考慮すべきHyper-Vの構造
Hyper-V仮想化環境のセキュリティ対策のポイント
仮想環境でのセキュリティ上の問題の多くはハイパーバイザー自体ではなく、過大な権限の取得や、アプリケーションへのエクスプロイト攻撃に起因する。Hyper-V環境における脅威を回避するポイントを紹介する。
ITセキュリティに関しては、ベンダーがきちんと取り組んでいると感じる人もいれば、非常に厳しい見方をする人もいる。仮想環境では、IT担当者は攻撃される可能性があるレイヤーを自分が増やしていることを自覚しなければならない。新しい攻撃ベクトルが発見されていくのは避けられないだろうが、その悪用を防いで仮想環境のセキュリティを確保しなければならない。
だが、その最大の敵はわれわれ自身かもしれない。マルウェア攻撃を行う連中は既知のエクスプロイト(攻撃コード)を駆使するが、一般的なマルウェア攻撃は通常、機能するための前提として、ユーザーがセキュリティを危うくする操作を自ら行うことを必要とする。われわれIT担当者は仮想環境の管理者として、危険な構成を行い、そうした操作を許してしまっているのかもしれない。
ハイパーバイザーを狙うエクスプロイト
仮想マシン(以下、VM)のハッキングは概念でしかないという人には、VMware環境の脆弱性を狙った2009年に登場したエクスプロイト(CVE-2009-1244)について見ていただきたい。このエクスプロイトにより、VM(ゲストマシン)の攻撃者は、仮想インスタンスからホストマシンを乗っ取ることができた。このエクスプロイトで狙われた脆弱性のパッチは迅速に公開されたが、このエクスプロイトが使用可能なものであったことに変わりはない。
もう1つの有名なハッキングとして、VMから未パッチのWindows Server 2008またはWindows Server 2008 R2のHyper-Vホストに、仮想バスを介してサービス妨害攻撃を行うというものがあった。米Microsoftは、この攻撃で狙われたHyper-Vの脆弱性のパッチを、セキュリティ情報「MS10-102」とともに公開した。
Hyper-Vの構成上の重要な考慮点
IT部門の多くは、サーバへのパッチの適用を着実に行っているが、仮想ホストにパッチを適用するのは厄介だ。全てのVMをオフラインにしたり、別のHyper-Vクラスタメンバーに移動したりするのは時間がかかる。また、私はしばしば経験しているが、リソースがオーバーコミットされていると、これらの操作は不可能だ。ハイパーバイザーをハードウェアの一部として扱うと、短期的には安定運用ができるかもしれない。だが実際には、潜在的なセキュリティホールを作ってしまうことになる。このため、このレイヤーでのパッチ適用が重要になる。
仮想環境でエクスプロイト対策として最新パッチを適用するのは、管理者にとって当然のことだ。しかし今のところ、この作業はなおざりになっているかもしれない。エクスプロイトを利用したハイパーバイザーへの攻撃は、まだ比較的珍しいからだ。そのため、管理者は仮想化によって一定のセキュリティや保護が確保されると想定することが多いが、それは思い込みにすぎないかもしれない。また管理者は、日々のVM管理の手間を軽減するために、警告やベストプラクティスを無視するかもしれない。しかし、これらのまずい選択は行われたとたんに忘れられがちだ。管理者はシステムが攻撃されるまで、選択を誤ったことに気付かないだろう。
Hyper-Vに焦点を絞ると、最初のセットアップの際に行うべき重要なことが幾つかある。これらを行うことで攻撃ベクトルを減らせる。その1つが仮想ネットワークの設定だ。ハイパーバイザーがホストする仮想イーサネットスイッチは、親ホストのネットワークカードを使って物理レイヤーに接続する目的でさまざまな方法で利用され、接続される。構成を誤ると、これらの仮想接続がいろいろな問題を引き起こす恐れがある。
管理ネットワークをゲストVMと共有する設定にすると、攻撃ベクトルが発生し、VMがHyper-Vの管理OSにアクセスし、正当な資格情報でHyper-Vのホストと設定や、他のVMにアクセスすることが可能になる。この設定オプションは、デフォルトではオフになっているが、非常に多くの管理者がオンに切り替える。多くのマシンから管理ができ、管理が容易になることや、使えるネットワークインタフェースカード(NIC)が限られていることが理由だ。だが、このオプションをオンにすると、セキュリティ上の脅威を招く。管理OSがホストするどのVMからも管理OSを攻撃できてしまうからだ。このため、管理専用ネットワークには、常に物理ネットワークアダプターを専用に割り当てなければならず、これらのアダプターを通常のVMトラフィックと共有するのは絶対に禁物だ。
また、さまざまなマシンからのトラフィックを論理的に分離するために、VLANを認識するようにHyper-Vを構成することもできる。これは、物理レイヤーを意識せずにさまざまなサブネットを1台のマシンに集約し、クラスタ化されたホストをサポートする良い方法だが、実のところセキュリティの向上にはつながらない。一見するとセキュリティ向上につながると思えるかもしれない。異なるVLAN上のVMにはアクセス権が与えられていて、ネットワークレイヤーでルーティングが適切に行われる場合を除けば、お互いのトラフィックを見ることができないからだ。しかし実際には、これらのトラフィックは全て同じ仮想および物理ネットワークを流れており、そのせいでVLANがハッキングされる恐れがある。これは、物理環境で守るべきルールを仮想環境にも応用しなければならないということだ。
