ネットワークエンジニアの発想転換も重要
GoogleとFacebookで異なる「ベアメタルスイッチ」活用法
ネットワーク業界に大きな経済的な転換をもたらす可能性を秘めている「ベアメタルスイッチ」。その先行導入企業である米Googleと米Facebookは、ベアメタルスイッチをどう活用しているのだろうか。
サーバを皮切りに委託者のブランドで設計・製造する「ODM」製品が市場に登場し始めた。その波はネットワーク業界にも広がり、新しいタイプのスイッチが開発され注目を集めている。前編「FacebookとGoogleが導入して話題の『ベアメタルスイッチ』とは?」に続き、米Googleと米Facebookがどう活用しているかを具体的に見ていこう。
ベアメタルネットワークの運用に必要なものは
Googleは自社のデータセンターのネットワークでベアメタルスイッチを採用していることで知られている。ODMはGoogleの仕様に合わせてスイッチを製造し、Googleは同社のインフラのニーズに合わせて調整したカスタムソフトウェアをスイッチで実行している。一方、米Facebookは、同社が展開する「Open Compute Project」で、同じことを行おうとしている。このプロジェクトはベアメタルスイッチとソフトウェアのオープンな仕様を策定するための取り組みだ。Facebookは「Wedge」をテストしている。これはFacebook独自のTop of Rackスイッチのデザインで、近日Open Compute Projectに提出される予定だ。
FacebookとGoogleはベアメタルスイッチ導入の先駆者となることに成功している。その理由の1つは、これらの企業が社内にエンジニアを抱えていることにある。社内にエンジニアがいるため、ベアメタルネットワークを構築して運用することができるのだ。多くの企業で働くエンジニアは、ベアメタルスイッチを構成するスキルと人員がないと考えている。その結果、知っていることに固執する道を選んでいるのが実情だ。
「企業のネットワークエンジニアとWeb規模のインフラを構築するエンジニアの間には大きな溝がある。前者は、常に誰かを締め付けようとしている。一方、後者はオープンソースを好む傾向があり、自分たちで何とかするという姿勢が見られる」とCloudaptのドーソン氏は指摘する。
だが、ベアメタルスイッチの支持者によると、その溝は埋まりつつあるという。
Battery Venturesのベニク氏は次のように語る。「世間では誤った認識が浸透している。ベアメタルスイッチを使用するには、全て自分たちで何とかしなければならないと思われている。GoogleとFacebookが自分たちで多くのことを成し遂げているのは事実だ。だが、それは多くのことを成し遂げられるだけのリソースを保有しているからだ。だが、多くのサプライチェーンの問題に対処しているDellのようなOEMとの素晴らしい関係が構築できるようになった。そのため、今後1年の間にベアメタルスイッチの導入は増えるだろう。ネットワークのOpen Compute Projectという風潮が、ベアメタルスイッチの導入にプラスの影響を与えるのは間違いないだろう。また、従来のネットワークユーザーが求めているエンタープライズクラスのサポートと機能セットを備えたパッケージソリューションを開発する道を切り開くことになるだろう」
ベアメタルスイッチは新たな自動化の方法をもたらす。米Big Switch Networksと米Pica8は、各社のSDNコントローラーと連動するスイッチのソフトウェアライセンスを販売している。ベアメタルスイッチのネットワークOSは、Linuxベースのオープンプラットフォームである。つまり、データセンターのオペレーターは、Linuxの管理ツールやDevOpsツールを使用して、ネットワークを自動化できる。またサーバチームや仮想化チームと密接に連携した形でネットワークを運用することも可能になる。このようなツールには米Chefの「Chef」や米Puppet Labsの「Puppet」などがある。
「Pica8のスイッチのトラブルシューティングでは、ネットワークOSの下位レベルにあるLinuxに入り込むことが少なくない。Pica8のスイッチでは、そのような対応が可能だ。個人的には、CiscoのスイッチやファイアウォールのOSよりもLinuxの方が扱いやすい。また、使用できるツールの数も多い。CumulusまたはPica8のスイッチでは自分でソフトウェアをインストールして、自動化を行っている。CiscoのネットワークOSではどうやったら自動化できるのか検討も付かなかった」(ドーソン氏)
LinuxとDevOpsのツールに対応するベアメタルスイッチのオープンな性質により、ネットワークは自動化しやすくなっている。また、ベアメタルスイッチは、ネットワークエンジニアが縦割り構造のデータセンターの自動化に対応するのに悪戦苦闘しているタイミングでやってきた。
