有言不実行になりがち
「イノベーション」を陳腐な掛け声にしないための5ステップ
イノベーションをめぐる意思と行動のギャップはどうしたら解消できるのか。アイデアを形にするためのノウハウを紹介する。
イノベーション。それは事業成功の秘策であり、至る所でIT部門強化の掛け声になっている。しかし今や「ほとんど意味のない陳腐なフレーズに成り果てた」と、米Forrester ResearchのITマネジメントの権威であるボビー・キャメロン氏は言う。
キャメロン氏の言うことはもっともだ。「information technology innovation」をGoogle検索してみると、9万1000件以上のヒットがある。「IT business innovation」では3万700件のヒット。ITイベントをのぞいてみれば、全米各地であらゆるたぐいの権威者が、自分の会社の革新に貢献すべしと説いている。
CIOたちが欲しているのはイノベーションであって、単なる「IT対応」というバリエーションではないとForresterの報告書は述べている。米IBMが2007年に170人のCIOを対象に実施した調査では、テクノロジーが根底から業界を変え、競争上の優位をもたらしているとCIOが強く信じていることが分かった。CEOもイノベーションを求めている。米McKinseyの2007年の調査「企業のイノベーションへのアプローチ」では、経営者の70%がイノベーションを成長のための最優先課題の上位3位に挙げた。
しかし、「経営陣がイノベーションについて言っていることとやっていることは違う」(Forrester報告書)のは驚くには当たらない。
イノベーションを優先課題に挙げた70%の経営者のうち、経営陣の間でこれが日常的な話題に上ることはないとの回答が70%を占めた。では170人のCIOは、テクノロジーの革新的パワーについてそれほど熱心なのだろうか。自分の会社がこのパワーを活用していると感じているのは16%のみだった。会社がITを導入したのは効率向上のためであって、変革のためではなかった。
ほかにもある。調査によれば、経営上層部は「社内イノベーション」を望んでいる半面、75%は新しいアイデアを外部の同業者やパートナーといった社外に求めている。McKinseyの調査でCEOたちは、「ビジネスモデルイノベーション」を利益拡大のための最も確実で経済的な手段とうたっているが、その実現のため知恵を絞る代わりに、相変わらず事業部内での製品追加とサービス向上にばかり力を注いでいる。
ギャップの解消
では、CIOやCEOはどうしたら意思と行動のギャップを解消できるだろう。Forresterによれば、イノベーションを起こりやすくするためには、構造化され、スケーラブルで、繰り返し可能なプロセスが必要だ。
アイデアを生み出し実現に導くためキャメロン氏が挙げる5項目を、Forresterの報告書で取り上げられた数社の例を紹介しながら、以下に抜粋する。
ステップ1:発明と発見
社員1人では優れたアイデアは思い付けない。口で言ったことを実地に移すためには、社内に伝える戦略的テーマを明確な言葉で言い表せるCEOが必要だ。例えばKimberly-Clarkの「小売り顧客にとって不可欠な存在になる」という戦略は、同社の革新的なデザインと仮想ショッピング環境の根底にある。
さらに、優れたアイデアはさまざまなところから出てくる。企業は「パートナーおよび顧客とのイノベーションネットワーク」を築き、社員が日常の現場を訪れることを奨励し、インターンシップ(就業体験)や職務交代、ローテーション勤務を通じて従業員の新鮮な感覚を保つ必要がある。グローバル企業ならアイデアをつかむための「グローバルなアイデアくみ上げプラットフォーム」を構築しなければならない。
ステップ2:実現可能性の検討
アイデアは壊れやすい。どうしたらつぶすことなく吟味できるだろうか。IBMには、アイデアを形にする段階ごとの手順がある。数千人の社員が参加する年中無休のオンラインフォーラム「ThinkPlace」や、ディスカッションセッションの「Online jams」がそれだ。アイデアを持つ社員を導き、提案のための手引きやよくある質問集、そして質問に答えてもらえる仕組みを提供しよう。そうしないとアイデアは実を結ぶことなく枯れてしまう。いいアイデアは、今は現実的でないかもしれないが、将来のために取っておくことだ。
ステップ3:インキュベーションと選定
意思決定プロセスをはっきりさせ、誰でも成り行きが分かるようにすること(大学入学基準のようなものだ)。Procter & Gamble(P&G)のWebサイト「Connect + Develop」では、第三者がP&Gのニーズと資産、提出手順について調べ、いつまでに(8週間)回答できるかを知らせることができる。アイデアは社内外を問わず、職務上の枠を超えたチームで発展させるのが最善だ。報告書では一例として「Spectrum Healthは、試験的技術の初期設計を行う革新的なパートナー数社と契約関係にある」と述べている。信頼できる同業者に、まだ選ばれていないアイデアを見てもらうよう促そう。
ステップ4:実践と製品化
どのアイデアを実行に移すかを決める過程は透明でなければならない。迅速な試作品開発と顧客相手の実地テストを促し、新しいアイデアの恩恵を受けられそうな別の製品分野や顧客層に目を向ける。
ステップ5:プロセスを監視し結果に報いる
報奨や現金手当ての支給と、社報や会議でこのアイデアを紹介することもその一環だ。「優秀な会社はさまざまな形で公式・非公式に報いる仕組みを使っている」とForresterの報告書は指摘。社員を昇格させたり、雑誌社などの組織が実施する賞の受賞を目指すなどのやり方を紹介している。
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