グラフィックデザインや2D/3D CADなどのエンジニアリングワークステーションを活用する建設業界でも、仮想デスクトップが使われ始めている。本稿では、日立建設設計の「VMware View」導入事例を紹介する。
日立グループの日立建設設計は、ビルからプラントまで大型建築物の企画・設計監理を国内外で手掛ける。約280人いる社員の3分の2が一級建築士という専門家集団だ。そのため、クライアント環境が普通の企業とは違う。
建設業界では設計業務にエンジニアリングワークステーション(EWS)を用いることが多い。環境解析、構造解析などの数値計算、グラフィックデザイン、2D/3D CADなどの処理には高いマシン性能が必要だからだ。最近はPCベースのEWSが一般的になってきたとはいえ、汎用PCに比べれば割高である。日立建設設計では2010年ごろ、「今後もEWSを使い続けるかどうか」が議論になっていた。
ユーザーである構造設計部設計 主任の青木隆広氏は「設計士も常に解析ソフトやCADを動かしているわけではなく、メールやオフィスを使っている時間もある。設計士全員にEWSを配布するのではなく、リソースをうまく共有できないかと考えた」と語った。一方、ITを担当するビジネスサポート本部 技師の平田洋一氏は、「セキュリティを確保しながら付加価値の高いITサービスをユーザーに提供したかった」と振り返る。双方の思いを突き詰めた結果、EWSを仮想デスクトップに置き換えることになったのだ。
日立建設設計は当時からシステムをデータセンターに集約。一部のクライアントソフトはサーバ上で集中実行し、サーバ仮想化も手掛けていた。仮想デスクトップを導入する“下地”はあった。ただ、「EWSを仮想化する」という考えは先駆的だったといえよう。
仮想デスクトップ製品としては「VMware View」(以下、View)を採用した。その理由を平田氏はこう説明した。「当社のIT担当はわずか3人、運用はできる限りシンプルにしたかった。既にサーバ仮想化でVMware vSphere(以下、vSphere)を使っており、Viewなら慣れ親しんだvSphere上で運用できる。それと以前から注目していたPCoIP(PC over IP)にViewが対応したのが大きかった」
2009年末リリースのView 4.0から採用されたPCoIPは、PCのディスプレー(DVI)出力を圧縮・IP化して伝送する画面転送プロトコルである。最大2560×1600ドットの高解像度(3D映像の場合は1920×1200ドット)、最大4台(同時2台)のマルチディスプレー構成をサポートしているのが特徴だ。そもそもEWSの遠隔利用向けに開発されたものだから、設計業務で必要なスペックを備える。
日立建設設計は、仮想デスクトップ(View)が本当に設計業務に使えるか、スモールスタートで慎重に見極めていった。2010年末に検証環境を構築し、ホストや仮想マシンの仕様を固める。2011年に入ると少数のユーザーに向けて本番環境をオープン。「経営層も含めてユーザーの評価が高かった」(平田氏)ことから2012年、View 5.0によって本格的な仮想デスクトップ基盤を構築し、約150人の設計士全員にサービスを提供し始めた。
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