ペプシコのDXリーダーが語る「サステナビリティ」を“理想論”にしない具体策:メーカー幹部が語る「DXの全貌」【第6回】
世界中に従業員を抱え、さまざまな商品を提供するPepsiCo。同社が進めるDXは、イノベーションやサステナビリティと密接した関係にある。同社が掲げる戦略や、具体的な取り組みとは。
食品や飲料品のメーカーPepsiCoが2021年に開始した、デジタルトランスフォーメーション(DX)に関する5カ年計画。同社で最高戦略責任者(CSO)兼最高変革責任者(CTO)を務めるアシーナ・カニョーラ氏によると、DXの主要目標を掲げる際、忘れてはいけない重要な要素がある。「サステナビリティ」(持続可能性)だ。サステナビリティはカニョーラ氏が率いる業務において、全ての基礎になるという。
「サステナビリティ」が全ての基礎 その取り組みとは
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連載:
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- 第5回:何のための変革が「DX」なのか? 飲料メーカーPepsiCoに学ぶ
環境に配慮したDXの推進
カニョーラ氏が率いるチームは、サステナビリティを実現するための要素「ESG」(環境、社会、ガバナンス)がシステムや案件の管理において考慮に入っていることを重視し、業務の意思決定を下している。これを実践する上で重要な役割を果たすのが、部門横断でデータを一元管理する「エンタープライズデータ管理」(EDM:Enterprise Data Management)のシステムだ。
ESGを考慮するには、社内に散在するデータを単一のシステムで管理する必要がある。それを全従業員にとっての共通のデータソースとすることで、サステナビリティの指標を全社で追及することが可能になる。
PepsiCoは同社のサステナビリティ戦略を「pep+」(pep Positive)と名付けた。同社の会長兼CEOラモン・ラグアルタ氏は、pep+は「PepsiCoの未来だ」と表現する。pep+が目指すのは、同社の生産や出荷、販売に可能な限り持続可能な方法を取り入れることだ。「当社は地域社会や世界、フードバリューチェーン(食品の流通過程で生み出される付加価値のつながり)、顧客のそれぞれにとって、いかに好ましい環境を作ることができるかに焦点を当てている」とカニョーラ氏は説明する。
サステナビリティ戦略の根幹を担うデータ管理システムは自社で構築する一方で、「その他の取り組みは、PepsiCoとつながりを持つスタートアップ(設立間もない企業)と連携して取り組む」とカニョーラ氏は話す。スタートアップとの取り組みを率いるのは、カニョーラ氏が統率する組織の一つで、イノベーションの専門家が集まるチーム「PepsiCo Labs」のバイスプレジデントを務めるデイビッド・シュワルツ氏だ。
シュワルツ氏によれば、PepsiCo Labsは2022年までに30社以上のスタートアップの事業拡大を後押ししてきた。PepsiCo Labsが推進したイノベーションは、工場での水漏れ防止策の他、商品陳列棚に使用する、バイオマス原料の熱可塑性プラスチックの開発などさまざまな分野にわたる。
「革新的な技術が、PepsiCoのビジネスに前向きな成長を促すことがチームの長期的な目標だ」とカニョーラ氏は語る。その上で同氏は「今後PepsiCoが実施する全ての取り組みにおいて、サステナビリティの視点が必要になる」と強調する。
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