AdobeがAI検索最適化ツールを発表 Web検索やSEOは本当に不要になるのか?SEOの先「AISO」にAdobeが挑む

Adobeが、AI検索エンジンにおける企業のWebサイトやコンテンツの評価向上を支援するサービスを発表した。“SEOの進化版”とも言えるAI検索の最適化「AISO」が普及すれば、SEOや従来型のWeb検索は廃れてしまうのか。

2025年07月26日 06時00分 公開
[Don FluckingerTechTarget]

 企業のコンテンツマーケティング(情報発信を通じて見込み客との信頼関係を築き、購買活動を促す手法)やEコマース(電子商取引)の担当者は、自社コンテンツのSEO(検索エンジン最適化)で手いっぱいの状態だ。それに加えて、近年のAI(人工知能)技術の発展で状況が変化している。OpenAIの「ChatGPT」や Googleの「Gemini」といった検索が可能なAIエージェント、Perplexity AIが提供するAI搭載型の検索ツール「Perplexity」向けにもコンテンツを最適化する必要に迫られているのだ。この取り組みは「AI Search Optimization」(以下、AISO)と呼ばれており、検索エンジン最適化(SEO)に続く新たな分野だ。2025年6月、Adobeは企業のAISOを支援する新サービス「Adobe LLM Optimizer」を発表した。どのようなサービスなのか。

AISOでマーケターの役割はどう変わるのか

 「マーケターは、ようやくAISOの基礎を理解し始めた段階だ」。調査会社GartnerのVPアナリスト、エリック・シュミット氏はAISOについてこう説明する。

 シュミット氏によると、Adobe LLM Optimizerや競合サービスは、コンテンツの最適化作業を自動化し、人間は情報の最終確認や承認をするだけになる。

 本記事が公開された2025年6月時点では、AISOは手作業が中心だ。AI検索エンジンを使って、自社のコンテンツやWebサイトが検索結果にどう表示されるかを確認する。その結果を基に調整、改善を進め、翌週に再度確認するという流れだ。

 シュミット氏は、「Adobe LLM Optimizerだけではなく、現時点で利用可能なAISOサービスは、革新的な技術を搭載していない」と言う。

 「そもそも、生成AIツールにおいてアルゴリズムがどのように動作しているのか、私たちは十分理解し切れていない」とシュミット氏は述べる。

 Adobeによれば、Adobe LLM OptimizerはAI技術を使った情報のパターン認識技術を活用し、さまざまなAI検索エンジンに合わせてコンテンツをカスタマイズできる。

 「集客の経路や媒体が変化し続ける中で、いかにして自社の存在意義を保ち、消費者と接点を持ち、注目を集め、影響力を発揮するか――。これは世の中の最高マーケティング責任者(CMO)が答えを探している最重要課題の一つであり、これを実践できればビジネスを動かすことができる」。Adobeの戦略およびプロダクトマーケティング担当ディレクターのハレシュ・クマール氏はこう語る。

 シュミット氏とクマール氏は、AISOを成功させるための鍵は「自社の顧客がインターネット内のどこにいるのかを把握することだ」と指摘する。

 例えばGeminiは、他のAI検索エンジンよりも動画共有サイト「YouTube」のコンテンツを参照しやすい傾向がある。これは、GoogleがYouTubeを所有しているためだ。顧客分析をする中で、自社の顧客が情報収集のためにYouTubeを視聴していることが分かれば、Gemini向けのコンテンツ最適化は有力な選択肢となる。

AISOの基本構造は?

 SEOもAISOも、コンテンツとWebサイトの両方で細かな調整を進める必要がある。構造化データの作成やリンク切れの修正など、SEOで一般的に実施する取り組みの多くはAISOにも効果的だ。外部のWebサイトから自社のWebサイトに遷移する「バックリンク」も、コンテンツの信頼性を高める要素として、SEOとAISOの双方で重要だ。

 しかし、メタデータやFAQ(よくある質問)ドキュメントの取り扱い方は、SEOとAISOで異なる。LLMは、ある情報同士の関連性を判断する場面において、これらの情報をより重視する傾向がある。掲示板型ソーシャルニュースサイト「Reddit」やMicrosoft傘下のGitHub社が展開するリポジトリサービス「GitHub」、オンライン百科事典「Wikipedia」、ソーシャルメディアでの権威ある言及は、AISOにおいては有効な評価要因となる。

 自社のコンテンツのAISOを進める場合、AI検索エンジンに消費者が投げ掛ける可能性がある「問い」に最適化する必要がある。その結果、企業のブランドがLLMから信頼できる情報源として認識される場合がある。

 AISOが進めば、従来型のWeb検索やSEOは用済みになるわけではない。シュミット氏とクマール氏は、現在主流である検索結果ページ(SERP)を前提とした検索と、AI検索エンジンを使った検索は、今後数年間は併存するとみている。SEOとAISOの両方が、Webトラフィックの重要な原動力であり続けるとも両氏は述べている。

 日々マーケターと会話を交わすシュミット氏や、同氏のチームは、Webサイトへのトラフィックは減少傾向にある一方で、AI検索エンジンからのトラフィックは増加していると認識しているという。こうした変化の度合いは、企業の業種によって異なると同氏は分析する。消費財メーカーや小売業にとっては変化はそれほど大きくはないが、金融サービスや保険、自動車、旅行業界では確実に変化が起きているといった具合だ。現に消費者が、これまでは旅行代理店の窓口で相談していたような「東南アジア旅行の旅程を作ってほしい」といった依頼を、AIアシスタントにするようになったという変化が見られると同氏は説明する。

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