使い勝手に大きな課題
スマートフォンでデスクトップ仮想化を使うべきでない、これだけの理由
PC向けのアプリケーションを動かすためにスマートフォンやタブレットでデスクトップ仮想化を試す企業が増えている。だが使い勝手は良くない。企業はモバイル向けデスクトップ仮想化をどう考えるべきか。
デスクトップ仮想化ソフトウェアは、中央で集中管理されるWindowsデスクトップをさまざまな端末に配信する。だが、スマートフォンやタブレットの小さい画面上では、役に立つより、厄介な存在になりかねない。
業務デスクトップを世界のどこからでも実行できるというのは、多くのユーザーにとって魅力的だ。実際、デスクトップ仮想化ソフトウェアは長らく、企業ユーザーがビジネスアプリケーションやデータにアクセスするためのツールとして好んで使われてきた。もはや、オフィスだけが仕事場ではない。ホームオフィス、ホテル、コーヒーショップなど、インターネットに接続する環境さえあれば、ほとんどの場所で仕事ができるようになっている。
そして、今ではそこに米Appleの「iPad」やAndroidタブレットなどのモバイル端末も出入りしている。となれば、企業がデスクトップ仮想化ソフトウェアを使って、より小型でモバイル性に優れた端末に業務デスクトップを配信しようとするのは、必然的な流れだろう(参考記事:スマートフォン/タブレットの普及がデスクトップ仮想化導入を後押しする?)。
モバイルデスクトップ仮想化の問題点
だが、そこには問題がある。デスクトップ仮想化の世界はほぼ100%、x86ベースのWindowsアプリケーションに焦点を合わせており、ユーザーインタフェースにはキーボードとマウスが必要だ。だが、モバイル端末の大部分はARMプロセッサでiOSやAndroidを実行し、タッチ操作中心のインタフェースだけを備える。通常、WindowsノートPCやUltrabookの画面サイズは13インチからだが、その大半はさらに大きなディスプレーにドッキングして利用できる。
一方、タブレットの画面サイズは7~10インチだ。そのため、Windowsデスクトップやアプリケーションをモバイル端末で実行すると、画面に表示されていない部分を見るためにパンしたり(対象から離れずに画面を左右に動かしてみる)、ダイアログボックスやラジオボタンにアクセスするためにピンチズームしたり(人差指と親指などの指2本で画面を拡大したり縮小する)といった操作を頻繁に強いられ、使い勝手は良くない。
Windowsデスクトップアプリケーションは本来、モバイル端末で動作するようには最適化されていない。だが、この分野には期待できる動きもある。米Citrix Systemsがリリースした「XenApp Mobility Pack」は、仮想化されたWindowsデスクトップをタッチスクリーンで操作しやすくするための製品で、タッチ操作主体のインタフェース向けにマウスジェスチャを簡略化したり、デスクトップアイコンのサイズを大きくしたり、昔ながらのWindowsスタートメニューをより操作しやすいものにしたりできる。VMwareも「Project AppShift」と呼ばれる取り組みを発表し、同様のユーザーインタフェース仮想化技術を提供する計画を明らかにしている(参考記事:モバイル仮想化の導入を見送るべき理由)。
ただし、こうした技術は、実際に従来のデスクトップアプリケーションをモバイル端末で利用する際の、本来の使い勝手とは異なる使用感を本当に解消できるわけではない。Microsoftの新OS「Windows 8」と「Windows RT」「Surface」タブレットには、従来版の「Microsoft Office」が搭載される。そして、iOS版とAndroid版のOfficeがリリースされれば、そのときには、モバイル端末でデスクトップ仮想化を使う必要性は低減されるはずだ。
もう1つ、見落とされがちなのは、携帯電話網とWi-Fiが浸透している今の世の中でさえ、ユーザーは常時接続を確立できるとは限らないという問題だ。オフラインのタブレットとスマートフォンにおけるデスクトップ仮想化の利用は、今のところ夢物語である。オフライン対応のデスクトップ仮想化ソフトウェアという選択肢もあるにはあるが、それは従来型のPCやMac向けのソリューションだ。
デスクトップ仮想化ソフトウェアの代替選択肢
従来のアプリケーションがもっとモバイルフレンドリーになるまでは、企業は端末固有のネイティブアプリケーションを検討すべきだ。そうしたアプリケーションであれば、オフライン利用にも役立ち、タッチ主体のユーザーインタフェース向けの設計になっている。IT部門はこうしたアプリケーションを細かく管理することはできないかもしれないが、「MokaFive for iOS」や「WatchDox」などの製品は社内データへのセキュアなアクセスを提供してくれる。
もっとも、他に選択肢がないのならば、タブレットやスマートフォンでデスクトップ仮想化ソフトウェアを使うのも悪い考えではない。「利用できる端末はタブレットだけだが、社内システムにアクセスする必要がある」というときには、仮想デスクトップを使えると重宝する。ただし、キーボードとマウスを備えたノートPCと同じというわけにはいかない。そこは思い違いをしないことだ。
新しいモバイルハードウェアには、企業ユーザーの働き方を変える可能性がある。デスクトップ仮想化を無理やり、モバイルの世界に当てはめようとするのは避けるべきだ。
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