必要十分な品質を保つためにすべきこと
企業向けビデオ会議システムのセットアップ法──帯域要求を算出する
ビデオ会議システムを導入するなら、まず通話当たりの必要帯域やビデオ会議通話の件数といった帯域要求を把握する必要がある。本稿では、その方法を解説する。
企業向けビデオ会議システムは、社内ネットワークへの要求が非常に厳しいアプリケーションだ。ビデオ会議システムをセットアップする際の最初のステップは、ネットワークに対するビデオ会議の帯域要求を把握することだ。ビデオ会議システムの帯域要求が分かれば、それに対応できるようネットワークをプロビジョニングすればいいのだ。
ビデオ会議システムの帯域要求を決定する基本パラメータは以下の2つだ。
- ビデオ会議通話1件当たりの必要帯域
- 各ネットワークリンク上で同時に行われるビデオ会議通話の件数
ビデオ会議システムの帯域要求を把握する
ビデオ会議通話の必要帯域は、小規模なデスクトップシステムでは128Kbps程度で済むものもあるが、大規模なテレプレゼンスシステムともなれば20M~30Mbpsにもなる。ビデオ解像度とセッションの動画処理能力は、必要帯域量と直接結び付いている。特定の解像度とフレームレートに対するビデオ会議の帯域要求を次の表に示す。ビデオ会議通話セッションの動画処理能力はフレームレートによって決まり、映像の画素数、すなわち映像の精細さは解像度によって決まる。
| 帯域 | 解像度 | フレームレート |
|---|---|---|
| 384Kbps | CIF | 30fps |
| 512Kbps | 4CIF | 15fps+ |
| 768Kbps | 4CIF | 30fps |
| 1Mbps | HD720 | 15fps+ |
| 2Mbps | HD720 | 30fps |
| 4Mbps | HD720 | 60fps |
| 6Mbps | HD1080 | 30fps |
この表は動画伝送に必要な帯域を示す。ビデオ会議システムの導入計画を策定する際には、これらの値を参考にしてネットワーク帯域を評価するといい。これらはRTPパケットのヘッダ内で使用されるトラフィック量だ。IPネットワークで実際に消費される帯域は、これにRTP、UDP、IP、イーサネットの各ヘッダを加えたもので、約20%高い値となる。すなわち、1Mbpsのビデオ会議通話で実際に使用されるネットワーク帯域は約1.2Mbpsとなる。混乱を避けるために、わたしはこの2つの値を「伝送帯域」(1Mbpsの方)および「ネットワーク帯域」(1.2Mbpsの方)と呼んでいる。
あなたの会社に適した解像度とフレームレートを決定するに当たっては、ディスプレーを使用するのかプロジェクターを使用するのかといったことを含め、ユーザーが実際にビデオ会議システムを利用する環境を念頭に置いた上で、検討中のビデオ会議システムの通話品質が十分であるかどうか判断しなければならない。エンドユーザーは通話品質に満足できなければ、すぐにほかのコミュニケーション手段(電話、出張など)に切り替えるだろう。
同時に実行されるビデオ会議通話の件数を推定する
次のステップは、各WANリンクで何件の同時通話をサポートしなければならないかを決定することだ。ビデオ会議システムが1つあるいは2つしかないような小さなオフィスであれば、2つのシステムが同時に稼働することを想定するだけで十分だ。大規模なオフィスであれば、最も頻繁に会議が行われる時期を基準にして、何件のビデオ会議通話が同時に実行されるかを推定する。時間帯が異なる複数のオフィスがある企業の場合は、時差を考慮に入れること。通話パターンをネットワークトポロジーにマッピングし、推定される同時通話数と上記で決定した通話1件当たりの必要帯域を記入したスプレッドシートを作成する。こうしたスプレッドシートを利用すれば、入力パラメータを変更するだけで、「こうするとどうなる」といった疑問を解決することができる。
ビデオ会議ブリッジ
ビデオ会議ブリッジ、すなわちMCU(多地点接続装置)は、広帯域ホットスポットのようなものだ。同時多地点ビデオ会議通話に参加しているビデオ会議端末はすべて、このMCUに直接接続される。このため、MCUは広帯域接続をサポートできる場所に設置する必要がある。
ビデオ会議の帯域要求について──補足
MCUはサーバのような外観をしているので、データセンターに設置する企業が多い。しかし、MCUを設置するのに最も適した場所は、WANサービスプロバイダーのネットワークの中心部に近いコロケーション施設かもしれない。こういった施設では帯域コストが低い。また、WANのあらゆる部分からビデオ会議通話の接続が行われるため、コロケーション施設はMCUが多数の端末をサポートするのに適した場所だといえる。このアプローチは拡張性にも優れており、社内でのビデオ会議通話の利用拡大に対応できる。
小規模企業であれば、一部のビデオ会議端末に組み込まれているMCU機能に魅力を感じるかもしれない。だがわたしは、この機能の利用を勧めない。エンドユーザーがネットワークトポロジーを理解している必要があり、帯域の制限もあるからだ。どうしてもMCU機能を搭載した端末を利用する必要がある場合は、これらの端末が備えるすべてのMCU機能をサポートするだけの帯域がある本社ビルなどでの利用に限定すべきだ。小規模なオフィスでは、端末搭載型MCU機能の利用を認めるべきではない。WANアクセスリンクの負荷が急増するからだ。
コールアドミッション制御による帯域管理
最後のステップは、ビデオ会議システムにコールアドミッション制御(CAC)機能を組み込むことだ。コミュニケーションマネージャ(ゲートキーパー)は、ネットワークトポロジーを理解し、各リンクで許可された同時通話件数を維持するようプログラムされている。新たなビデオ会議通話がこれらの制限に違反した場合には、通話が拒否される。この仕組みにより、ビデオ会議通話は必要な帯域を確保し、高品質の通話を維持することができるのだ。
本稿筆者のジョン・バートレット氏は米NetForecastの主席コンサルタントで、リアルタイムトラフィック、インターネットパフォーマンス、QoS(Quality of Service)技術を担当する。NetForecastは、トランザクション型アプリケーションやリアルタイムアプリケーションのネットワークパフォーマンス問題を専門に手掛ける企業。同氏は半導体、コンピュータ、通信の各分野で28年の経験を持ち、マーケティング、販売、技術、製造、コンサルティングなどの業務を担当した。マイクロプロセッサ、コンピュータ、ネットワーク機器など40以上の製品の開発に携わった。コンサルティング業務は1996年から担当する。
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