業務課題から考えるデスクトップ仮想化 徹底解説【第1回】
物理PCと何が違うの? デスクトップ仮想化、基本の「き」
デスクトップ仮想化(VDI)が注目される背景や、どのようなメリットが期待できるのか、導入に向けての課題を解説する。
「デスクトップ仮想化」(VDI:Virtual Desktop Infrastructure)とは、クライアントPCのデスクトップ環境を、仮想化技術を使いサーバで集約して利用する仕組みである。よく比較されるリモートデスクトップ(サーバ共有型デスクトップ)は、サーバOSをマルチユーザーで利用する仕組みだが、デスクトップ仮想化はユーザーがクライアントOSを占有して利用する点が大きな違いだ(配信方式の違いについては次回で詳しく紹介する)。
本稿では、デスクトップ仮想化が注目されている背景、そして現在、物理PCを利用しているユーザー企業が、デスクトップ仮想化の導入によってどのような課題を解決できるのかを見ていこう。
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デスクトップ仮想化が注目されている理由
これまでデスクトップ仮想化の導入は、比較的大規模な企業を中心に行われてきた。だが近年、ネットワークインフラの整備が進んだことや、サーバ、ストレージ機器のコストが下がったことによって、中小規模のユーザーにも導入が進んでいる。
また、仮想化されたアプリケーションをリモートで利用するリモートデスクトップ(サーバ共有型アプリケーション)方式だけでは、複雑化するユーザーニーズへの対応が難しくなってきていることも理由として挙げられる。デスクトップ仮想化は、動画再生やWeb会議システム、CADなどのグラフィックス処理といった、リソース要求の高いアプリケーションにも対応できる点が注目されている。
デスクトップ仮想化で解決できること
一般的に、デスクトップ仮想化には次のようなメリットが期待できる。
- セキュリティ対策
- TCO削減
- 事業継続性の確保
- ワークスタイル変革
1.セキュリティ対策
悪意のあるユーザーからの情報漏えいを防ぐためには、データを外に持ち出せない仕組みを考える必要がある。この情報漏えいのリスクを回避するためのセキュリティ対策として、デスクトップ仮想化は有用だ。
多くの企業は、ラップトップPCを外出先に持ち出す場合やUSBメモリなどの外部媒体を使用したりする場合に、HDD暗号化などのセキュリティ対策を採用している。暗号化されたUSBデバイスやラップトップPCであっても、暗号鍵が同一デバイス内に保管されている場合もあるため複合化のリスクが伴う。また、暗号化してあったとしてもデータがデバイス内に存在していることに変わりはなく、デバイス紛失時には情報漏えい事故として扱われることになる。
この課題を解決するために、情報資産を社外に持ち出すことなく、物理PCと遜色ない環境を実現する手段としてデスクトップ仮想化が用いられる。
デスクトップ仮想化を利用することで、ラップトップPCへユーザーデータをダウンロードすることなく外出先で企業内の情報を閲覧することができる。また、USBメモリなどの外部媒体へユーザーデータの書き込みを禁止することが可能となる。
一度情報漏えい事件が起こりメディアで報道されれば、企業イメージや信用を取り戻すために莫大な費用と時間を要する。外出先でのセキュリティ事故を防ぐためだけでなく、社内利用のデスクトップの場合であっても、悪意のあるユーザーから情報資産を守るために、自由にデータを持ち出せない環境構築が重要となる。
デスクトップ仮想化でクライアントごとに分散されていたアプリケーションやデータを一元管理することによって、情報資産への監視が容易になる。また、セキュリティパッチやウイルス対策ソフトのパターンファイルの更新が計画的にできることで、セキュリティリスクを軽減することができる。
2.TCO削減
デスクトップ仮想化は、クライアント環境のTCO削減にも有効だ。例えば、物理PCの入れ替えでは、既存で利用しているアプリケーションの移行に多くの時間とコストがかかる。デスクトップ仮想化であれば、新しいデスクトップ環境で既存アプリケーションの検証・移行も効率的だ。また、物理PCのライフサイクルとは別に、同一の仮想デスクトップ環境を長期間利用することもできる。
また、手元にない物理PCを管理する際も、管理の手間を削減できる。例えば、PCが故障した場合、物理PCであればユーザー先まで出向いて故障したPCを復旧させなければならないが、デスクトップ仮想化の場合は新しいPCへの復旧・切り替え作業がリモートで行える。ユーザーとしても、業務復帰までの時間を早めることができるため、仕事の効率化にもつながる。
3.事業継続性の確保
今企業には、地震や火災などの災害やパンデミックの際にも事業を継続するための危機管理能力が問われている。情報システムへの依存が拡大している中で、ITにおける事業継続計画(BCP)の重要性はますます認識されている。
デスクトップ仮想化は、ユーザーが仕事をする場所を問わないため、自宅やオフィス以外の場所でも同じデスクトップ環境で仕事ができる。事業継続性を確保する危機回避対策として、デスクトップ仮想化は多くの企業で導入されている。
4.ワークスタイルの変革
場所を問わずオフィスと同じデスクトップ環境を用意できるデスクトップ仮想化によって、育児期間中の在宅勤務など、ライフスタイルに合わせた勤務環境改善が期待できる。
また、スマートフォンやタブレットを利用する企業が急激に増えていることから、デスクトップ仮想化をスマートフォンやタブレットで利用したいというニーズも増えている。そのため、各デスクトップ仮想化ベンダーはモビリティ機能の強化を進めている。なお、スマートフォンやタブレットを管理するMDM(モバイル端末管理)製品も同時に活用することで、デスクトップ仮想化のメリットをさらに高められる。
導入に向けての課題
以上で述べたように、物理PCでは解決できなかった情報漏えい課題やTCO削減、事業継続性の確保、ワークスタイル変革といった課題を解決する手段として、デスクトップ仮想化は有効なソリューションである。
一方、デスクトップ仮想化の課題としては、物理PC導入に比べ初期導入費用が大きいこと、ネットワークの利用を前提としているため、オフラインでの利用が難しい点に課題がある。また、複雑化しているデスクトップ仮想化の構築に当たってはシステムエンジニアが不足していることも課題の1つとして挙げられる。
次回は、デスクトップ仮想化の配信方式の違いについて解説する。
保川幸弘(やすかわ ゆきひろ)
アセンテック株式会社 システムエンジニアリング第二部 プリセールスG
プリセールスエンジニアとしてデスクトップ仮想化ソリューションの普及啓蒙活動、デスクトップとオフィス環境の変革に全力を注いでいる。
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業務課題から考えるデスクトップ仮想化 徹底解説
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