【連載コラム】医療ITの現場から
電子カルテ導入で変わる医療スタッフの採用基準
電子カルテの導入が進むにつれ、診療所におけるスタッフ採用にも変化が現れています。IT化が進む医療現場で求められる人材とは?
現在、電子カルテは診療所の運営に欠かせないものとなりつつあります。診療の質や診療スピード、そして診療報酬の請求など診療所経営全般において、「電子カルテを上手に活用すること」が重要な要素となっています。また、電子カルテの導入やIT化の進展に伴い、医療機関が求める医療スタッフの採用条件に変化が見られています。今回は、そうした動向について解説します。
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電子カルテの入力は医師がするもの?
「電子カルテの入力は医師がするもの」と長らく考えられてきたこともあり、診療所で電子カルテの導入を希望するのは、病院で電子カルテの経験がある医師か、PCが得意な(好きな)医師に限られてきました。
しかし、2008年度診療報酬制度で医療クラークの配置を評価する「医師事務作業補助体制加算」が新設されたころから、電子カルテ入力を取り巻く状況は変化してきました。医療クラークとは、医師が行う診断書作成などの事務作業を補助するスタッフを指します。病院では、医師が診療に専念するために「電子カルテ入力はクラークが行うもの」となってきています。実際にクラーク体制を取る病院では、医師はできるだけ電子カルテに触れずにクラークに任せるようにしているようです。
加算がないと、診療所ではクラークが活用できない?
医師事務作業補助体制加算は現在、特定機能病院を除く病院でのみ算定が可能です。そのため、点数が付かない診療所では関係ないと思われがちです。しかし、クラークの配置は十分に効果があると考える診療所もあり、徐々に導入が進みつつあります。
それでは、どんなケースで効果があるのか具体的に見ていくことにしましょう。
診療スピードを高めるため
患者数が多い診療所では、待ち時間が1時間以上発生することもあります。特に診療開始時や昼休み前、診療終了間際に患者が集中するため、待ち時間が多く発生します。患者数が多くなると当然、医師は診療スピードが要求され、電子カルテ入力が負担になってきます。ここで、医師が診療と診療の合間に電子カルテを入力する方法を採用しても、問題の解決にはつながりません。この運用では、診療以外の時間を割いているだけであり、診療そのもののスピードを上げることにはつながりません。つまり、患者を多く診ることは難しいままです。そこで、診療スピードを上げるためにクラークが活用されています。
「私は診察しながら入力できる」「スタッフよりも自分の方が入力は速い」という医師もいます。前者は「医師がPCばかり見ていて、患者を見てくれない」という患者の不満につながりますし、後者は「医師が私たちのことを信用してくれない」というスタッフの不満につながります。診療は医師しかできませんが、電子カルテは法的に代行入力が認められています。医師しかできない業務に専念することで、診療スピードが上がるということを考える必要があるのはないでしょうか。
返戻、査定、監査対策のためのカルテ内容の充実
糖尿病や高血圧症など慢性疾患の患者が多い診療所では、「特定疾患療養管理料」「生活習慣病管理料」の算定のため、カルテ内の「指導内容」の充実が特に求められます。例えば、個別指導や監査を受ける際、必ずカルテとレセプトを突き合せて不正な請求がないかどうか確認されます。この際、上記の管理料が指導内容に沿っているか確認され、指導の記載が漏れていれば、「カルテ記載に不備がある」と見なされます。場合によっては自主返還という事態にもつながります。医療クラークが適切な内容をカルテに記載することでそうした事態を防ぐことが可能です。また、医療クラークが診療報酬請求制度に精通していれば、そのロジックと照らし合わせながらカルテ記載を補足できるため、診療報酬の返戻や査定、監査の対策を取ることも可能です。
医師とスタッフの距離を縮めるために
診療所経営において最も頭を悩ませるのは、医師とスタッフの連携です。診療所では、院長は医師でありながら経営者でもあります。スタッフを一致団結させるという仕事は、診療所経営では肝といえるでしょう。医師を中心にスタッフが支える関係をいかに作るかが大切です。多くの医師にとって、勤務医時代にはほとんど経験したことのない悩みでしょう。
診療所に医療クラークを配置することで、医師とスタッフの連携がよくなるケースが多くあります。常に医師の傍らで看護師と医療クラークが業務をするため、医師の目が届く範囲にスタッフがいることになり、医師や看護師、医療スタッフの距離が縮まってコミュニケーションが活発化するのです。「医療クラーク運用にしたら、スタッフが仲良くなった」と話す医師もいます。診療所運営がしやすくなったと実感しているのです。
電子カルテ時代のスタッフの採用基準の変化
このように医療クラークに電子カルテを入力してもらうためには、診療所のスタッフの採用基準にも変化が必要です。これまでは「診療所の勤務経験」「診療報酬請求事務の資格」など、診療所の運営や診療報酬の知識が採用基準の上位に来ていました。しかし、現在のように電子カルテが一般的になるにつれて「PCが使える」という条件が上位に来るようになっています。
メディプラザでは医療事務専門学校の授業をサポートしておりますが、ここ5年間のカリキュラム編成を見ていると、PCや電子カルテに関する授業の時間が年々増えています。採用先である診療所や病院から求められる人材基準に変化が見られ、それに合せる必要が出てきています。現在は、「PCが使える」「電子カルテが操作できる」「診療報酬の知識がある」といった3つのスキルが求められる時代となっているのです。
著者紹介
大西大輔(おおにし だいすけ) メディキャスト株式会社 メディプラザ統括マネージャー
2001年一橋大学大学院MBAコース卒業後、同年日本経営入社。2002年に医療機関の“選ぶ”を支援する展示場「メディプラザ」の1号店を東京(神田)に立ち上げ、その後2003年にメディプラザ大阪、2005年にメディプラザ福岡を順次開設。2007年より東京・大阪・福岡の3拠点を統括する統括マネージャーに就任。専門の医療IT分野については、医師会、保険医協会などの公的団体を中心にセミナー講師を多数実施。
【関連サイト】
電子カルテ活用のためのショールーム「メディプラザ」
医師の右腕を育成する「電子カルテ+クラーク養成講座」
医院・クリニックのオフィシャルホームページ制作システム「Wevery!」
メディプラザ特設ブース「地域包括ケアで活用できるシステム」
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