無線環境の測定と改善
無線LANの管理性を高める802.11kと802.11v
2008年3月にはIEEE規格の802.11kが、2009年には802.11vが正式に承認される。それぞれの規格で実現できるメリットや概要を紹介しておこう。
新しいIEEE規格の802.11kと802.11vは、無線LANの管理性向上を目的としている。いずれも2002年から標準化が進められている。
IEEE 802.11kでは、アクセスポイント(AP)やノートPCといった無線コンポーネントによって作られる無線周波数環境の測定情報が規定されている。また、コンポーネントがこの測定情報を交換する方法も定められている。この規格は現在、承認投票が実施されており、2008年3月初めに正式に承認される見通しだ。
IEEE 802.11vでは802.11kで規定される測定情報を無線環境の管理に利用する方法が規定されている。無線LANの信頼性、スループット、サービス品質の向上につなげる狙いだ。802.11v委員会は追加機能の検討を続けている。802.11vは2009年に正式承認される見通しだ。
無線ネットの普及で電波干渉が問題に
無線ネットワークの幅広い普及を背景に、オフィスビルや共同住宅、ショッピング街で、無線ネットワーク間の電波干渉が問題となっている。この状況は、無線サービスを提供するコーヒーショップなどの増加に伴い、さらに悪化するとみられる。
標準化中のIEEE 802.11n規格に対応する機器が出回っていることも、問題に拍車を掛ける。IEEE 802.11n信号は、従来の規格の信号よりも広いエリアに届く。802.11n機器の導入が進むとともに、ネットワークの重複の問題はより深刻になると予想される。
無線LANなどの無線環境の測定
IEEE 802.11kでは、稼働中の無線LANの管理に役立つ測定情報が規定されている。無線ステーションはほかの無線ステーションに以下の項目の測定と報告を要求できる。
- そのステーションの範囲内にある指定されたチャンネルまたはすべてのチャンネルにおけるAPの数
- 各APのビーコン信号の強度
- 指定された時間内に受信したフレームの数、フレームを受信したすべてのステーション、受信したフレームの数、各送信元の平均信号強度
- 各チャンネルにおける無線LANの動作レベル
- 802.11デバイスに干渉する可能性がある携帯電話や電子レンジといったデバイスから発信される、各チャンネルにおける無線LAN以外の無線の動作
- 送信を待っている間に発生した遅延時間の平均、失敗した転送の数、受信したフレームで検出されたFCSエラーの数などの統計
- 要求先ステーションで測定された要求元ステーションの信号長
- ほかのステーションの位置。この項目の要求は、RFC 3825で定義されている位置パラメータを使って応答される。このパラメータには、緯度、経度、高さ、ビル内の階数などがある
- フレームの流れの統計
- 近隣のAP。この情報は、モバイルステーションにAPの切り替え準備をさせるために使われる
これらの測定情報はステーションに保存され、ネットワーク管理のためにSNMPで提供される。
無線LAN管理を改善するIEEE 802.11v
IEEE 802.11vは、802.11kで定義される測定情報を利用して、スループット、信頼性、サービス品質の向上を可能にする。
ステーションは特に指定がない場合、最も信号が強いAPと接続する。だが、このAPが過負荷になる場合もある。802.11vにより、APがステーションにコマンドを発行し、別のAPまたはAP群のいずれか1台に接続するよう指示できるようになる。また、APがステーションとの接続を解除しようとする際、ステーションが別のAPに接続しなければならないことを通知できるようになる。
携帯電話や電子レンジ、ほかの無線LANステーションからの干渉の問題は、チャンネルを切り替えることで軽減できる場合がある。802.11vでは、ステーションは新しいメッセージタイプを利用して、APに干渉を知らせることができる。APはこれを受けてチャンネルを切り替えられる。
802.11vでは、ステーションがサポートする無線チャンネルの報告に加え、出力範囲やデータレート、サポートされている認証タイプの通知をAPがステーションに要求するためのコマンドも提供される。また別のコマンドでは、APは指定したイベントが発生した場合に報告するようステーションに要求できる。例えば、トラブルシューティングに役立てるため、別のAPに切り替えた場合、APはその理由とともに切り替わったことを報告するようステーションに要求できる。
バッテリー電源の節約
802.11vで提供されるコマンドには、ステーションの省電力に役立つものも含まれている。その1つでは、ステーションはブロードキャストやマルチキャストフレームの間隔を広げるようAPに指示できる。ステーションはこのコマンドを使うことで、スリープモードで動作する時間を延ばし、バッテリー電源を効果的に節約できる。
802.11vの省電力機能には、APがステーションの代わりにARP(Address Resolution Protocol)要求に応答するというものもある。この機能のおかげで、ステーションはARP要求に応答するために頻繁に通常モードに復帰することなく、スリープモードでの動作を継続できる。また、APはステーションとの接続を解除する前に、ステーションがスリープモードで動作できる時間をステーションに知らせることもできる。
さらに、802.11vはビーコンとプローブ要求の数を削減できる。複数の基本SSID(Service Set Identifier)をサポートするAPは、SSIDごとにビーコンを送信する代わりに、1つのビーコンでSSIDを一括して報告できる。また、ステーションは、SSIDごとにプローブ要求を出す代わりに、すべてのSSIDを1つのプローブ要求で調べられる。
802.11kと802.11vが両方とも承認されれば、ネットワーク管理者はネットワークの管理と最適化を実現する強力な新しい方法を手に入れるだろう。
本稿筆者のデビッド・B・ジェイコブズ氏はJacobs Groupに勤務し、ネットワーキング業界で20年以上の経験を持つ。フォーチュン500企業ならびにソフトウェア分野の新興企業を顧客として、最先端のソフトウェア開発プロジェクトの管理やコンサルティングを手掛けてきた。
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