FileMaker Proベースの情報共有サービスを利用
【事例】ITで在宅医療のコミュニケーションを促進する「おひさまネットワーク」
今後ニーズが高まると予想される「在宅医療」。在宅医療診療所向け支援サービス「おひさまネットワーク」では、さまざまな職種のスタッフ間におけるコミュニケーションの促進にITを利用している。
在宅医療・介護の連携がより重要に
厚生労働省によると、1970年代は70万人だった年間死亡者数は増加し続けており、ピークを迎える2040年には166万人になり、その8割を75歳以上の高齢者が占めるという。また政府の「社会保障・税一体改革」では、2025年までに病床数を現在よりも7万床削減する方針を掲げており、今後は病院ではなく在宅や介護施設で人生の最期を迎える人が増える時代になる(関連記事:2012年は「地域包括ケア元年」 医療・介護連携の今後)。
兵庫県神戸市で在宅医療に取り組んでいる、医療法人おひさま会 理事長 山口高秀氏(やまぐちクリニック院長)は「これからは未曽有の多死時代。人間は“生まれてから自立するまで”と“歳を取ってから亡くなるまで”の間、周りの人間に支えられて生きている。特に高齢者のケアに関しては、在宅医療・介護における多職種のスタッフ間の連携が重要になる」と説明する。
おひさま会のグループ企業であるグローバルメディックは、在宅医療診療所向け支援サービス「おひさまネットワーク」を運営。おひさまネットワークは、医療機関や介護施設、保険調剤薬局、訪問看護ステーションなどが連携し、高齢者の生活を包括的にサポートするサービスだ。グローバルメディックから派遣されたスタッフが、派遣先の医師と共に日々の健康管理から在宅療養、点滴や褥瘡処置、カテーテル、人工呼吸器の管理などのサービスを提供し、緩和医療やターミナルケアにも対応する。2012年12月現在、兵庫県の東西地域や神奈川県(横浜、小田原)、千葉県浦安市などでサービスを提供している。
在宅療養支援診療所の要件として、緊急入院の受け入れや24時間往診・訪問看護の提供が可能な体制の確保、介護サービスとの連携、在宅看取数の報告などが掲げられている。山口氏は「ITの仕組みがなければ、全ての要件を満たしながら運営することは不可能」と語る。おひさまネットワークでは、情報共有の基盤として「おひさまシステム」を利用している。
FileMakerをベースにした情報共有サービス「おひさまシステム」
おひさまシステムは、在宅医療を支える関係職種のユーザーを対象に「診療記録」や「介護サービスの利用状況」「スタッフ間の意見交換」といった患者に関するさまざまな情報を共有するWebサービス。データベース管理ソフト「FileMaker Pro12」をベースにしており、おひさまネットワークの参加ユーザーであればインターネット経由で場所を問わず利用可能。現在、13企業50ユーザーが導入・利用している。
おひさまシステムは、グローバルメディックが立ち上げた在宅医療の問題解決に向けたプロジェクトを契機に、やまぐちクリニックでの試験導入やフィードバックを踏まえてバルーンヘルプがシステム開発に着手して2011年に運用を開始した。
おひさまシステムは、大きく分けて「患者情報」「活動記録」の2つの情報を管理している。活動記録は、診療記録や患者家族の電話による問い合わせなど、患者に関する全ての医療行為や対応業務が含まれる。現在、職種に合わせて34種類の情報が登録されている。おひさまネットワークでは現在、1000人以上の患者の情報をおひさまシステムで管理している。システムの設計から携わり、開発やサポートなどを担当するバルーンヘルプ システム開発部 主任 片岡達博氏は「活動記録のカテゴリは、システムに参加する連携職種に合わせて随時追加する予定」と語る。
活動記録の主なカテゴリ例
診療記録、検査、他院受診記録、投薬指示、問い合わせ、
薬学的管理指導計画書、訪問薬剤管理指導、診療情報提供書、
物品配達、書類作成依頼
おひさまシステムは、マイページから各機能を利用する。「患者情報」機能では、基本情報から在宅医療・ケアチームなど関連チームの情報を登録する。「活動記録」機能では、受け入れから全ての医療記録や対応内容を一覧表示。各項目をクリックすると、バイタルの結果グラフなどの詳細情報を確認できる。また、在宅療養管理指導書や訪問看護指示書などの各種書類を作成することも可能。
スタッフ間の連携を促進するコミュニケーション機能
おひさまシステムでは、スタッフ間のコミュニケーションを促進する2つの機能を搭載している。その1つの「リマインド」機能は、ユーザーがある患者に関する活動記録を更新し、その情報を特定のスタッフに必ず確認してもらいたい場合に用いる。「例えば、調剤薬局の薬剤師が、患者の服薬内容や経過状況を見て薬の副作用を疑った際の医師確認などに利用している。活動記録の詳細内容に画面を遷移するので、すぐに確認できる。また、備忘録として自分のタスク管理に利用することもある」(山口氏)
もう1つが「申し送り機能」。不特定多数の人に業務連絡や告知、相談が必要なテーマに対して投稿するウォール機能だ。対象者を指定して投稿すると、その情報が対象者のメイン画面にポップアップ表示される。申し送りを受け取ったユーザーは、必要に応じてその詳細な内容を別画面で確認したり、コメントを加えたりできる。
その他、マイフレーズ機能を利用すると、自分専用の用語辞書を「フレーズリスト」として登録でき、リストから選択するだけで入力が完了する。
院外での情報共有にデスクトップ仮想化を採用
おひさまシステムでは、Windows Server 2008 R2のリモートデスクトップ(RDP)機能を利用し、アプリケーション仮想化を実現している。カゴヤジャパンのデータセンターを利用し、RDPサーバとFileMakerサーバ間でデータ処理を行う。クライアント側は配布されたインストーラを導入するだけでシステムを利用できる。
在宅医療における医療情報の在り方
山口氏は「日常生活の中で進められる在宅医療では、医療従事者間で医療情報を共有するだけでなく、患者自身が医療情報を適切な人に提供することが重要。また、さまざまなスタッフの異なる視点や見解から新しい価値を生み出すこともできる。コミュニケーションがより重要になる」と語る。おひさまネットワークではその基盤として、おひさまシステムを活用して機能拡張などを行いながら、連携の輪をさらに広げていきたいという。
また山口氏は「おひさまネットワークの由来は、明るさや暖かさを人々に提供し、生きていくために必要不可欠な“太陽の光”。おひさまネットワークも同様、在宅医療を受ける患者や医療スタッフを支える“なくてはならない”存在になれれば」と語る。おひさまネットワークでは、職種に応じたサービス利用料金の設定によって、その導入促進を図っている。今後はサービス提供エリアを拡大していく予定だ。
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