Windows更新の新方針がもたらすセキュリティ問題【前編】
Windows 10の“勝手”更新プログラム適用で戸惑う人が続出?
Windows 10で更新プログラム適用を必須化するというMicrosoftの新しいアプローチは、企業に新たなセキュリティ問題を投げ掛ける。そもそも何が問題なのか。
Microsoftは最新OS「Windows 10」で、長年続けてきた更新プログラムの配布方法を変える。ほとんどのユーザーの環境では、Windows 10に更新プログラムが自動的にダウンロードされてインストールされるようになる。一方で企業は、検証が済むまでWindows 10の更新プログラム導入をどう遅らせるかが大きな課題となる。
不具合や脆弱(ぜいじゃく)性があるソフトウェアに対する更新プログラムは、システムのセキュリティを保つ上で欠かせない。ただし、企業はアップグレードのプロセスをコントロールする必要がある。Windows 10の更新プログラムは、重大なシステムの脆弱性を取り除いてくれるものの、同時にレガシーアプリケーションを使用不能にしてしまう可能性がある。中には、新たな脆弱性をもたらす更新プログラムがあるかもしれない。
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Windows 10更新プロセスの謎
使用許諾契約書の謎
Windows 10のソフトウェアライセンス条項、すなわち使用許諾契約書(EULA)の中にある、更新プログラムに関する条項を確認してみよう。
更新プログラム。本ソフトウェアでは、システムおよびアプリケーションの更新プログラムが定期的に確認され、自動的にダウンロードおよびインストールされます。お客様は、マイクロソフトまたは正規の提供元からのみ更新プログラムを取得できます。マイクロソフトは、当該更新プログラムをお客様に提供するために、お客様のシステムを更新する必要がある場合があります。お客様は、本ライセンス条項に同意することにより、追加通知なくこのような種類の自動更新プログラムを受け取ることに同意するものとします(出典:Windows 10日本語版の「マイクロソフトソフトウェアライセンス条項 WINDOWSオペレーティングシステム」2015年7月最終更新版)
この新しい更新ポリシーの中で、2つの条文が目を引く。まず、「お客様は、マイクロソフトまたは正規の提供元からのみ更新プログラムを取得できます」とはどういう意味か。例えば、製品更新サービス「Microsoft Update」で更新プログラムや新しいアプリが自動的にインストールされるのを阻止するユーティリティー(将来的に多数登場するかもしれない)をダウンロードすると、契約違反になるのだろうか。
第2に、もしWindows 10の更新プログラムに不具合があって、顧客のクライアントPCが一定期間ダウンしたり、顧客の重要なアプリケーションに障害を引き起こしたりした場合はどうなるのか。EULAは、「いかなる損害」についてもMicrosoftへの法的請求はできないと規定する。とはいえ企業は、Windowsの更新プログラムを原因とする損害が発生した場合の責任の扱いを考慮しなければならない。
Windows 10の更新プログラムのセキュリティ問題
Microsoftは、Windows 10で新しい更新プログラム配信手順を採用するのと同時に、配信する更新プログラムについての詳細を顧客に全面的に開示することをやめると通告した。結果として顧客には、更新プログラム適用時に起こった問題がセキュリティ問題なのか、更新プログラムの不具合なのかの区別ができなくなる可能性がある。
例えば、ブルースクリーン(致命的エラーの発生)や再起動が繰り返されるといった問題は、マルウェア攻撃によるものなのか、それともWindows 10の公式更新プログラムによるものなのか。実際に、開発中機能がいち早く利用できるWindows 10の「Insider Preview」版では、公式更新プログラムが原因でこうした問題が発生した。
「Microsoft Word」の標準テンプレートであり、多くの組織でマクロやデフォルトの設定といった設定値を保存している「Normal.dotx」が消去されたのは、ウイルスが原因なのか、それともMicrosoftの更新プログラムの不具合によるものなのか。Windows 10で発生したアプリケーションの使用やインストール時の問題は、ハッカーの仕業なのか、はたまた更新プログラムの仕業なのか。
一部の企業では、クライアントPCが接続されている特別な装置やソフトウェアについて、メーカーや米国食品医薬品局(FDA)などの規制当局が承認する機能が提供されていることを証明しなければならない。従って、Windowsのあらゆる要素についての管理を必要とする。例えばDLL(ダイナミックリンクライブラリ)の更新のような無害な変更でさえも、コストのかさむ証明書の更新を要する可能性がある。
Windows 10をいち早く導入した多数のユーザーの経験から判断すると、起動が繰り返される問題やブルースクリーンの問題は、Windows 10の更新プログラムが全て無害とはいえないと考えられる。更新プログラムに不具合があれば、多くの従業員が何時間も待たされたり、他のアプリケーションのアップグレードやコード変更を強いられたりすることもある。ただし、こうしたリスクについては、脆弱性があるかもしれないソフトウェアに更新プログラムを当てないまま使うリスクとの間で、てんびんにかけなければならない。
後編では、Windows 10の更新プログラムの適用プロセスが、今までから具体的にどのように変わったのかを整理した上で、企業が取り得るOS更新の戦略を示す。
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