その手法はNVIDIA、Intel、AMDで三社三様
ゲームをやらないお堅いオフィスにもGPUの仮想化を勧めたい理由
GPU仮想化は、グラフィックス処理の負荷が高いアプリケーションでないと意味がないと考えてしまいがちだが、Microsoft OfficeやWebブラウザしか使わない部署のスタッフにもメリットがある。
VDIに関する話題でGPU仮想化の話が出ると、CADアプリケーションやAdobe Systemsの画像編集アプリケーション「Photoshop」のようにグラフィックス処理の負荷が高いアプリケーションのための技術と思うユーザーが多い。グラフィックスリソースを浪費するそうしたアプリケーションに仮想GPUが欠かせないのは確かだが、仮想GPUの利用価値はそれだけにとどまらない。
Citrix SystemsのCTO(最高技術責任者)を務めるグンナー・バーガー氏は、同社開催のカンファレンス「Citrix Synergy 2016」で「『Microsoft Office』やWebブラウザなどのアプリケーション、それに『Windows 10』のような新しいOSにも仮想GPUは効果的だ」と話している。
バーガー氏が同社のXenServer製品管理およびパートナーエンジニアリング担当ディレクターのデービッド・コッティンガム氏とともに発表した内容によると、システムにGPUを実装せずにMicrosoftの「Microsoft PowerPoint」を実行した場合、CPU使用率は10%、一時的には30%に達することもあるそうだ。しかし、システムにGPUを組み込んであれば平均で5%、一時的上昇でも10%程度だという。GPUを実装するとサーバ密度が高まる上、エンドポイントのユーザーエクスペリエンスも向上する。「ベンダーとユーザーの双方にとってこれほど有益な状況はめったにない」と同氏はいう。
バーガー氏によると、GPU仮想化のメリットは主に下記の3つある。
- 幅広いカテゴリーの市販アプリケーションをサポートできる
- 物理デスクトップと同じ処理速度で仮想デスクトップを実行できる
- パワーユーザーやグラフィックス処理リソース消費量の多いアプリケーションに対応するハイエンドワークステーションをデータセンターへ移すことができる
GPU仮想化が効果を発揮するアプリケーションをよく利用する業界として、教育分野や建築分野(特にCAD学習)、そして、自動車業界(大容量高解像度の専用フォーマットのデータファイルや完成予想図、流体物理シミュレーションの可視化データを共有して利用できる)がある。3D MRIやデジタルX線システムの導入でグラフィックス処理の負荷が高い大容量高解像度画像データの利用進むヘルスケア分野も、GPU導入とGPU仮想化を望んでいる主要な市場の1つだ。
Microsoft OfficeやWindows 10ベースの利用が主流のユーザーでもGPU仮想化は利用価値がある。Webブラウザや「Skype for Business」「GoToMeeting」「Windows 10」(Windows 10はグラフィックス用APIとして「DirectX」を導入しており、これをスムーズに実行するにはGPUが必要)を使う場合、GPU仮想化を導入すればサーバ密度が高まり、ユーザーには軽快な操作画面と高速の描画処理を提供できる。
主要三社が提供する仮想GPUからベストを選ぶ
GPUベンダー大手のNVIDIAとIntel、そして、AMDのGPU仮想化の手法は、それぞれ少しずつ異なる。
NVIDIAの「NVIDIA GRID」では、1つの物理GPUを仮想化して最大16ユーザー(デュアルGPU攻勢で最大32ユーザー)と共有できるが、実際の処理においては1つの物理GPUを時分割して仮想マシンに割り当てる。仮想化したGPUは物理的には単独なので、仮想マシン相互の影響によって仮想GPUのリソースを使い果たすことがない。
「Intel GVT-g」もソフトウェアのハイパーバイザーOSで仮想化を実現するが、1つのGPUを複数の仮想GPUに分割する。AMDの「AMD Multiuser GPU」も1つの物理GPUを仮想GPUに分割する点でIntelと同じだが、AMDは専用のハードウェアを使ってGPUの仮想化を制御している。AMDは物理GPUで分割した仮想GPUをそれぞれ仮想マシン(VM)に割り当てる制御において、ハイパーバイザーの役割を専用のハードウェアで実行することで処理能力の向上を図っている。
ユーザーがどの仮想GPUを選択するかはそれぞれ個別の事情による。予算、GPUを展開するサーバのタイプ、ソフトウェア方式とハードウェア方式どちらのGPU仮想化にするか、などを考慮して判断することになる。ただ、CADのようなアプリケーションを使わないという理由で仮想GPUの活用をためらう必要はない。一般的なアプリケーションやOSしか使わない営業や企画、管理のスタッフも仮想GPUの導入によるパフォーマンスの向上を実感できるはずだ。
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