このことから、セキュリティ要件が異なるサーバを同一の仮想ホストに混在させないこともポイントになる。個々のサーバは、管理者やIT部門によって何らかの基本的なセキュリティレベルを設定されているはずだ。例えば、DMZ(DeMilitarized Zone)内のWebサーバは、社内ファイルサーバとはセキュリティレベルが異なる。インターネットに公開するDMZ Webサーバは、エクスプロイト攻撃を受ける危険が社内ファイルサーバよりも高いと判断したら、両サーバを同じ仮想ホストに混在させてはならない。また、その2つのネットワークを同じ仮想ホストに接続してはならない。これは、物理環境におけるセキュリティルールを仮想環境に応用したものだ。
Hyper-Vを実行するときは、そのホストではHyper-V以外は実行してはならない。管理者は多くの場合、既存サーバにHyper-Vロールをインストールする。その物理サーバをより有効に活用するためだ。サーバの有効活用という考え方自体は良いが、そのホストでは、他のサーバ機能を存続させてはならない。ホスト上のアプリケーションはVMに移行する必要がある。ほとんどの環境では、アプリケーションコードの脆弱性を追跡し、パッチを当てるのは大抵厄介だ。アプリケーションをホストで稼働させ続けた場合、アプリケーションコードの脆弱性を突くエクスプロイトにより、攻撃者がホストマシンにアクセスできてしまう恐れがある。そうなれば、全てのゲストVMへのアクセスも可能になってしまうだろう。
もう1つのアドバイスは、VM管理のためのアカウントやグループを、仮想ホストを管理するためのものとは別個に用意することだ。そうすれば、VMへのエクスプロイト攻撃が発生しても、仮想ホストは簡単には乗っ取られない。また、できるだけ的確な監査が行われるように、全てのVMにIntegration Servicesがインストールされるようにするとよい。
Hyper-Vは、システムを保護する機能を多数備えている。例えば、ASLR(Address Space Layout Randomization)、仮想プロセッサをユーザーモードで動作させるプロセス、VMごとに仮想デバイスとVMバスを持たせる機能などだ。仮想環境では多くの場合、セキュリティ上の最大の問題はハイパーバイザー自体ではなく、構成の操作による過大な権限の取得や、アプリケーションへのエクスプロイト攻撃だ。常に最新のパッチを適用し、ネットワークを分離しておくというベストプラクティスを実行し、仮想環境に対する重大な脅威を回避しよう。
本稿筆者のエリック・ビーラー氏は、90年代半ばからIT業界に携わっており、そのはるか前からコンピュータ技術に親しんでいた。現在、共同所有するConsortio Servicesを通じてコンサルティングとトレーニングを提供している。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社MatrixFlow] 「物流リソース最適化」ガイド:人員・配車・傭車を出庫依頼の確定前に決めきる -
製品資料
[株式会社キーエンス] なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは -
製品資料
[株式会社セールスフォース・ジャパン] 「CRMは設計と無関係」は本当か? PLMとの融合で実現する高速開発 -
事例
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] AIエージェントの時代にどう備える? 「新たな働き手」を支える3要素とは -
製品資料
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] “横並びの自動化”から脱却、AI活用で生産性と競争力を高める秘訣
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
法務と開発者で「言葉が通じない」問題 トヨタやソニーが語るOSS管理の真実
-
2
なぜ「全社配布Copilot」は使われないのか? 失敗に学ぶAI定着
-
3
なぜ「Gemini 4 Argon」は出遅れたのか? Googleが狙う“逆転のシナリオ”
-
4
ChatGPTは“検索しまくり”でGeminiは“淡泊”? データが明かすAIの裏側
-
5
損保ジャパンはなぜ「COBOL」を捨てなかったのか? 脱メインフレームの真相
-
6
情シスの約8割が転職や退職を意識 調査で分かった“辞めたくなる最大の理由”
-
7
「結局使わなくなる」Microsoft 365 Copilotを半年で定着 キリンの3施策
-
8
「Wi-Fi 7」経由でWindowsが乗っ取られる? 最高権限奪取の恐怖
-
9
「中堅・中小企業のネットワーク・セキュリティ運用実態」に関するアンケート
-
10
情報漏えいはなぜ繰り返されるのか 今すぐ見直すべき「境界」
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
2
家庭用Wi-Fiルーターの業務利用は危険? 避けるべき理由と具体的な対策
-
3
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
-
4
財務部門がAIを最大限に活用する方法 無駄のない戦略的リーダーシップへの道
-
5
LLMが兵器化? 元FBI高官が鳴らす警鐘とセキュリティツール統合のポイント
-
6
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
7
なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは
-
8
生成AIを開発に導入しても効果が見えない? 実証実験で分かった成果と課題
-
9
経産省DX指針から読み解く、受発注業務デジタル化ロードマップ
-
10
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー