「AIで開発者が不要になる」とは言い切れない理由と、開発者がする仕事とは?:GitHubのCEOが語る未来【第5回】
AIツールの台頭が、開発者の立場や職を脅かしかねないという懸念の声が上がっている。この見通しに対する、GitHub社のCEOの意見とはどのようなものか。
AI(人工知能)技術を活用した「AIツール」は、さまざまな場面において企業の業務を支援している。アプリケーション開発分野でもAIツールの活用が進んでおり、一部ではAI技術が人の開発者に取って代わるのではないかという懸念の声が上がっている。この状況を、ソースコード共有サービスを運営するGitHub社(2018年にMicrosoftが買収)のCEOであるトーマス・ドームケ氏はどう見ているのか。
本当に開発者はいらなくなるのか
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連載:GitHubのCEOが語る未来
- 第1回:“AIの在り方”を語るGitHubのCEOが「顧客との対面」にこだわる理由
- 第2回:GitHubのCEOが“東京やシンガポールの開発者”と面会した目的は?
- 第3回:オープンソースが「世界の共通言語」になれる“他にはない”理由
- 第4回:“ChatGPTみたいなAIツール”で開発はがらっと変わる? あるCEOが想像する未来
GitHubの動向
―― AI技術が開発者に取って代わると考えますか?
ドームケ氏 答えは「ノー」だ。人は自動運転車に目的地を教える必要があるし、物語の脚本を書く部分も担っている。開発者は開発のストーリーを書かなければならない。AIツールにストーリーを記述させるのは難しいと言える。AIツールはテストシナリオの作成などの単純なタスクを支援する。そうしたタスクは今後人が実施しなくてよくなるだろう。
このような変化は、われわれ開発者がかつて経験したことだ。インターネットが普及する前、開発者は自分の力でソースコードを書いていた。市販のソフトウェアを購入し、販売業者からフロッピーディスクを送ってもらうことはできたが、オープンソースソフトウェア(OSS)は存在しなかった。
今ではプログラミング言語やコンパイラ(ソースコードから実行可能ファイルを生成するプログラム)、OS、アプリケーションなどさまざまな分野にオープンソースプロジェクトがある。新しいWebサイトを作ろうとするとき、いちいちボタンやプルダウンリストを自作するのではなく、「React」などのユーザーインタフェース用のフレームワーク(特定の機能を持つプログラムの開発を支援するプログラム部品やドキュメントの集合体)を活用するだろう。つまり開発開始時点で、すでに1000行のソースコードを持っているようなものだ。
AIツールにソースコードを書いてもらうのも、ライブラリを利用することと変わらない。複雑な機能を実装するために、他の人の作業成果を拝借しているのだ。積み上がったピラミッドの頂上はどんどん高くなっていく。毎日書くソースコードの分、上に積み上がる。われわれが取り扱うシステムの体系はより複雑になっているので、ピラミッドの基礎となるソースコード群と、ピラミッド自体の複雑さはどんどん増していく。
第6回は、GitHubの戦略をドームケ氏が語る。
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