出発時刻、到着時刻を案内するだけではまだ足りない
ANAが“モバイル+API連携”で目指す「到着のその先」とは
「Oracle Cloud」の「API Platform Cloud Service」を使うことで、ANAグループは顧客にどのような価値を提供しようとしているのか。今後目指す顧客目線での情報提供の在り方とは。ANAシステムズの話から探る。
日本オラクルが2017年12月に開催したイベント「Oracle CloudWorld Tokyo 2017」。クラウドやFinTech(金融とITの融合)などをテーマに数多くのセッションを展開し、参加者にとって自分の興味分野に照らしてOracleの最新情報が得られる網羅的なイベントとなっていた。「デジタルイノベーションを加速するために」と題した、全日本空輸(ANA)グループのシステム構築を担うANAシステムズの導入事例セッションでは、現在の最新情報だけではなく将来の可能性にまで話題が及んだ。Oracleのクラウドサービス群「Oracle Cloud」のAPI管理サービス「API Platform Cloud Service」を使うことで、顧客にどのようなベネフィットを提供しようとしているのか。そこに、ANAシステムズが考える顧客目線での情報提供の将来像が垣間見えた。
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日本オラクルの西川彰広氏(CloudPlatformソリューション本部)は、企業ITは2つに分類できると紹介した。日々の業務を確実に遂行するためのITと、ブランド、差別化、市場をリードするためのITだ。前者がいわゆるSoR(Systems of Record)、後者がSoE(System of Engagement)に該当する。「これらを今風に言い換えると、オートメーションとオープンイノベーションということになるでしょう」(西川氏)
別の切り口として、オンプレミスとクラウドというITの分け方もある。自社にとって重要なデータをオンプレミスで扱う企業は少なくない。その半面、オープンイノベーションを進めるには他社のシステムとも連携しやすいクラウドが優位になる。クラウドサービスとして提供されるマネージドサービスの多くは、標準でAPIを備えていることが多いためだ。オンプレミスや、オンプレミスとクラウドのハイブリッド型で業務システムを構築している場合にはAPIを自社で開発し、セキュリティを確保した上で他社システムと連携することになる。
こうした自社開発の手間を削減するためにOracleが提供しているのが、Oracle API Platform Cloud Serviceだ。オンプレミス、クラウドを問わず安全性を確保してAPIを公開できるマネージドサービスで、セキュリティ機能も備える。ユーザー企業の既存システムに大きな改変を加えることなく、他社システムとの連携を可能にする。
Oracle API Platform Cloud Serviceのユーザー企業の1社であるANAシステムズは、ANAやその提携航空各社の運航情報を管理している。同社はOracle API Platform Cloud Serviceを使って提携する航空各社のシステムを連携させた。ANAシステムズの上田晃裕氏は、「航空各社の運航情報をANAのWebサイトではなく、各航空会社のWebサイトで公開したいという要望があった」と述べる。
運航情報は航空業務の根幹に関わる重要なデータであるため、厳重なセキュリティ対策を施したオンプレミスのシステムで管理していた。これを他社システムと連携させるためには、高いセキュリティを確保できるアクセス経路を用意しなくてはならない。一般的に、他社システムがアクセスすることを想定していない既存システムに新たなアクセス経路としてAPIを構築し、アクセス権限を追加することには、大きなコストが伴う。今回ANAシステムズは、認証機能付きのAPIをクラウドのマネージドサービスとして利用できるOracle API Platform Cloud Serviceの採用によって、低コストかつ短期間で実装できたという。
「Oracle API Platform Cloud Serviceを使うことで、API認証などの機能を自社で構築する必要がなく、スピーディーかつ安全に航空各社へ情報を提供できるようになりました」(上田氏)
提携航空会社との連携だけでなく、ANAグループでもAPIを使った新しいサービスを模索し始めている。既に実現しているものの1つが、空港窓口でソフトバンクロボティクスのロボット「Pepper」を使った運航情報や搭乗口の案内だ。Pepperに向かって自分が乗りたい便名を伝えると、搭乗口の場所を案内してくれるという。
もう1つ、発表したばかりのサービスが、音声認識テクノロジーを搭載したスマートスピーカー「Amazon Echo」を使った運航情報の提供だ。「Amazon Echoの日本発売に合わせて『スキル』を公開した」(上田氏)という。スキルとは、Amazon Echoにおけるアプリケーションに当たる機能のこと。顧客は「アレクサ、ANAを開いて」と呼び掛けることで、音声で運航情報を確認できるという。自然言語を解釈できるのがAmazon Echo用スキルの大きな特徴だ。顧客が「アレクサ、ANAで午後6時に出発する羽田発伊丹行きを調べて」のように問い掛ければ、Amazon Echoが「羽田18時発伊丹行きのANA37便は、定刻通り18時出発、19時10分到着予定です」などと運航情報を音声で案内してくれる。出掛ける前は何かと準備に追われ、手がふさがっていることが多い。スマートフォンを取り出すことなく音声だけで運航情報を確認できれば便利になることだろう。
APIを通じてパートナーと連携することでANAが目指す、到着のその先
これまでに実現しているサービスから、APIに大きな可能性を感じ始めたANAシステムズ。上田氏は、APIを通じてパートナーと連携することで、新たな価値を創造し、顧客に提供できるのではないかと将来構想を広げている。まだ「アイデアの1つ」としつつ、APIがあることでパートナーとともに実現可能なサービスについて語った。
ANAシステムズが提供できる情報は「予約」「搭乗」「運航」の3つに大別できる。予約は空席や予約内容、搭乗は空港での案内、運航は出発や到着の状況に関する情報だ。「この中で利用者にメリットを提供できるのは、出発時刻や到着時刻などの運航情報だと考えています」(上田氏)
そもそも出発時刻、到着時刻とは、何をする時刻を表しているのか。旅客機は乗客が全員乗り込んでドアを閉めた後に、けん引車に押されて駐機場を離れ、滑走路に向かう。このとき駐機場を離れる時刻を出発時刻と呼ぶ。乗客が旅客機に乗り込む時刻でも、旅客機が飛び立つ時刻でもないのだ。そして目的の空港の滑走路に着陸し、滑走路を移動して、けん引車に引かれて駐機場に停止する。スタッフが旅客機に昇降口を接続して安全確認を済ませた後、乗客はやっと航空機から降り始める。旅客機が駐機場に停止する時刻を到着時刻と呼ぶ。
実際に飛行機を利用する方はご存じかと思うが、乗客が飛行機に乗り込むのは出発時刻よりも早い時刻だ。その前に手荷物検査場を通り、搭乗口まで移動しておかなければならない。一方で到着時は、到着時刻を過ぎてやっと飛行機から降りても、空港によってはかなりの距離を移動しなければならない。預けた手荷物の返却を待つ時間もある。「空港から目的地に向かう電車やバスに乗れるのは、到着時刻から何分も後のことになります」(上田氏)
講演で上田氏は、来場者に挙手を願う形で問うたところ、国内線では出発予定時刻より約1時間前に空港に着くよう行動する人が多かった。到着から電車やバスへの乗り継ぎまでは、約30分の余裕を見ている人が多かった。この時間をできるだけ短く、できるだけ有効に使ってもらいたいというのが、上田氏の考えだ。
例えば運行情報と空港の施設情報を組み合わせて分析するシステムを構築すれば、到着時刻から乗り継ぎの電車の乗り場まで移動するのに何分かかるのかを顧客に案内できようになる可能性がある。移動経路上の施設情報も分かれば、混雑しているトイレを通り過ぎて、次の場所にある空きトイレを使うよう提案できる。このシステムを乗り換え案内のサービスと連携させれば、空港から目的地までの移動時間も示せるようになるだろう。「もしかしたら、短い乗り換え時間で飛び乗る各駅停車より、次に来る急行を待った方が目的地に早く到着できるかもしれません。そういうことが事前に分かれば、到着してからの移動に余裕を持てます」(上田氏)
今は、航空機が駐機場に停止してから実際に飛行機を降りるまでの待ち時間に、乗客はスマートフォンを使える。到着時刻は既に分かっているが、そこから手荷物受取場所までに歩いてどれくらいかかるのか。乗り継ぎ駅までさらに何分歩くのか。その途中のどこにトイレなどの施設があるのか。スマートフォンで前述のようなシステムを利用できるようにすれば、飛行機を降りる前に、これらをチェックできるようになる可能性があるということだ。
「APIでパートナーと連携することで、到着した後も気持ちに余裕を持って行動してもらえるようになるかもしれません。それが、ANAシステムズが今考えている、『到着のその先』です」(上田氏)
APIを使ったANAグループの将来展望を、大いに期待を持って見守りたい。
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