ガートナーが7つの選定ポイントを伝授
失敗しない、スマートデバイス本格導入に耐える「MDM」の選び方
スマートデバイスの本格導入を検討する上で、適切なモバイルデバイス管理製品を選定するポイントとは何か。ガートナーが定義した選定ポイントを伝授する。
複数のスマートデバイスの一元管理を支援する「モバイルデバイス管理(MDM)製品」。スマートデバイスの試験導入から本格導入への移行に合わせて、MDM製品の見直しを検討するユーザー企業は少なくないと、MDMベンダー各社は声をそろえる。規模や用途の拡大に伴い、必要な機能は変化するからだ。
スマートデバイスの本格導入を検討するユーザー企業は、どういった視点でMDM製品を選定すべきなのだろうか。ヒントとなるのが、いち早くスマートデバイスの本格導入が進んだ欧米企業の声を基にした評価基準だ。ガートナー ジャパンでITインフラストラクチャ&セキュリティ分野のリサーチ ディレクターを務める池田武史氏の話を基に、その一端を解説する。
大規模/多用途のスマートデバイス活用に向くMDMの条件
「『MDM製品はリモートロック/リモートワイプさえできれば十分』だと考える国内企業は少なくない」。池田氏はこう指摘する。「メールやスケジュール管理が8割以上」であるなどスマートデバイスの用途がまだ限定的なのに加え、「各企業でスマートデバイスを利用する従業員は10%未満」など、いまだ試験導入段階の企業が多いことも、MDM製品に多くの機能を求めない背景にあるという。
試験導入であれば、簡易的なMDM機能でも十分である。ただし、スマートデバイスの本格導入に踏み切り、導入規模や用途を拡大させるのであれば、「端末に加え、データやアプリケーションの利用に関するポリシーを定義し、それを徹底するための仕組みが必要になる」。また導入規模が大きくなった場合、管理サーバが負荷増大に耐えるかどうかも重要だ。
ガートナーは、欧米企業などスマートデバイスの本格導入を進めるユーザー企業のニーズやユースケースを踏まえ、MDM製品を評価する際に注視すべき7つのポイントをまとめた。それぞれのポイントについて詳しく見ていこう。
ポイント1:ポリシー/コンプライアンス管理
ガートナーが「MDMのクリティカルケイパビリティ(必須能力)」だと指摘するのが、ポリシー/コンプライアンス管理に関する機能である。搭載するOSやアプリケーションの種類に応じてLANへ接続可能な端末を制限したり、Jailbreak/root化端末を検知するといった機能が該当する。こうした機能により、自社が規定したポリシーにスマートデバイスを確実に準拠させることができる。ガートナーは、ポリシー/コンプライアンス管理機能が最も優れているのは米MobileIronのMDM製品だと評価する。
ポイント2:セキュリティ
リモートロック/ワイプは、即座にデータ消去や操作ロックができる利点があるものの、端末の電源が切れてしまったり、管理サーバとエージェントとの通信が途切れてしまうと制御が難しくなる。そのため、リモートロック/ワイプだけでなく、端末のパスコードロックやVPNの設定、マルウェア対策機能といったセキュリティ機能をどれだけ持っているかもMDM製品の選定ポイントとなる。この分野では、米Citirix Systemsが買収した米ZenpriseのMDM製品にガートナーは高い評価を与える。
ポイント3:コンテナ化
「今後のMDM製品にとって重要な機能になる」と池田氏が指摘するのが、「セキュアコンテナ」をはじめとするコンテナ化機能である。
セキュアコンテナは、アプリケーションやデータを暗号化し、端末内の他のアプリケーション/データから隔離する機能である。業務アプリケーション/データのみをセキュアコンテナ内に格納することで私物環境から分離できるので、私物端末の業務利用(BYOD)のセキュリティ対策としても有効だ。ガートナーがこの分野のトッププレーヤーだと指摘するのは米Good Technologyである(参考:BYODに直面するIT部門、まずやるべきは「利用制限の撤廃」)。
ポイント4:アプリケーション管理
MDM製品の管理機能において重要性が高まっているのが、アプリケーション管理機能だ。従業員が適切なアプリケーションを確実に利用できるようにする。
企業内アプリケーションストアの構築やアプリケーションの配布、使用制限、パッチ適用などが、アプリケーション管理の主要な機能だ。アプリケーション管理機能は、「モバイルアプリケーション管理(MAM)製品」として単体の製品として提供するベンダーも存在する。
ポイント5:ファイル共有
ファイル共有も注目すべき機能の1つだとガートナーは指摘する。ファイル共有機能は、「Dropbox」をはじめとする個人向けファイル共有サービスの代替として機能する。ファイルの共有や同期、アクセス制御といった機能を持つ。
ファイルを手軽にやりとりできる個人向けファイル共有サービスは、セキュリティ面に不安があるものの、「従業員にとって明らかに便利」だ。個人向けファイル共有サービスと同様の仕組みをMDM製品で実現することで、安全性と利便性を両立させることができる。「モバイルコンテンツ管理(MCM)」としてファイル共有機能を単体製品として提供する動きもある。
ポイント6:スケーラビリティ
管理対象の端末が大規模でもパフォーマンスに影響を与えないためには、MDM製品のスケーラビリティにも注目すべきだ。MDM製品は、リモートロック/ワイプやポリシーの更新などでエージェントと管理サーバの通信が発生する。こうした通信は恒常的に発生するわけではないが、大量の端末に対して設定やアプリケーションを配布する際、管理サーバが負荷に耐えられずに停止する状況は避けたい。各ベンダーは、管理サーバの分散構成といったアーキテクチャの工夫により、スケーラビリティの向上を図っている。
ポイント7:サービス化への対応
管理負荷軽減の観点から、MDM機能をSoftware as a Service(SaaS)などのサービスとして利用できるかどうかも選定ポイントになる。オンプレミスのMDM製品を導入すると、カスタマイズの自由度は増すものの、管理負荷は高まる。特に、スマートデバイスの導入規模が増えれば増えるほど、サーバのサイジングなどの作業が必須となる。サービスとしてMDM機能が利用できれば、こうした作業を外部委託できる。
MDMのSaaS化については、「欧米ベンダーよりも国産ベンダーの方が進んでいる」という。国内では、通信キャリアを中心に市販MDM製品の機能をSaaSとして提供するケースが多いからだ。
以上、スマートデバイスの本格導入に耐えるMDM製品を選ぶ7つのポイントを紹介した。池田氏は、上記のポイントを参考にしつつ、目的に沿って適切なMDM製品を選定するのが重要だと指摘する。例えば、「クライアントPCとスマートデバイスを統合管理したいと考える企業にとっては、管理可能なプラットフォームの豊富さが重要になる」。
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