衝突や不満の火種
職場におけるコミュニケーション問題
コミュニケーションは職場におけるすべての心理的プロセスの基礎にある。コミュニケーションの過多・過少や「ミスコミュニケーション」がどのような問題を引き起こすかを見ていこう。
本稿の狙いは、オーバーコミュニケーション、ハイポコミュニケーション、ミスコミュニケーションという概念を用いて、職場における一般的なコミュニケーション問題を明らかにすることだ。
現代の経営管理理論は、コミュニケーションを非常に重視している。これは、コミュニケーションが職場におけるすべての心理的プロセスの基礎にあるからだ。そうしたプロセスには、命令、管理、協力、調和、委任、通知、フィードバックなどがある。言い換えれば、社外のビジネス環境および社内の管理/業務プロセスがどのようなものであれ、コミュニケーションがそれらすべての中心にあるということだ。
多くの人々がコミュニケーションについてしきりに論じているのは、それが多くの領域にまたがる概念であるからだ。そのために、「オーバーコミュニケーション」「ハイパーコミュニケーション」「ハイポコミュニケーション」といった言葉が考え出されたのだと思う(訳注:ハイパーは「過多」、ハイポは「過少」を意味する)。これらの用語は、コミュニケーションの量的側面に注目したものだ。もう1つの新語が「ミスコミュニケーション」で、これはAがBに何かを告げ、Bがそれをまったく違う意味に解釈することを指す。では、オーバーコミュニケーション、ハイポコミュニケーション、ミスコミュニケーションという概念を用いて、職場で共通するコミュニケーション問題について考えてみよう。
コミュニケーションには適切な量が必要であるということについては、誰も異論はないだろう。社内あるいは部署内で十分なコミュニケーションがなければ、1つないし複数の心理的プロセスに支障を来し、業務を遂行できないというリスクが生じる。このような状況は、ハイポコミュニケーションと表現できるだろう。一方、職場内でのコミュニケーション過多もさまざまな悪影響をもたらす可能性があるが、その深刻度はコミュニケーションの内容、コミュニケーターの役割、背景状況によって異なる。これはオーバーコミュニケーションとも呼ばれる。
例えば、わたしは会社の業務連絡のために毎月1回、開発者とミーティングを持っている。月に1回がちょうど十分なコミュニケーションだ。これを週1回にすれば、オーバーコミュニケーションになるだろう。年に1回だと、ハイポコミュニケーションということになる。
誤ったコミュニケーションは、その量だけに起因するわけではない。コミュニケーションでは、適切なコミュニケーターの間で適切なコンテンツを適切なタイミングに伝達しなければならないのだ。そうでないと、ミスコミュニケーションが生じる可能性がある。これは非常に微妙なポイントだ。人々は、話す必要があると誤って思い込んでいる事柄について話すのに多くの時間を費やすことが多い。例えば、半年後にスタートする新しいプロジェクトではSmalltalkでコーディングする作業が必要となるが、あなたの開発チームはその言語を使った経験がないとする。この場合、以下のような状況がミスコミュニケーションだ。
- 2人の開発者がSmalltalkについて話し合うのに時間を費やした後で、それに関する記事を見つけるためにWebを検索する。これがミスコミュニケーションであるのは、そのタイミングが適切でないからだ
- Smalltalkやオブジェクト指向プログラミングについて、セールスマネジャーと長時間にわたって話をするのもミスコミュニケーションだ。セールスマネジャーはSmalltalkのことを詳しく学ぶ必要がないからだ
このような状況はまさしく、時間と労力の無駄だ。ミスコミュニケーションが衝突や不満をもたらすと、状況は一層悪化する。これは経営幹部が絡んだときに起きやすい。幾つかの例を示そう。
経営幹部がマネジャーを通さずに開発者に仕事を割り当てる。これは以下を損なう可能性がある。
- 作業スケジュール
- マネジャーの権威
経営幹部がマネジャーを通さずに開発者から仕事量を見積もらせる。これは以下に悪影響を与える可能性がある。
- マネジャーの信用。開発者は経営幹部に好印象を与えようとすることが多いため、その見積もりは楽観的になりがちだ
- マネジャーの権威。開発者がマネジャーに対抗意識を抱くようになるからだ
経営幹部がソフトウェアデザイン会議に出席する。開発者は経営幹部に好印象を与えようとすることが多いため、以下に悪影響が及ぶ可能性がある。
- 会議時間。開発者の話が長くなるからだ
- 会議の内容。会議が客観的な議論の場ではなく、個人的な意見の主張の場になりかねない
- マネジャーの権威。開発者は自分たちの方がマネジャーよりも利口なことを示そうとするからだ
- チームメンバー同士の関係。ほかのメンバーが間違っていることを示そうとする開発者が出てくるからだ
- 会議の成果。ほかのメンバーの意見が気に入らないという理由だけで、間違った決定を支持する開発者が出てくるからだ
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