リセラーのクラウドビジネス収益化を支援
DaaS、Office365、Dropboxで商機をつかむ、ソフトバンクC&Sのクラウドビジネス戦略(2/2 ページ)
ビジネスプラットフォームの提供でリセラーのクラウドビジネスを後押し
では、こうした製品/サービスをリセラーに卸すに当たり、同社はどのような価値を提供できるのだろうか。溝口氏は、「クラウドサービスはリセラーにとっても魅力的な商品になりつつある。だからこそ、これからのディストリビューターには、従来とは異なる存在価値が求められている」と述べる。
「これまでは、ベンダーから仕入れた製品在庫を保管しておく倉庫と流通経路が、ディストリビューターの強みであり、価値だった。しかしSaaSはモノではないので、倉庫は必要ない。その代わりに当社が提供するのが、リセラーのSaaSビジネスを支援するためのプラットフォームだ」
これまでのITビジネスでは、ハードウェアやソフトウェアライセンスの一括販売が主流だった。当然、リセラーのビジネスモデルもそれを前提として構築されていた。しかしクラウドサービスでは、ユーザー企業が利用した分だけ料金を支払うサブスクリプション方式が主流だ。これに対応するためのビジネスモデルの転換は、多くのリセラーにとってかなり高いハードルだといえる。
そこでソフトバンク コマース&サービスは、リセラーがより少ない負担でクラウドビジネスに乗り出し、確実に収益を上げられるよう、リセラーとベンダーをつなぐビジネスプラットフォーム「Cloudix」を提供している。Cloudixはサブスクリプション方式の製品ビジネスを可視化、自動化するための専用Webサイトだ。従来のソフトウェア販売のような一度の取引で完結するビジネスについては「IT-EXchange」というプラットフォームがあり、Webサイトから製品検索や在庫確認、見積から発注、納期確認といったことができる。
「リセラーがそれぞれ自前でこうしたプラットフォームを構築していては、なかなか採算がとれない。Cloudixを利用していただくことで、低リスクかつ迅速にクラウドサービスのビジネスを開始していただくことができると考えている」(溝口氏)
さらに同社が扱う通信サービスも組み合わせて提供することで、リセラーがユーザー企業に提供するクラウドサービスの価値を高め、セキュリティを担保することができる。同社には、通信サービス関連の専任営業スタッフが約200人所属している。ハードウェア、ソフトウェア、クラウドサービス、さらにネットワークと通信といった、全ての層を網羅したサービスを提供できる体制を整えているという。
もう1つ、ディストリビューターとしての同社の大きな特徴が、先進技術をいち早く取り入れている点だ。クラウドの他にも、ソフトバンクのロボット「Pepper」をはじめとするロボティクスやAI(人工知能)、IoT(Internet of Things)といった先進技術に積極的に取り組んでいる。「なるべく早く、具体的な製品やサービスをリセラーに提供できるようにしたい」と溝口氏は語る。
しかし一方で、そうした新たな技術の普及を阻む障壁がIT業界に存在することも事実だと同氏は指摘する。「SaaSやDaaSの便利さやメリットは誰もが理解しているが、一方で従来のハードウェアやソフトウェアの“箱売りビジネス”を圧迫する可能性があることも事実だ。実際のところ、ビジネスモデルをクラウドのサブスクリプション方式主体に大転換したベンダーの多くは、一時的に売り上げを落としている。しかしこれは一時の『生みの苦しみ』であって、中長期的にはむしろクラウド市場で先行利益をつかめるチャンスだ。ベンダーやリセラーも、経営の思い切った決断の下に、こうした新たな世界にいち早く踏み出すべきではないだろうか」。同社はさまざまなベンダーとリセラーのビジネスパートナーとして、新しい技術やサービスが生み出す価値の提案と普及に挑戦していく。
主力製品市場とパートナー企業数のさらなる拡大に挑む
同社が注力している取り組みについて、溝口氏はDaaSの他に、Microsoftの「Cloud Solution Provider」(CSP)と、クラウドストレージ「Dropbox Business」を挙げる。
CSPとは、「Office 365」をはじめとしたMicrosoftのクラウドサービスの新たな販売プログラムだ。同社は現在、これまでMicrosoft製品を扱ってきたリセラーに対して、このプログラムを通じてクラウドビジネスへ乗り出すためのさまざまな支援を提供しているという。「今日のOffice 365の勢いを見る限り、これまで『Microsoft Office』のパッケージビジネスで収益を上げてきたリセラーは、CSPを通じてOffice365を販売する他社に、早々にユーザー企業を奪われてしまう恐れがあると予想している。これまでのライセンスビジネスでは、基本的にどこから買っても価格や料金は同じだったが、これからは柔軟な課金モデルを打ち出すCSPがこれに取って代わるのではないだろうか」(溝口氏)
「Dropbox Business」も、同社が注力しているサービスの1つである。個人向けオンラインストレージとして、今やメジャーサービスとなった「Dropbox」。これにアカウント管理機能やセキュリティ機能といった企業用の機能を加え、有償化したのがDropbox Businessだ。
Dropbox Businessは、ユーザー企業が採用するケースに加えて、ハードウェアメーカーやソフトウェアベンダー、クラウドサービス事業者などが自社製品/サービスの付加価値を高めるためのバンドル(付帯)サービスとして採用するケースも多いのだという。
「いわば『データのハブ』としてさまざまな製品の付帯サービスとしてDropbox Businessが採用されるケースが増えてきている。例えば、NAS(ネットワーク接続型ストレージ)製品のデータバックアップ先として、あるいはクラウドサービスからデータを取り出したり移行したりする際のデータの保管場所として、という形だ。こうしてリセラーは、ユーザー企業に提供する商品の価値を高められるし、もちろんエンドユーザーの利便性も向上する。このように、Dropbox Businessを介したユニークなビジネスモデルが成長しつつある」(溝口氏)
DaaS、Office 365、そしてDropbox Business。焦点を当てた商品を主力に据え、ニーズを掘り起こしてさらなる市場拡大に取り組みつつ「新たなリセラーとの販路も開拓していきたい」と溝口氏は抱負を述べる。
「これまで当社はシステムインテグレーター(SIer)に強いといわれてきたが、現在のIT業界では新興企業により新たなビジネスが次々と立ち上がっている。そうした新しい市場に強いパートナーとのビジネスも拡大していきたいと考えている。今後はさらに販売パートナーの数を増やして、これまでリーチできていなかった中堅・中小企業向け市場でも存在感を増していきたい」(溝口氏)
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