手に持ったのは銃ではなくコンピュータ
サイバー攻撃者はどのようにもうけているのか? 驚異の手口を分析する(2/2 ページ)
拡大するサイバースパイの脅威
「SECRETS:Managing Information Assets in the Age of Cyberespionage」(サイバースパイの時代に情報資産を管理する秘訣)の著者で情報セキュリティコンサルタントのジェームズ・プーリー氏は、これらの金銭目的のサイバー犯罪によって、情報セキュリティの重要性が実証されると話す。「これが警鐘であることは間違いない。氷山の一角にすぎず、情報が売買される方法の一例でしかない」(プーリー氏)
サイバー攻撃は、企業と国家のセキュリティに深刻な脅威を及ぼす。英PricewaterhouseCoopers(PwC)のリポート「US cybersecurity:Progress stalled, Key findings from the 2015 US State of Cybercrime Survey」(米国のサイバーセキュリティ:進展は見られず、2015年の米国におけるサイバー犯罪調査の重要な結果)によると、調査対象の76%が、2015年は例年以上にサイバー脅威を懸念していると回答した。
サイバー犯罪は「テロリズム」「スパイ行為」「大量破壊兵器」を抑え、国家に対する最大のセキュリティ脅威として位置付けられている。また、サイバー犯罪は不安を生み出すだけでなく、金銭的ダメージも与える。米連邦捜査局(FBI)と米インターネット犯罪苦情センターの報告によると、有線通信不正行為によって、世界中の企業が14カ月間で2億1500万ドルもの損失を被った。驚くべきことに、その金銭的被害を受けた企業の84%が米国企業だという。
さらにPwCのリポートでは、米国企業や法執行局、政府機関などの幹部500人のうち79%もの人が過去12カ月になんらかのセキュリティインシデントを発見したと報告している。注目すべきは、サイバー犯罪のほとんどが気付かれていないということだ。2013年、FBIは、小規模な銀行から防衛システム開発企業や主要小売企業に至る3000社を超える企業に、彼らが知らず知らずのうちにセキュリティ侵害を受けていたことを通告している。
ここ数年でサイバー攻撃が劇的に増加している理由について尋ねられたプーリー氏は、「多くの企業に共通している問題は、情報セキュリティをITだけの問題として扱っていることだ。境界のみを防御して、与えられた予算でできる限りの努力をする対応は時代遅れだ。このような企業では、セキュリティの脅威が実在する全体的な問題として認識されていない」と語っている。
国境を越えたサイバー攻撃と特に米国を標的とした攻撃も、ここ数年で劇的に増加している。米国は、中国政府が仕掛けた膨大な数のサイバースパイ攻撃によって、多数の経済分野で被害を受けている。米国のテレビネットワークNBCが入手した、米国家安全保障局(NSA)のマップ「U.S. Victims of Chinese Cyber Espionage over the past five years」(過去5年で中国のサイバースパイの被害を受けた米国地域)では、中国政府による企業秘密や軍事機密、軍事データなどの盗難に遭った地域が赤点で示されている。東海岸は、ワシントンDCとボストンの間に赤点が集中している他、シリコンバレーやシカゴ、シアトル、ロサンゼルス、デトロイトにも多く見られる。
米国土安全保障省長官のジェイ・ジョンソン氏は、ハッカー集団についてのプレスリリースで次のように述べている。「サイバー犯罪者は、金銭を盗むために銃ではなくコンピュータを使用し、私たちのサイバーネットワークの安全とセキュリティを脅かしている。このような大きな危険にさらされているため、今後はサイバー機能を強化することが重要だ」(ジョンソン氏)
米国が最適なサイバー犯罪対策を見つけ出す日が来るとプーリー氏は信じている。「この問題は、徐々に鎮火されるだろう。1920年代から1930年代にかけては、銀行強盗が多発していた。だが、現在、私たちは現金を保護する方法を知っている。私はサイバーセキュリティも同じ道をたどることを期待している。『現代の貨幣』であるデータを保護できる状態には至っていないが、いつかはそこに到達できると信じている」(プーリー氏)
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