IBM、HPなどRISC陣営も対抗
“ウィンテル”はまだ終わらない――クラウド注力が追い風に
クライアントPCの出荷台数が減少する中、Intelが新たな居場所として注力している分野の1つがクラウド基盤だ。既存ベンダーを脅かし始めたとして市場での存在感を高めつつある。その理由とは?
IT担当者は、データセンターを刷新して高度なクラウドコンピューティング環境に対応させる際、ウィンテル(Wintel:Windows+Intel)サーバハードウェアをベースにしたスケールアウト戦略を採用することが多い。プロプライエタリなサーバのスケールアップを避けてのことだ。
これは米Hewlett Packard(HP)や米IBMのRISCベースシステムには逆風だ。そこで両社はサーバロードマップの再構築を進めている。
IT担当者がウィンテルを選ぶ主な理由は、初期コストと隠れたコストなどコスト面で有利だという判断と、新しいプラットフォームに移行することでデータセンターチームにとってなじみがないベンダーと付き合うリスクを回避するためだ。
UNIX市場を揺るがすXeonチップの存在
「プロプライエタリなシステムも調べたが、それらのハードウェアコストは、われわれの既存システムよりも大幅に高かった」と、連邦政府契約業者である米VSEの副社長兼CIO、デビッド・シバーズ氏は語る。同氏は新しいデータセンターを開設した際、従来と同様にウィンテルサーバを採用した。「他のサーバは、費用に見合わないように思われた」
プロプライエタリサーバと関連アプリケーションツールへの多額の投資が行われてきたデータセンターでも、一部の担当者は、Intelチップ搭載の低コストサーバにワークロードを移行する考えを示すようになっている。
「私はIBMやHPのサーバでLinuxを稼働させていた。これは全体的なコストの削減に一役買った。しかし、それらを非RISCプラットフォームと連携させるには、かなりのプログラミングを自前で行わなければならなかった。しばらくやってみたが、その作業には時間とお金をかけたくなかった」と、匿名希望のあるITシステム管理者は語る。
ウィンテルサーバへの移行やそれらの継続利用という判断を後押しする材料は他にもある。Intelチップ、特にXeonプロセッサの処理能力と速度の向上だ。これらの向上が功を奏し、ウィンテルサーバはプロプライエタリサーバに太刀打ちできるようになったと、米Technology Business Researchのシニアアナリスト、クリスチャン・ペリー氏は指摘する。
「UNIX市場を揺るがしている1つのゲームチェンジャーが、IntelのXeonチップだ。IntelのItaniumもそのワリを食ったが、今ではIBMが打撃を受けている」とペリー氏。「例えば、以前は特定のワークロード要件を満たすのにIBM POWERプロセッサ搭載サーバに頼っていたユーザーが、今はさまざまなx86サーバの選択肢を持っている」
POWERを搭載するIBM Power Systemsの売り上げが大幅に落ち込み、「IBMはぞっとしているに違いない」とペリー氏。だが同氏は、IBMが近い将来、この製品から撤退することはないと見ている。IBMがUNIXに代えてLinuxをPower SystemsのプライマリOSに据えたのは、賢明な措置だと同氏は考えている。この措置により、IBMは既存の顧客基盤を維持し、ウィンテルサーバに対するPower Systemsの競争力を高めることができるだろう、というのが同氏の予想だ。
データセンターにおけるウィンテルサーバの台頭を踏まえ、米Dellは2012年にClerity Solutionsを買収した。Clerity Solutionsは、レガシー製品やサービスを業界標準プラットフォームに移行する近代化やリホスティングを専門に手掛けていた。Dellの幹部は、現在のIntelベースサーバは、クラウドコンピューティング環境の非常に複雑なワークロードの処理に対応できるスケーラビリティを備えていると考えている。
「ユーザーがx86サーバにプラットフォームを変更する動きが着実に進んでいる。その背景には、x86プラットフォームが経済性に優れており、その最大性能が向上し続けていることがある。このプラットフォームはユーザーにとって有力な選択肢になっている」と、DellのPowerEdge製品管理担当エグゼクティブディレクター、ブライアン・ペイン氏は語る。データセンターでウィンテルサーバの人気が上昇していることは、プロプライエタリシステムの2013年の販売が減少している一因だ。IBMは、Power Systemsサーバの売り上げが2013年第2、第3四半期に、それぞれ前年同期比25%減、38%減に落ち込んだと報告している。
HPは2013年11月、自社のプロプライエタリなPA-RISCプロセッサと技術的に関連が深いIntel Itaniumプロセッサに見切りを着け、NonStopプラットフォーム(HPの最もミッションクリティカルなサーバ製品と目されている)の大部分をx86プラットフォームに移植することを明らかにした。
米Gartnerは2013年第2四半期のサーバ出荷台数に関するリポートで、世界サーバ市場が全体的に低調だったと述べ、x86サーバの出荷台数は前年同期比で4.5%増加したが、RISC/Itanium UNIXサーバの出荷台数は27.4%減少したと報告している。
IBMとHPが目指すRISCサーバの再発明
プロプライエタリサーバの販売が低迷しているのは、IBMやHPのような企業が手をこまねいていたからではない。両社はいずれも、それぞれのプラットフォームに莫大な研究開発費をつぎ込んできた。
IBMは2013年、POWER上でLinuxが動作するプラットフォームを推進する取り組みの一環として、最新サーバをリリースした。このサーバでは、IBMのスーパーコンピュータであるWatsonの技術が使われている。IBMは、この新システムは、膨大なビッグデータおよびアナリティクスワークロードに加え、オープンなクラウド環境向けに設計された次世代Javaアプリケーションを適切に実行できるだけのパワーを持っていると強調している。
IBMとHPの幹部はかねてより、両社のRISCサーバがそれぞれ提供するスケールアップアプローチは、新規および既存のデータセンターに技術上およびビジネス上の多大なメリットをもたらすと主張している。数十台のウィンテルサーバを1台のIBM POWERサーバに置き換えることで、企業はコンピューティングコストとエネルギーコストを大幅に節約でき、大規模データセンター全体にわたって、利用可能なリソースの多くを効果的に管理できるとされている。
カナダのGHY Internationalの情報技術担当副社長兼ソーシャルビジネス責任者、ナイジェル・フォートラーゲ氏もそう考えている1人だ。同氏は11年前にIntelベースプラットフォームからIBMのプロプライエタリサーバに乗り換え、そのまま使い続けている。IBMのサーバハードウェアとLinuxの組み合わせは、割り当てられた、ありとあらゆる新しいワークロードをこなし、同社の柔軟な事業展開を支えてきたという。
「われわれは2002年に一部のシステムをIBMシステムに移行し、それを機に、試しにLinuxも使い始めた」とフォートラーゲ氏。「だが、この2つの取り合わせはきちんと機能し、使いやすく、安上がりだった。そこでわれわれは、『本当に将来にわたってIntelプラットフォームでビジネスを回していきたいか』と考えた。答えは『ノー』だった」
一部のアナリストは、プロプライエタリベンダーが自社サーバの技術上およびコスト上の長期的なメリットについて展開している主張の妥当性を認めている。
「IBMのPower SystemsやHPのMoonshotのような高密度サーバでは、フォームファクタの小型化と性能の向上を両立させることが技術的に可能だ。そのおかげで、省スペース化によって既存データセンターを有効活用し、多大な費用が掛かる新規データセンターの建設を避けることができる」。米IDCのエンタープライズサーバグループのリサーチ担当副社長、ジーン・ボズマン氏はそう指摘する。
しかし、データセンターにおけるサーバハードウェアの競争が、ウィンテルシステムまたはRISCシステムの独り勝ちとなることはなさそうだ。ボズマン氏によると、業界は、幾つかの異なるアーキテクチャのサーバが併存し、それぞれ利益率の高いニッチ市場を獲得する時代に差し掛かろうとしているという。ARMプロセッサ搭載サーバもそうしたサーバの1つだ。
データセンターを担当する幹部は、自社が使用するコンピューティング機能を柔軟に拡充していかなければならない。このため、各種の機能に対応する専用のサーバが必要になると、ボズマン氏は語る。
「ユーザーは、データセンターを徐々に進化させていく。例えば、データウェアハウスやアナリティクスを利用する必要がある場合、そのワークロードに合わせてチューニングされたサーバを買い、そのサーバのタスクに合わせてチューニングされたストレージ、システム管理環境、ソフトウェアとパッケージングするだろう」(ボズマン氏)
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