「E-JAWSカンファレンス」リポート
AWSが丸紅グループにもたらしたものは「足かせのない自由なIT投資」(2/2 ページ)
クラウド移行するならどうしても実現したかった運用の自動化
高久 隆氏
AWSへの移行を決めた丸紅だが、企業システムの移行には戦略が必要となる。丸紅では「物理環境(Physical)→仮想環境(Virtual)→クラウド(Cloud)」という3段階のフローを採用。丸紅ITソリューションズ ITアドバイザリ室長 高久 隆氏はこれを「P2V2C戦略」と紹介している。オンプレミスからクラウドに一足飛びで移行するのではなく、いったん物理サーバを仮想化し(丸紅ではVMwareを採用)、その後、AWSが提供する「VM Import」を利用して仮想マシンイメージをAWSクラウド(Amazon EC2インスタンス)にインポートしていく。こうすることで、インポート直後にこれまでと同じサーバ環境をクラウド上で起動することが可能になる。高久氏によれば現在、この方法でAWSに移行したサーバは150台ほどになるという。
クラウド移行の戦略が確定後、実際の移行プロジェクトが開始したのは2013年秋のことだ。移行作業を担当するベンダーを選定する際、丸紅が重視していたポイントは「可能な限り運用を自動化したい」という要求のクリアだった。定常的なボリュームのバックアップ作業や土日深夜に使わないサーバのON/OFFといった運用の自動化を進めていけば、本社だけでなくIT要員を配置できないグループ企業にとっても大幅な負荷の軽減につながる。
ここで丸紅が高く評価したのがサーバーワークスのAWS運用自動化ツール「Cloud Automator」だった。サーバのON/OFFといった作業の自動化だけでなく、今回の移行プロジェクトの重要な目的であるDRにおいてもCloud Automatorが有効であったからである。「東京リージョンで障害が起こった際、簡単な操作でシンガポールリージョンにリストア可能であること、災害時はオペレーターなどを確保できない可能性が高いためDRのフローが自動化されていること、DRの実現ではこの2つが極めて重要だった。Cloud Automatorなら、こうしたフローが実現されることが確認できた」と高久氏。結果、丸紅は日立製作所とサーバーワークスの共同提案を受諾し、移行プロジェクトを開始している。
なお、企業システムのクラウド導入で必ず課題として上がるセキュリティについてだが、丸紅の場合、移行を決定する前に社外のコンサルティング企業にアセスメントを依頼し、クラウド利用の妥当性チェックやリスク分析などを行い、「自社運用と比較してもAWSを利用することに問題はない」との結論を得ている。これも当時はクリアできたのがAWSだけだった。
クラウドの“勝ち組”の技術を使うメリット
AWSの導入効果を、加藤氏は「足かせのない自由なIT投資が可能になった」と表現している。具体的には、
- リソースの柔軟な調達……欲しいときに追加でき、いらなくなったらやめられる
- 要員の最適配置……リプレース要件に充てていた人材やサーバ調達、運用に関わる要員を減らし、他の業務に転換
- AWSの投資結果の享受……クラウドの“勝ち組”であるAWSのR&Dの成果や世界中のユーザー企業によるフィードバックの反映を、機能追加、改善、コストダウンという形で受け取れる
といったポイントを挙げている。特に最後のポイントはAWSならではのメリットといえるのではないだろうか。例えばセキュリティに関しても、いちユーザー企業が単独でセキュリティを担保するのはほとんど不可能だが、AWSであれば、クラウドセキュリティに多大な投資をしてきた同社の成果をそのままユーザー企業として利用できる。“勝ち組”の技術を使うことが、結果的にはセキュリティを担保する方法に近づけるというのもうなずける。
今後、丸紅グループではオンプレミスでしか動かないものを除き、「基本的にはクラウドに移す」(加藤氏)方針だという。また、Amazon EC2のようなIaaS(Infrastructure as a Service)だけではなく、PaaS(Platform as a Service)やSaaS(Software as a Service)の利用も進めていくことも検討しているそうだ。「AWSの最大の魅力はIT部門がグレードアップできること。これまでのような運用部門ではなく、IT部門の機能を戦略や企画といった分野へシフトしていきたい」と加藤氏は結んでいる。クラウドによってIT部門の“足かせ”がなくなったとき、企業はどう変わっていくことができるのか、その真価が試されるのはこれからになる。
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