ジョージワシントン大学のガロ氏は次のように話す。「全てのプロセスでは、新しい仮想マシンを起動して、そのサポートに必要なあらゆるものを自動的に作成できる。だが、VLANのネットワークやファイアウォール規則の変更に遭遇すると、対応に何日も要する。これは簡単に壊れてしまう人為的なプロセスを採用しているからだ。データセンターのネットワークはDevOpsで運用する必要がある。少なくともDevOpsの形式を採用するべきだろう。また、昔ながらのネットワークエンジニアを雇用することがどんどん難しくなっている。そのため、ネットワークを自動化して特定のベンダーに依存しない形で管理する方法が必要不可欠だと考えている」
ベアメタルスイッチについて管理が難しいと感じたことはないとCloudaptのドーソン氏はいう。Ciscoなどの主要ベンダーが提供する従来のスイッチと比較した場合も、その感想は変わらない。データセンターのオペレーターがベアメタルスイッチに基づいてネットワークを適切に構築していれば、運用上の問題は発生しないはずだと同氏はいう。「実際にベアメタルネットワークをセットアップしてみたら何てことなかった。OpenStack NeutronとGRE(Generic Routing Encapsulation)プロトコルをベースにしたソフトウェアオーバレイネットワークのおかげだろう」
「ネットワークに付随する難題は全てサーバのソフトウェアで調整されている。例えば、顧客の分離や顧客の境界接続だ。ベアメタルスイッチには接触していない。ベアメタルスイッチは、トンネリングされたトラフィックを通過させているだけだ」(ドーソン氏)
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社キーエンス] なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは -
製品資料
[株式会社セールスフォース・ジャパン] 「CRMは設計と無関係」は本当か? PLMとの融合で実現する高速開発 -
事例
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] AIエージェントの時代にどう備える? 「新たな働き手」を支える3要素とは -
製品資料
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] “横並びの自動化”から脱却、AI活用で生産性と競争力を高める秘訣 -
製品資料
[サイボウズ株式会社] AIが「わざわざ使うツール」になっていない? 業務で自然に使う導線にする秘訣
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
なぜ「全社配布Copilot」は使われないのか? 失敗に学ぶAI定着
-
2
法務と開発者で「言葉が通じない」問題 トヨタやソニーが語るOSS管理の真実
-
3
ChatGPTは“検索しまくり”でGeminiは“淡泊”? データが明かすAIの裏側
-
4
なぜ「Gemini 4 Argon」は出遅れたのか? Googleが狙う“逆転のシナリオ”
-
5
「中堅・中小企業のネットワーク・セキュリティ運用実態」に関するアンケート
-
6
損保ジャパンはなぜ「COBOL」を捨てなかったのか? 脱メインフレームの真相
-
7
「Wi-Fi 7」経由でWindowsが乗っ取られる? 最高権限奪取の恐怖
-
8
情報漏えいはなぜ繰り返されるのか 今すぐ見直すべき「境界」
-
9
情シスの約8割が転職や退職を意識 調査で分かった“辞めたくなる最大の理由”
-
10
【漫画付き】ひとり情シス協会が明かす、RAG導入でしくじる企業「2つの共通点」
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
2
家庭用Wi-Fiルーターの業務利用は危険? 避けるべき理由と具体的な対策
-
3
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
-
4
財務部門がAIを最大限に活用する方法 無駄のない戦略的リーダーシップへの道
-
5
LLMが兵器化? 元FBI高官が鳴らす警鐘とセキュリティツール統合のポイント
-
6
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
7
なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは
-
8
生成AIを開発に導入しても効果が見えない? 実証実験で分かった成果と課題
-
9
経産省DX指針から読み解く、受発注業務デジタル化ロードマップ
-
10
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー