代替技術は生まれるか?
クラウド化で議論が進む「ファイルシステム限界論」
非構造化データの爆発的な増加やクラウドのような技術の普及を受け、従来のファイルシステムで対応できるのかという疑問が出ている。
基本から始めよう。ファイルシステムにはさまざまなものがある。一部のストレージメディアに特化したものもあれば、ネットワークに接続された特定のタイプのストレージデバイスへのアクセスを提供するものもある。前者の例として光ディスク用の「ISO 9660」ファイルシステムなどがあり、後者の例としてNFS(Network File System)、CIFS(Common Internet File System)、SMB(Server Message Block)などがある。また、1つのファイルデータおよびメタデータスキーマを全く異なるファイルおよびメタデータスキーマに変換、あるいはマッピングするファイルシステムもある。こうしたファイルシステムは、物理メディア上におけるファイル解析に関与している。
関連記事
ストレージのトレンドを知る
非構造化データについて
重複排除とは?
重複排除バックアップアプライアンスの記事
要するに、従来のファイルシステムは一筋縄ではいかないということだ。ユーザーファイルを指すことが多い“非構造化データ”の扱いに難があるといわれていることを考えればなおさらだ。実際、従来のファイルシステムは構造がさまざまで、非常に複雑だ。
最近のITの潮流を背景に、ストレージ管理者やデータセンターに関する意思決定者の一部からは、「現行のファイルシステムは本当に今でも、データ保存の最高のメカニズムなのか」という疑問の声が上がっている。実のところ、クラウドコンピューティングや仮想化、“ロングブロック”ファイル(動画、医療画像、ヒトゲノムデータなど)が広く利用されるようになってきたことを受け、既存ファイルシステムの近い将来における有効性が疑問視され始めている。
それはなぜか。第1に、クラウドコンピューティングでは、ディレクトリ構造をフラット化し、1つの名前空間に小さなファイルを大量に配置して、グラフィカルインタフェースなどのように高速にロードすることを目指す傾向があるからだ。場合によっては、1つのページに数百万のファイルコンポーネントが含まれることもあり、そうなれば、データをCPUやGPUに渡すファイルシステム操作を高速化する必要がある。
そしてもちろん、数百万や数十億のファイルをストレージ(今ではTバイトクラスやPバイトクラスが一般的)に展開する可能性がある場合、メディア上に配置され、ノードとiノード(inode)で場所が表される入れ子構造のディレクトリから1つのファイルを検索する速度は、非常に遅くなる恐れがある。
もう1つの大きな問題として、従来のファイルシステムの自己破壊的な特性が挙げられる。ほとんどのファイルシステムは、ユーザーがファイルの新しいバージョンを保存するたびに、その更新のジャーナル(記録)を作成するのではなく、その直前のバージョンを上書きする。これは設計上、慎重に選択された手法であり、ディスクのGバイト単価が法外に高かった30年近く前の時代を反映している。一部のファイルシステムはジャーナリングなど、さまざまなファイル保存オプションを提供しているが、広く使われていない。
例えば、ジャーナリングは、ストレージの無駄使いを防ぐのに役立つと考えられていた。しかし、実は逆効果をもたらしている。エンドユーザーが作成したファイルの内容やビジネスコンテキストを理解するのが難しいことから、ストレージメディア上の容量の浪費に拍車が掛かっている。筆者が会長を務めているデータ管理の専門家の育成機関、米Data Management Instituteの最近の調査によると、現在使われているHDD容量全体の最大70%は、「参照されたり、複製されたりすることがなく、オーファン(所有者がシステムから登録解除されたファイル)でも、アクセス禁止の対象でもない休眠ファイル」を含んでいる。
重複排除のような技術が、ストレージの使用効率の向上に役立つことが明らかになっている。こうした技術は特に、意図していないファイル重複や“ホワイトスペース”(空き領域)による無駄を排除する上で効果的だ。今では多くのファイルシステムが、ファイルシステムレベルでのストレージプロセスの一環として、重複排除を行うように改良されつつある。ただし、当初の取り組みでは、その引き換えにファイルシステムのパフォーマンスが犠牲になっている。
以上のように、現行のファイルシステムを見直す理由はたくさんある。別のデータ保存フレームワークを使うことも選択肢だ。現在、一定の支持を集めている1つのアプローチとして、米Tintriのような企業が開拓しているものがある。これはハイパーバイザーベースコンピューティングの普及に対応し、ディレクトリ、サブディレクトリ、ボリューム、LUN(Logical Unit Number)といった要素を持つ従来のファイルシステムフレームワークを仮想マシンで代替するものだ。
米Caringoなど多くのオブジェクトストレージベンダーが推進しているもう1つのアプローチは、従来のファイルシステムの代わりにオブジェクト指向ストレージフレームワークを使用するもの。このアプローチはクラウドコンピューティングに特に適している。膨大なファイルオブジェクトを含むフラットディレクトリシステムの速度、フィード、容量使用率を改善するからだ。また、このアプローチは、動画や医療画像といったロングブロックファイルにも適している。ロングブロックファイルはあまり頻繁に変更されないが、オブジェクトとその内容の検索に役立つ記述を含むメタデータが付加される可能性がある。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
「Excel至上主義」の終わらせ方 丸2日の手作業地獄から情シスと現場を救うには
-
2
急増する「AIはこう言ってる」マン 判断を狂わせる「AI忖度」を防ぐには?
-
3
取手市がVDIと決別した理由 更改費用「4倍超」を約1.7倍に圧縮
-
4
221人調査で分かった「情シス最大のストレス」は?
-
5
「データストレージの活用方法」に関するアンケート
-
6
「AI時代の統合基盤・エンタープライズAI管理」に関するアンケート
-
7
自宅のWi-Fiが「遅い」「途切れる」本当の原因は? Dellが推奨する鉄則
-
8
100億円の「Linux更新」を回避 みずほ銀行が選んだ“おきて破り”のRHEL延命策
-
9
本当に安いPCで十分か? “すぐ重くなる”を防ぐノートPC選びの絶対条件
-
10
Claudeの不可視透かしに批判殺到 著作権消失や誤判定に潜む企業リスク
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
年収2000万「クラウドセキュリティのプロ」になれる資格とは
-
2
セキュリティソフトをすり抜ける標的型攻撃メール、不審メールの見破り方とは?
-
3
Windows Updateの通信集中で回線が逼迫、ネットワーク刷新事例に学ぶ解決策
-
4
財務を戦略的組織へ進化させるAI活用術、4つの主要な障壁と解消方法
-
5
「NAS」「SAN」「DAS」は何が違う? いまさら聞けないストレージの基礎
-
6
“あのファイル転送”で暗躍するノーウェアランサム
-
7
標的型攻撃メールを見破るには? サンプル文面を例に傾向を解説
-
8
商用利用の安全性を確保し大量のコンテンツを高速で生成する、AI活用の秘訣
-
9
マンガで解説、1日で生成AI環境を構築できるワークショップの中身とは?
-
10
Dark AIが台頭する時代の新発想、「より高度なAIで対抗する」具体的方法とは?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー