DaaSの光と影【前編】
クラウド型デスクトップ、DaaSのコストを安くする方法
初期投資やインフラ管理いらずでデスクトップ仮想化を実現できるDaaS。DaaSを利用する場合と社内でVDIを構築する場合では、どちらがコストを安くできるのか。
仮想デスクトップインフラ(VDI)を全て独力で構築するだけのIT専門知識を持ち合わせていない企業は、クラウドホスティングデスクトップのプロバイダーに面倒な作業を任せればよい。
仮想デスクトップがクラウドホスティングサービスとして提供される「DaaS(Desktops as a Service)」の最大のメリットは、デスクトップ管理にかかわるIT部門の負担が軽減されることにある。
「クラウドを利用すればVDI導入の初期投資が不要になるが、プロバイダーにDaaS利用料を支払う場合と、社内でデスクトップを維持管理する場合の長期的コストを比べれば、同じくらいだろう」と話すのは、国債管理会社の米National Asset Direct(NAD)でCTO(最高技術責任者)を務めるジョン・マドリッド氏だ。同社は、米プロバイダーのdinCloudが提供するクラウドホスティング型仮想デスクトップを利用している。
「最新かつ最高クラスのハードウェアとソフトウェアを、初期投資とインフラ管理なしで利用できるというメリットを考えれば、料金を払うだけの価値はある」と考えるIT部門もあるだろう。自動車のリースと購入の違いに例える人もいる。
「コスト判断の中には、新車に乗りたいのか、それとも交換部品の費用を払いながら、できるだけ長く車を使いたいのかという判断も含まれる」とマドリッド氏は話す。「当社の場合、VDIを社内に戻すには、ある程度の配備規模が必要だ。その条件が満たされたとしても、デスクトップ管理の業務を再び実施するのには抵抗がある」
DaaSのコスト
DaaSには幾つか選択肢が存在し、企業が必要とする仮想デスクトップの種類に応じて価格も大きく異なる。
ノンパーシステント(セッション維持機能を備えていない)方式のホスティング型仮想デスクトップであれば、1ユーザーに付き月額20ドル以下で利用できるが、本格的にカスタマイズが可能な仮想デスクトップの場合はずっと高額になる。米Citrix Systemsのデスクトップとアプリケーション部門の広報担当者、ケン・エストライヒ氏によると、Citrix系のサービスプロバイダーの中には汎用型デスクトップサービスを提供しているところもあるが、ほとんどのプロバイダーは、XenDesktopに個別業種向けアプリケーションや統合コミュニケーション、統合ストレージなどのサービスを組み合わせたパーシステント型仮想デスクトップを提供しており、価格は1シート(1接続クライアント)に付き200ドルを上回るという。
「われわれは汎用製品を提供するつもりはない」とエストライヒ氏は話す。「だが企業が最も安価なデスクトップを望むにせよ、高度なカスタマイズが可能なデスクトップを望むにせよ、デスクトップをアウトソーシングするメリットは大きい。独力で維持管理しようとすると、コストがはるかに高くなるからだ」
米Desktoneが提供している「Windows as a Service」などのDaaS製品は、1ユーザーに付き月額35~40ドルという価格だ。Desktoneによると、標準的な顧客の場合、物理インフラからDaaSに移行することによって、5年間で約20~30%の節約を実現しているという。
もう1つの選択肢が米tuCloudのサービスだ。同社のDaaSはノンパーシステンス型デスクトップモデルであり、業界最低価格で提供しているという。
tuCloudのユーザーである米Livermore National Labsでは、同時に立ち上がっているデスクトップ1台につき月額22ドルを支払っているが、各CCU(同時接続ユーザー)は3人の名前付きユーザーをサポートする。tuCloudのギーズ・ブールCEOによると、「同研究所で任意の時間に5000ユーザーをサポートするには、約3500個のデスクトップを動作させるだけでよい。その費用は月額7万7000ドル、1ユーザー当たりでは約15.4ドルだ」という。ブール氏は、デスクトップ配信プロフェッショナルのネットワークであるDesktop Superhero Allianceの創設者である。
「これはノンパーシステント型なので、CCUの契約数よりもはるかに多くの名前付きユーザーをサポートできる」とブール氏は話す。「各ユーザーに専用のデスクトップを割り当てたとしても、1000ユーザー程度であれば1ユーザーに付き月額22ドルで済む」
DaaSの利用形態がどうであれ、企業は自社が保有するMicrosoftライセンスをクラウドに持ち込む形になり、この費用を免れることはできない。
ブール氏によると、tuCloudの顧客は全てMicrosoftのソフトウェアアシュアランス(SA)を契約しており、DaaSの利用状況をMicrosoftに報告しているという。通常、DaaSの利用もSAに含まれる。
NADのマドリッド氏によると、dinCloudのように、Windowsライセンスに関連した面倒な処理を代行してくれるDaaSプロバイダーもあるという。「これもDaaSの魅力の1つだ」と同氏は話す。
一方、米調査会社Forrester Researchのアナリスト、デビッド・ジョンソン氏などの業界ウオッチャーは「Microsoftはいずれ、Windows Azure上で『Windows as a Service』を提供するだろう」と予測する。同社がクラウドに対応したWindowsライセンスをいまだに提供していないのも、それが理由だという。
後編「パフォーマンス? セキュリティ? 導入企業がDaaSのデメリットを語る」では、DaaSで設備維持コストとPCハードウェアコストを削減できる理由や、DaaSのデメリットを紹介する。
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