自らが被災した医療従事者は、何よりも優先してその職務を全うするべきなのか? 阪神・淡路大震災において、被災地の病院で診療行為を行った医師の体験を紹介しよう。
2011年3月の東日本大震災の発生により、東北地方太平洋沖地域を中心に多くの医療機関が甚大な被害を受けた(関連記事:被災医療機関のリストにも活用できた「2次医療圏データベース」)。これをきっかけに、災害発生時の被災地における医療対応について、多くの課題が浮き彫りになっている。その中でも、特に難しい判断を迫られるのが「災害発生時に被災地の医療従事者はどう対応するべきか」という問題だ。
「被災地の医療従事者は、自らが被災者であることを認識した上で、現地で医療活動を行うべきか、家族や身の安全を優先するべきか、自分自身で判断することが大切だ。また、病院側も、災害発生時に医療従事者個人がどう行動するのかを事前に調査し、それを病院全体で理解する風土を作っておく必要がある」と指摘するのは、名古屋大学医学部附属病院 病院長補佐 メディカルITセンター長の吉田 茂氏だ。
吉田氏がこう考える背景には、自身が阪神・淡路大震災の被害に遭いながら、混乱する被災地の病院で医療に従事し、その現場でさまざまな問題に直面した実体験があるからだ。
阪神・淡路大震災が発生した当時、吉田氏は神戸市中央区のS病院で小児科医を務めていた。そして、1995年1月17日早朝、神戸市垂水区の自宅でその瞬間を迎えた。
「地震が起こったときの衝撃はすさまじかった。最初の印象は“ゴジラが来て、街を壊しているのでは”と思ったほど。幸い自宅の建物は一部損壊ですみ、家族も無事だったが、家の中はめちゃめちゃになっていた。何より困ったのが、外に出ようにもドアが開かなかったことだ」と、吉田氏は地震発生当時の様子を生々しく語る。
何とかドアをこじ開けて外に出た後、吉田氏は、近くに住む奥さんの両親の家まで車で移動し、無事を確認。そして、大阪に住む自身の両親も無事であることが電話で確認でき、少し落ち着いたところで「やはり病院に向かわなければいけない」という思いが強くなったという。
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