Column
プロジェクトマネジャーに欠かせない2つの素養
プロジェクトマネジメントはアートであると同時に科学であり、プロジェクトマネジャーには創造性と技術的スキルが要求される。
プロジェクトマネジメントは、生まれつきの才能が求められるアートなのだろうか、それとも学ぶことができる科学なのだろうか。その両方である、というのが真実だ。
プロジェクトマネジメントのアート的側面には、リーダーシップ、人材育成、動機付け、コミュニケーションなどが含まれる。アートの才能を持ったプロジェクトマネジャーは、優先すべき業務が変化したときにチームをうまく導き、問題が生じたときにそれを巧みに解決し、いつ誰にどんな情報を伝えるべきかを正しく判断することができる。
プロジェクトマネジメントの科学的側面には、業務の計画、見積もり、測定、管理などが含まれる。さらに「いつ、誰が、何をするのか」という問題も含まれ、ツールとテクニックを用いて管理する堅実なスケジュールと予算が要求される。その最終的な目標は、以下のようなプロジェクトに関するスポンサーの4大疑問に答えることである。
- プロジェクトはどこまで完了したのか?
- 現時点までのプロジェクトコストは?
- プロジェクトはいつ完了するのか?
- プロジェクトのトータルコストは幾らか?
トップクラスのプロジェクトマネジャーは、アートをベースとするスキルと科学をベースとするスキルの両方を持ち合わせている。プロジェクトマネジャーが主観的状況に対処するには、適切な行動指針を見極めるための柔軟なスキルが必要である。従業員のさまざまな仕事のスタイルや、プロジェクトのさまざまなシナリオに応じて、異なる管理手法が要求されるのである。また、プロジェクトマネジャーが構想を管理し、是正措置を提案するには、事実に基づく客観的なデータも必要である。
バランスが欠如している(アートまたは科学のどちらか一方だけに秀でている)プロジェクトマネジャーは、両方のスキルを兼ね備えたプロジェクトマネジャーほどの効果を上げることはできない。
例えば、あるマネジャー(A氏としよう)は、素晴らしい科学的スキルを備えていたが、プロジェクトを「キーボードで」管理した。A氏のプロジェクト進捗リポートは、A氏が出来高という指標に関しては非常に優秀だが、自分のチームのスタッフと協力しながら仕事をするのを恐れていることを示していた。A氏は電子メールでしかコミュニケーションを行わなかった。チームのメンバーはこのマネジャーを尊敬せず、直接的な意思疎通がないことが仕事の効率にも響いていた。A氏がスタッフにモチベーションを与える方法を知っていたら、このチームは1カ月早くプロジェクトを完了することができただろう。アートの欠如は、プロジェクト全体に悪影響を及ぼすのである。
これとは対照的に、別のプロジェクトマネジャー(B氏とする)は、納期、コスト、品質という3つの制約条件をスポンサーと適切に取り決めた。B氏はスポンサーに優先事項(品質と時間)を選択させることにより、プロジェクトのコスト面での裁量を確保した。しかし残念なことに、B氏は作業を監視/コントロールせず、プロジェクトが当初の見通しよりも長引いたときにも警告を発しなかった。プロジェクトのスケジュールを守ることができなかったため、このマネジャーはスポンサーの信頼を失った。科学が欠如していてもだめなのである。
その一方で、アーティストと科学者の両方を体現している人もいる。そんなプロジェクトマネジャーC氏は、チームのメンバーと協力して、すべての重要な情報(タスク、労力、リソース、依存関係など)を盛り込んだプロジェクトスケジュールを作成した。そしてC氏は、経営幹部向けにスポンサーの4大疑問を明確化した分かりやすいスケジュール表をVisioで作成した。幹部たちがプロジェクトをもっと早く完了できないかとプレッシャーをかけてきたとき、C氏は計画の妥当性を納得させる自信はあったが、この要求に応じるために、チームのスタッフと共同で代替案を作成した。プロジェクトがスタートして6カ月経過した時点でチームはスケジュールから3週間遅れており、C氏はプロジェクトの遅れを報告した。このマネジャーは真実を報告する勇気を持っていたのだ。これは、プロジェクトマネジメントのアートで不可欠な要素である。
プロジェクト成功のカギは、プロジェクトマネジャーという役目にふさわしい人材、すなわちアートと科学の両方を実践できる人材を選ぶことである。どちらが一方が欠けているというのは、アクセルだけでブレーキがない車のようなものである。プロジェクトは目的地に到達するかもしれないが、その背後には死屍累々の光景が広がっていることだろう。
本稿筆者のマイケル・ビンジェ氏およびマイケル・バーク氏は、ミネソタ州ミネアポリスにある経営コンサルティング会社、トライセンシャルの共同社長である。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
新着ホワイトペーパー PR
-
市場調査・トレンド
数百万台規模のデータで判明、企業のIT環境に潜む「見えない課題」とは -
製品資料
クラウド開発環境で高まる運用の課題、選定において重要な判断軸とは? -
製品資料
Oracle DatabaseをAI活用基盤へ、クラウド移行を阻む4つの課題と解決策 -
市場調査・トレンド
数百万台規模のデータで判明、企業のIT環境に潜む「見えない課題」とは -
製品資料
サーバ高密度化を阻む「見えない配線問題」 UTPやDACの限界を超える選択肢は?
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
「OSの選定・導入」に関するアンケート
-
2
Microsoft製品でここまで自動化できる 情シスがやめられる手作業10選
-
3
ISMSの“コンサル丸投げ”が招く数千万円の無駄 NTTドコモビジネスの脱出劇
-
4
Oracle巨大ITプロジェクトはなぜつまずいたのか 8年で導入1割、追加で170億ドル
-
5
Netflixのバックエンドは「ほぼJava」 3000超のアプリを支える開発基盤の裏側
-
6
100億円の「Linux更新」を回避 みずほ銀行が選んだ“おきて破り”のRHEL延命策
-
7
なぜOpenAIやAnthropicのAIは「脱走」したのか 情シスが迫られるエージェント統制
-
8
「企業内サーバ環境の利用実態」に関するアンケート
-
9
生成AIで開発工数を圧縮 「工数150分の1」を叩き出した実例
-
10
「IoT通信環境の構築・運用」に関するアンケート
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
AIエージェントで多様な日常業務を効率化するための入門ガイド
-
2
財務・会計はAI活用でどう変わる? 調査で見えた変革の道筋
-
3
AIが「わざわざ使うツール」になっていない? 業務で自然に使う導線にする秘訣
-
4
JR西日本ITソリューションズが「監視業務の属人化」を解消した方法とは?
-
5
「脱Excel」か「Excel快適化」か? 現場にやさしい業務改善の進め方
-
6
「結局、一部の人しか使わない」 AI活用が業務に定着しない根本的な理由
-
7
コスト分析で見る「デバイス復旧」の代償 損失額から導きだされた投資戦略とは
-
8
Macの安全神話は崩壊? 最新の脅威動向から見えた攻撃のトレンドと有効な対策
-
9
ゼロトラストにおける「IDaaSの課題」と補完すべき重要機能とは?
-
10
情報セキュリティ対策早分かりガイド:25の自社診断で弱点と解決策を理解
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー