iPhoneにバックドアは作らない
Apple ティム・クックCEOが裁判所の命令を拒否してまで守りたかったもの(2/2 ページ)
クック氏の反対意見に対する支持と危険な先例
Squareでモバイル・セキュリティ・リードを務めるディノ・ダイ・ゾビ氏は「FBI対Appleのケースで最も興味深い質問は、これがわれわれが作りたい(国際的な)先例であるかどうかだ」とツイッターで表明した。彼を含めた多くの人がクック氏の反対意見を支持することを表明している。
クック氏は、これを先例として定めるべきではないこと、また政府の要求から予想される結果は恐ろしいものだということに同意している。
「iPhoneを容易にロック解除することができる場合、政府は『All Writs Act』(全令状法)を使用することで、ロック解除が誰のデバイスへも及び、データの習得が可能になる」と、クック氏は述べる。「政府は、このプライバシーの侵害を拡張し、ユーザーに知られることなくユーザーのメッセージを妨害し、健康の記録や財政データへアクセスし、位置を追跡し、iPhoneのマイクやカメラにさえアクセスする監視ソフトウェアを、Appleに構築するよう求めることもあり得る」
今回、問題のデバイスはチップにデータを格納する「Secure Enclave」がないiPhone 5Cであるため、iPhoneのバックドアから損害が発生する可能性は最小限に抑えられるかもしれない。Secure Enclaveはこれより新しいiPhoneの一部となっている仕組みである。この特殊な事例において、バージニア州ダレスを本拠地とするCigitalでシニアプリンシパルコンサルタントを務めるアミト・セシ氏はこのように述べている。
「今後のAppleデバイスでは、修正されたバージョンのiOSをインストールすることに効果はないだろう。総当り攻撃からの保護機能は、Secure Enclave自体に実装されているためだ」セシ氏は続ける。「iOSデバイスが盗まれても、攻撃者はデバイスのOSを修正してユーザーのPINコードやパスワードを総当り攻撃することはできないため、これは問題ない」
しかし、この裁定の最も危険な側面は、これが先例とされることだ、とセシ氏は述べる。「合衆国政府は、この保護を取り除き、全てのユーザーのデバイスをより危険な状態にするバックドアを全てのAppleデバイスに構築するよう同社に要求するだろうか。総当り攻撃ができない複雑なパスワードに遭遇したとき、PINコードやパスワードの長さを制限するようAppleに要求するのだろうか。デバイスのデータを解読後、他のパスワードを使用して保存したデータを暗号化するメッセージ用アプリケーションを発見した場合、同様にバックドアを構築するようにそのアプリケーションの作成者に要求するのだろうか、セシ氏は問う。「もしそうであるなら、これらの制限とバックドアは、全てのユーザーのデータをかなりセキュアではない状態にするだろう」
またGoogleのCEOであるサンダー・ピチャイ氏はクック氏のメッセージを支持する見解を表明し、このような裁定が表すことになるかもしれない危険な先例を何度も繰り返した。
「企業にハッキングを可能にさせることは、ユーザーのプライバシーを危険にさらすことだ」とピチャイ氏はツイッターで投稿した。「法執行機関と情報機関が犯罪とテロリズムから国民を保護するという重大な課題に直面していることわれわれは知っている。われわれはユーザーの情報を安全に保つため、セキュリティ保護された製品を構築し、正当な法秩序に基づいてデータへのアクセスを法執行機関に与える。しかしそれは、顧客のデバイスとデータへのハッキングを可能にするよう企業に要求することとは全く異なる。FBIとAppleの件は厄介な先例となる可能性がある。この重要な問題について、思慮深くオープンな議論が行われることを期待する」(ピチャイ氏)
事件の最新状況(2月23日8時時点)
Appleは、データを確認する4つの方法をFBIに提案したとされているが、試したところいずれも失敗したとされている。その1つの方法に、自動バックアップデータの修復という方法があった模様だが、バックアップ時に必要となる、ファルク容疑者のiPhoneの「Apple ID」パスワードが事件後、州職員によって変更されていた。そのため、バックアップが取れなくなったという。また、ファルク容疑者のiPhoneは、意図的であるか不明だが、2カ月間バックアップが取られていなかった。
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