2011年3月に発生した東日本大震災では、多くの医療機関が被災した。政府や関係各所が情報収集に活用した被災医療機関のリストは、あるグループが無償で提供したものだった。
2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震の影響で、岩手県から福島県の沿岸部にかけて大津波が押し寄せ、各地に甚大な被害をもたらした。多くの医療機関が被災し、今なお診療を再開できていない施設も存在する。
震災後、政府や医師会が情報収集に追われる中、被災した医療機関の情報をいち早くリスト化し、関係各所にメールで配信したグループがいる。「2次医療機関データベース(DB)」を開発した、国際医療福祉大学大学院・医療経営管理分野 高橋 泰教授と医療関係データベースの構築・運営を行っているウェルネスを中心としたグループだ。
高橋氏らは2010年3月21日に発表された「消防庁災害対策本部第66報」において「壊滅」「被害甚大」に指定された地域の病院や診療所などの合計1399件の「被災医療機関名簿」を2次医療機関DBの情報を基に作成した。3月23日、このリストを厚生労働省や閣府、総務省、国土交通省などの政府機関、高橋氏の知人である代議士や医療関係団体、メディアなどにメールで一斉配信した。
著作権フリーで提供されたリストはその後、広く活用されることになる。例えば、四病院団体協議会(四病協)が被災地の全ての病院情報を集約した「被災病院地図情報」(日本病院会作成)に活用されたり、ある政府機関の担当者から「省内で利用させてもらっている」という感謝の意を表すメールが届いたという。
本稿では、4月に開催された国際医療福祉総合研究所 HCI21「病院再生研究会」セミナーにおける高橋氏の講演「災害時における情報管理について〜被災地域の医療名簿について〜」の内容を基に、2次医療圏DBの開発経緯から今回の震災における活用事例などを紹介する。
2次医療圏DBは、全国348の二次医療圏の病院名や人口、面積、医師数、DPC対象病院数などの統計情報を集約している。2011年1月からウェルネスのWebサイトで無償提供されており、「全国病院一覧」や「2次医療圏基礎データ」、地図表示機能ツール「巧見くん」やサマリー作成機能ツール「作万理くん」などの種類がある。Microsoft Excel形式でフィルタリングして参照したり、地図情報との連携表示も可能で、データを分析やシミュレーションに自由に活用できる点が特徴だ。既にダウンロード総数は1万件を超えている。
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