手に持ったのは銃ではなくコンピュータ
サイバー攻撃者はどのようにもうけているのか? 驚異の手口を分析する(1/2 ページ)
増える金銭を目的としたサイバー攻撃。その手口とは一体どのようなものなのだろうか。実際に発生した事件をみつつ、その手口を紹介する。
金銭を目的としたハッカー集団は、企業の情報を狙った攻撃(サイバースパイ)に目を向けている。具体的には、企業のセキュリティを侵害して企業秘密を取得し、第三者に売ったりインサイダー取引に使用したりするという手口だ。
最近発生したサイバースパイ事件を1つ紹介しよう。米国とウクライナで男性9人が、金銭目的でニューヨーク証券取引所とNASDAQに高度なサイバー攻撃を仕掛けて機密情報を盗難したことに対して連邦犯罪で起訴されたという事件だ。彼らは大手ニュースリリース配信企業3社を攻撃し、企業の未発表のプレスリリースを、5年間で総計15万個も入手した。その被害に遭ったのは下記の企業などだ。
- 米Align Technology
- 米Caterpillar
- 米Hewlett Packard(HP)
- 米Home Depot
- 米Panera Bread
- 米VeriSign
ハッカー集団は、公式発表の前に取引を行うために、プレスリリースから得た当期純利益、売上総利益、収益などのインサイダー情報を戦略的に使用し、業績の良しあしに応じて株を売買した。
例えば、2013年10月には「純収益が20.5%上昇し、1株当たりの利益が0.42ドル増加した」というAlign Technologyの公式発表に先駆けて、複数の取引と株式購入している。そして、彼らはその日に総計145万ドルもの違法利益を得ている。同様に2013年4月、米Edwards Lifesciencesが翌四半期の利益予想を下方修正すると知ったハッカー集団は、その情報を利用して84万4000ドルもの利益を得た。ニュージャージー地区のプレスリリースによると、彼らは5年間で約3000万ドルの違法利益を取引から得たという。
だが、これだけではない。ハッカー集団は、有益な情報を盗むために悪質な株式トレーダーとも手を組んだ。株式トレーダーは、事前に知りたい企業のプレスリリースをリストアップしてウクライナのハッカーに送った。それに対して、ハッカー集団は非公式の情報にアクセスする方法を電子メールで送信する。ハッカー集団は最終利益から一定の割合の分け前を得ている。トレーダーとハッカーは合計で1000万ドル以上の利益を得たという。米Bloomberg Businessによると、金融業界とサイバー犯罪の連携には元ヘッジファンドマネジャーのビタリー・コルチェフスキー氏が一役買い、同氏はその過程で1750万ドルを稼いだという。
ただし、ハッカー集団と悪質なトレーダーが株式市場で取引していたため、米証券取引委員会(SEC)が追跡できる痕跡を残すことになった。そのため、容疑のパターンが特定されるのは避けられなかった。SECは、取引を行っている人物をその痕跡から追跡し、パターンを分析した結果、容疑者の逮捕に漕ぎつけた。
企業スパイを働くサイバー犯罪は、インサイダー取引集団にとどまらないのが実情だ。露Kaspersky Labと米Symantecは、企業を標的にしたAPT(Advanced Persistent Threat)集団についてのリポートを2015年に発表している。Symantecが「Butterfly」、Kasperskyが「Wild Neutron」と名付けたこのAPT集団は数年前から活動しており、有益なインサイダー情報を得るために著名な企業のセキュリティを侵害している。米Appleや米Microsoft、米Facebookなどの名だたる企業が、この集団による被害に遭っている。
Symantecのリポートでは次のように報告されている。「当社の分析によると、Butterflyの攻撃者は小規模なチームで、インサイダー取引を通じて利益を得るためにデータを盗んでいる。あらゆる企業は、Butterflyのような企業スパイ集団が及ぼす脅威について認識しなくてはならない」
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