Column
プロジェクトの「複雑さ」を査定する
プロジェクトを成功させるためには、そのプロジェクトの複雑さを前もって把握し、それを顧客に明確に伝えることが重要だ。
プロジェクトはその目的と環境によって、複雑さも大きく異なる。例えば、2種類の壁で考えてみよう。どちらも面積は30平方メートルだが、一方は幅が30メートルで高さが1メートル、もう一方は幅が10メートルで高さが3メートルだとする。これらの壁の設計と建築にかかる時間やリソース、必要となるツールは同じだろうか? どちらも同じだけのリスクを抱えているのだろうか?
1つ目の壁の高さであれば、石工や石工職を登用する必要がないため、壁作りには足場も不要となる。そのため、1つ目の壁の方が、コストもリスクも少なく済む。2つ目の壁の方が、難しい作業となる。工事施工者は壁の高さを踏まえて、設計、材料、足場を入念に計画しなければならない。この構造では、石工らを最上部までつり上げるためのクレーンが必要となる。さらに、この壁の建築には、幅広いスキルを備えたスタッフが必要となり、背負うリスクもより大きなものとなる。
IT事業のプロジェクトにおいては、作業の進展とともにその複雑さが明らかとなり、結局、締め切りに間に合わなかったり、予算が超過したり、顧客の期待に添えなかったりといった結果に終わる場合が少なくない。プロジェクトマネジャーがプロジェクトの複雑さを前もって把握し、それを顧客に明確に伝えることが重要だ。そうすれば、プロジェクトのコストだけでなく、必要なリソースや所要時間についても、より正確な見通しを得られることになる。
複雑さを予測する
プロジェクトの複雑さを予測する際は、プロジェクトには「ビジネス」と「技術」という2つの次元があると考えるといい。そして、この2つの次元はそれぞれ、独自の属性セットを備える(属性の総数はプロジェクトによって異なる)。各属性がもたらす複雑さがそれぞれ1から4までのスコアで評価され、2つの次元それぞれの集成値が決定する。その値を2次元のチャートに表示すれば、そのプロジェクトの「ビジネス面の複雑さ」と「技術面の複雑さ」が描かれることになる。
ビジネス面の複雑さ
プロジェクトのビジネス面の複雑さは、例えば、競合他社の存在、部門間協力の必要性、現行のビジネスプロセス、顧客の関与、資金的損害の可能性、地理的要因、規制による制約など、さまざまな要素によって決まってくる。こうした属性の複雑さをそれぞれ4段階で評価する。例えば、ビジネスルールが明確に定義され、静的であるなら、複雑さは低レベルとなり(スコアは1)、ビジネスルールがまだ定義されていなかったり、動的であるなら、複雑さは高レベルとなる(スコアは4)。同様に、既に事情を熟知している既存市場に製品を投入するということならば、複雑さは低レベルとなる。逆に、新規市場に製品を投入するということならば、複雑さは高レベルとなる。
技術面の複雑さ
プロジェクトの技術面の複雑さは、例えば、セキュリティのニーズ、ハードウェア/ソフトウェアの安定性、取引の規模、プロジェクトチームの経験、技術統合のレベルなど、ざまざまな要素によって決まってくる。例えば、既に使い慣れた技術を幾つか統合するだけならば、複雑さは低レベルだろうが(スコアは2)、多様なベンダーの異種技術を多数統合するとなれば、複雑さも高レベルとなるだろう(スコアは4)。
複雑さの査定プロセスは動的であり、プロジェクトの複雑さは何か大きな変更がある度に(例えば、プロジェクトの規模、リソース、技術、企業戦略などが大幅に変更された場合)、再検討し、更新すべきだ。プロジェクトのビジネス面の複雑さと技術面の複雑さを理解すれば、適切なスポンサー、プロジェクトマネジャー、チームを結集し、内在的なリスクを整理するのにも役立つ。プロジェクトを実行するか否かの判断には、プロジェクト全体の複雑さを把握することが不可欠だ。そこで、わたしからプロジェクトマネジャーへのアドバイスは次のようなものだ。「チームの能力を上回るほど複雑なプロジェクトは、それがプロトタイプであったり、その唯一の目標がそこから何かを学ぶことでもない限り、引き受けないことだ」
本稿筆者のゴパル・K・カプール氏はカリフォルニア州サンラモンのプロジェクト管理センターの代表で、著書に「Project Management for Information, Technology, Business and Certification」がある。
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