ソフトバンクテレコム「ヘルスケアセミナー」リポート【後編】
BCPや在宅医療に役立つスマートフォン活用
2012年2月3日開催された「ヘルスケアセミナー2012」では、医療機関のBCPや在宅医療における情報共有といった現場でのスマートフォンやクラウドなどの活用事例が紹介された。
ソフトバンクテレコム主催の「ヘルスケアセミナー2012」が2月3日、東京都港区の明治記念館で開催された(関連記事:2012年は「地域包括ケア元年」 医療・介護連携の今後)。このセミナーでは、医療現場でのスマートフォンやクラウドなどの活用事例が紹介された。本稿では、その中から名古屋大学医学部附属病院と桜新町アーバンクリニックの取り組みを紹介する。
医療ITにおけるBCPのポイント
名古屋大学医学部附属病院(以下、名大病院) メディカルITセンター長 吉田 茂氏は「iOSデバイスの医療現場における展開 ~ユーザーメイドシステムとの融合」と題した講演を行った。その中で、名大病院における「FileMaker」と「iPhone」「iPad」を活用したシステムを紹介した。
名大病院では、富士通中部システムの「NeoChart」を基幹システムに採用。2006年にはFileMakerを病院全体に導入し、「名大の森」というFileMakerシステムを構築して両者を連携させる運用を行ってきた。さらに現在は「FileMaker Go for iPad」を導入し、FileMakerのデータベースをiPadで使用することなどにも取り組んでいる。
同病院は、2011年12月30日から2012年1月2日の3日間、システム更新に当たり電子カルテを停止することになった。電子カルテ導入から10年以上が経過しており、「紙カルテを知らなかったり、運用経験がなかったりするスタッフも多い」(吉田氏)ため、その間の代替システムとなる「電子カルテ停止時システム」をFileMakerで開発した。吉田氏によると「電子カルテ停止時システムは、緊急時にすぐにどのスタッフでも利用できるように設計し、基幹の電子カルテと同一の画面レイアウトと同等の操作性を提供した」という。電子カルテ停止時システムは、3日間で医療スタッフ925人が7260回ほど利用した。
医療ITにおけるBCP(事業継続計画)のポイント
- 自分たちだけでもハンドリング可能なシステム
- 機動性や携帯性に優れた小回りの効くシステム
- 緊急時でもすぐに修正が可能なシステム
- 自病院以外の医療従事者にもなじみやすいシステム
- 情報の二次利用が容易なシステム
吉田氏は「このシステムをベースにして、停電やネットワークダウン時などの災害緊急時でも運用可能な事業継続システムが構築できる」と説明した。その上で、医療ITにおけるBCPのポイントを提案し、「データのクラウド保存や自分たちで修正対応が可能なユーザーメイドシステムは有効に機能する」と語った。
在宅医療の課題を解決するICT活用
2012年は医療保険と介護保険が同時改定されるなど「地域包括ケア」時代の始まりだといわれている。医療法人社団プラタナス 桜新町アーバンクリニック院長 遠矢 純一郎氏は「ICT活用による在宅医療イノベーション」と題した講演で、地域包括ケアが成立する条件に「効率性」と「より高度な連携システム」を挙げた。さらに「在宅医療では24時間365日の緊急対応体制や地域の多職種連携を支えるため、場所を問わずリアルタイムに情報にアクセスしたり、共有できる仕組みが求められる」とし、スマートフォンやクラウド、Webサービスなどを活用した情報共有の取り組みを紹介した(関連記事:情報共有で在宅医療の質の向上に取り組む「睦町クリニック」)。
東京都と神奈川県に3つの在宅療養支援診療所を運営するプラタナスでは、複数の医師によるグループ診療体制によって約2000人の在宅患者を支えている。桜新町アーバンクリニックでは、さまざまなiPhoneアプリを利用して情報共有を行っている。
例えば、スタッフのスケジュールをGoogleカレンダーで共有したり、移動中にボイスレコーダーに診療記録を録音してそのデータをメールで転送し、事務スタッフがこの音声を文字起こして電子カルテに反映させているという。また、床ずれなどの画像を撮影してクラウドストレージに保存したり、医学文献の情報検索や薬品の在庫・発注管理などにもiPhoneアプリを利用している。「その結果、訪問診療の時間を50%増加させるなどの効率化を実現している」(遠矢氏)
「iPhone/iPad」関連記事
さらに、医師や訪問看護師、ケアマネジャー、ホームヘルパーなど多職種の関係者が情報を共有するために、クラウド型地域連携システム「EIR」を開発し、医療と介護が連携したケアサービスの提供に役立てている。
遠矢氏は、在宅医療の課題の1つに「人材不足」を挙げている。一般の看護師140万人に対して訪問看護師が3万人であり、一般の診療所10万施設に対して在宅専門の診療所が1000施設と少なく、さらにその内、複数医師で対応しているのが200施設という現状があるからだ。その上で、在宅医療におけるICT活用は在宅診療の効率化や地域医療連携だけでないと説明。在宅医の開業や診療運営をサポートする「在宅医療業務支援(アウトソース)事業」、eラーニングやSNS、ビデオカンファレンスなどによる「在宅医療研修や介護指導」などにも応用できるとし、「在宅医療の分野こそもっとICT化を進めるべきだ」と語った。
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