【IFRS】「公認会計士にはIFRSの知識が必須になる」
監査法人のIFRS対応に意見相次ぐ、金融庁企業会計審議会
IFRSの適用を議論する金融庁の企業会計審議会総会・企画調整部会合同会議が開催。今回は監査法人の対応と、非上場の中小企業への影響について議論された。
IFRS(国際財務報告基準、国際会計基準)の適用を議論する金融庁の企業会計審議会総会・企画調整部会合同会議が3月29日に開催された。今回は監査法人の対応と、非上場の中小企業への影響について議論された。監査法人に対しては企業などの財務諸表作成者側からの意見が相次いだ。金融庁 自見庄三郎担当大臣は出席しなかった。
監査法人側では、日本公認会計士協会会長で委員の山崎彰三氏が「IFRSに対応するための能力は企業だけではなくて、監査人にとっても重要」と指摘。その上で「現在、国際的には企業財務の議論はほとんど全てIFRSを前提に話されている。日本の公認会計士には、IFRSを適用する場合はもちろん、日本基準においても今後はIFRSの知識が必須になる」と話した。「大手監査法人を中心に各監査法人では、IFRSに基づく財務諸表監査の態勢を構築しつつある」。山崎氏はIFRSについての対応が進んでいる大手監査法人と、中小の監査法人との情報共有も進めるとした。
日本公認会計士協会の副会長で委員の関根愛子氏は監査法人全体の対応を説明した。日本基準と同様にIFRSについても品質管理体制や研修体制を整えてきているとして、「IFRSについての意見形成は基本的に日本の監査法人の中で完結している」と話した。また、IFRSが国際的に利用される基準だけに、大手監査法人が提携するネットワークファームとも連携し、意見交換をしていると説明した。
関根氏はIFRSに対する監査人の対応について「原則主義と細則主義は相対的なものである」と指摘し、「作成者と監査人の事例や経験の積み重ねに基づくガイダンス、スタンスを作成する」とした。また、決まり切った対応ではなく、「取引の背景や実体に応じた対応が重要」と説明し、作成者と監査人が議論するプロセスに重きを置くと話した。
独立した意見形成を
これら監査法人の対応について、作成者から意見が相次いだ。委員で経団連の企業会計委員会 委員長の廣瀬博氏(住友化学工業 取締役副会長)は、監査人は「大手監査法人のグローバルマニュアルや海外の先行事例に固執することなく、原則主義の下で企業の会計方針や判断を尊重した適切な対応をお願いしたい」と意見した。「日本の国情や取引慣行、個々の企業の実態に合わせて独立した意見形成をすることが非常に重要だ」。
加えて、コンバージェンスを行ってきた日本基準とIFRSは「非常に近いものになっている」として「現行の会計処理のほとんどはIFRSでも継続可能と考えるべきであり、監査人に対しても費用対効果を考えたスムーズな導入を作成者と共に考えてほしい」と発言した。経団連と日本公認会計士協会、東京証券取引所などとIFRSについての情報共有の場として設立していた「IFRS導入準備タスクフォース」の再開も求めた。
廣瀬氏はまた「原則主義では作成者と監査人が会計処理方法について対立したり、調整が難航することが考えられる」として、金融庁に対して「事前説明制度」(プリクリアランス制度)の創設を求めた。「作成者だけではなく、監査人の立場でも重要な問題だ」。
これに対して金融庁の企業開示課長 栗田照久氏は「IFRSを導入するのであればあった方がいいという意見が前回でもいくつかあった。いずれにしてもこの論点は、IFRSをどういう形で日本に取り込むのかという論点の次に出てくると思っている。今後検討していくべき課題だ」と応じた。
このままでは発言力が低下
委員の辻山栄子氏(早稲田大学教授)は、日本基準やIFRS、米国会計基準と「複数の基準で齟齬(そご)があった場合に監査人として信念を持って判断ができるのか」と意見した。山崎氏は「監査人は企業の実態を把握するが、あくまでも会計基準に基づいて判断する。会計基準が変われば判断が変わるのはある程度は仕方ない。そのようなことがビルトインされている」と話した。
また、日本がIFRSの適用を進めないとIASB(国際会計基準審議会)やIFRS財団での発言力が弱まるとの山崎氏の発言に対して、辻山氏は「日本はコンバージェンスにコミットをして、同等性評価を受け、米国が行っていない任意適用をしている。その中で日本が今の取り組みを行っていく場合、米国や中国と比べて劣ると判断される可能性はあるのか」と尋ねた。
山崎氏は「コンバージェンスや同等性評価は今までの話。現在、議論をしているのはこれからどうするか。このまま止まっていれば日本の発言力が低下するのは間違いない」と説明。米国の今後のIFRSについての判断についても「後戻りをすることはないと思っている」とした。
非上場中小企業への採用は「かなり無理」
非上場の中小企業へのIFRS適用については積極的に賛同する委員はいなかった。IFRSには中小企業の利用を想定した「IFRS for SMEs」があるが、主要国で採用している国はなく「南アフリカくらい」(金融庁)で「中小企業への採用はかなり無理がある」との意見が多かった。日本には、中小企業向けの「中小企業の会計に関する指針」や、日本基準が行っているコンバージェンスの影響を避けることを意図した「中小企業の会計に関する基本要領」があり、上場企業へのIFRS適用とは分けて議論が進みそうだ。
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