昔は「RPA」(ロボティックプロセスオートメーション)と言えばオンプレミスインフラで稼働するRPA(以下、オンプレミスRPA)しか選択肢がなく、近年までオンプレミスRPAが主流だった。ユーザー企業の間でクラウドサービス移行ブームが続く中でも、クラウドサービス形式のRPA(以下、クラウドRPA)の普及は遅れたとビラ氏は主張。「その理由の大半は、RPAの仕組みと機能に関係している」と話す。
だから「クラウドRPA」は普及しない
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RPAは、人間とソフトウェアのやりとりを模倣する「ソフトウェアロボット」(bot)を作成する。botの基本機能は、判断や複雑な思考を必要としない大量の反復作業を実行することだ。端的に言うと、RPAはデスクトップレベルの自動化を目的とする。「オンプレミスRPAは、このように自動化した操作をほぼ常時実行している」とビラ氏は説明する。
ユーザー企業がRPAを利用した当初の理由は、デジタル化によって得られるメリットを迅速に享受するためだった。この目的のためにオンプレミスRPAを利用するユーザー企業は今でもある。クラウドサービスとの連携が困難なレガシーシステムを何とかするために、オンプレミスRPAを使うユーザー企業は珍しくない。
オンプレミスRPAのユーザー企業は、総じてオンプレミスRPAに満足している。ITコンサルティング企業ServerCentral(Deftの名称で事業展開)で業務執行役員とソリューション最高責任者を務めるエリック・ディノウスキー氏は「オンプレミスRPAのユーザー企業がクラウドRPAへの移行を決断するには、何らかの大きな理由が必要になる」と語る。
「遅延を最小限に抑え、望ましいセキュリティレベルを維持するためには、オンプレミスRPAでなければならない」と考えるユーザー企業のリーダーは少なくないと、複数の専門家は指摘する。コンサルティング企業Guidehouseでインテリジェントオートメーションプラクティスリードを務めるランヤ・サルース氏によると、セキュリティポリシーを自社で制御することにこだわるユーザー企業は、プライベートクラウド(リソース専有型クラウドインフラ)にRPAを導入することはあっても、クラウドサービスであるクラウドRPAを導入することはまれだった。
プライベートクラウドなら、ユーザー企業はRPAの構成と設定をコントロールできる。「こうした自由度を手放したくないとユーザー企業は考えている」と、サルース氏は考察する。同氏の推測によれば、Guidehouseの顧客の約80%が従来型のオンプレミスインフラかプライベートクラウドでRPAを運用している。「クラウドRPAを実際に使用している顧客はごく少数だ」(同氏)
こうした中でも、クラウドRPAに需要がシフトしつつあるとの見方がある。後編はクラウドRPAのトレンドと今後の展望を解説する。
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