JAWS DAYS 2016レポート
アンデルセン、ヤマハ発動機――地方企業はAWSをどのように使って生き残る?(2/2 ページ)
2018年までにクラウド移行でITコストの大幅削減を目指すヤマハ発動機
堀尾氏に続いて、ヤマハ発動機 プロセス・IT部の原子 拓氏が登壇した。北は北海道から南は沖縄にまで事業所を広げるヤマハ発動機だが、社員の多くは本社のある静岡県磐田市に集中している。「磐田市が地方での活用という事例に適しているかどうかは分からないが」と前置きしつつ、原子氏は同社におけるクラウド化への道のりについて紹介した。
ヤマハ発動機では2013年10月にNTTコミュニケーションズをパートナーとしたクラウド移行によって、ITコストの大幅削減を実現するプレスリリースを発表している。今はこの計画を着々と進めているところだという。
クラウド移行はコスト削減だけが目的ではなく、災害時の事業継続を見据えた決断でもあった。「ヤマハ発動機はもともと、災害対策(DR)や事業継続計画(BCP)に強い関心を抱いていました。いつか来るといわれている東海地震、20キロ程度のところで稼働する原子力発電所などのリスクに備えるためです」
2009年に初めてIaaS(Infrastructure as a Service)「Amazon EC2」の仮想サーバ(インスタンス)である「m1.small」を使い、関連会社のWebサイトを移行した。このプロジェクトでWebサーバとして十分使えること、さらに短納期で安価にWebサイトを構築、運用できる実感を得た。その後は同「m1.medium」やクラウドストレージ「Amazon S3」で基幹サイトを構築。これがAWS本格採用の第一歩であり、あらためて十分なスペックを持つことを確認したという。
2013年以降はAWSをベースにして、関連各社のWebサイトを順次移行していった。ヤマハ発動機の商品は200を超える国と地域で販売されており、140の地域別Webサイトを持っている。それぞれのWebサイトで求められるスペックも違うが、クラウドならその差異を吸収して一元管理が可能になる。B2C(コンシューマー向けビジネス)系サーバインフラや各種サービスにもAWSを採用し、クラウドWAF(Webアプリケーションファイアウォール)を導入することで情報漏えいにも備える。
ヤマハ発動機がサーバ系に続いてクラウド化したのはデスクトップだった。同社は情報漏えい対策の観点から、「Windows XP」全盛時代に既にシンクライアントに取り組んでおり、VMwareやCitrix SystemsなどのVDI(デスクトップ仮想化インフラ)システムを使ってきた。当時は磐田市に自社データセンターを持ち、そこで運営していた。
VDIシステムをAWSへ移行するきっかけになったのは、Microsoftのオンライングループウェア「Office 365」の採用だった。当時利用していたCitrixのシステムではOffice 365の動作が保証されていなかったため、AWSのDaaS(Desktop as a Service)環境である「Amazon WorkSpaces」を使って仮想デスクトップ環境を再構築した。
「DaaSの使い勝手はよく、開発環境などはすぐにクラウドに移行しました。デスクトップを仮想化することで情報漏えいやデータ消失のリスクを低減できますし、標準化により統制強化やコンプライアンス強化も可能になります」と原子氏はDaaSのメリットを語る。今はコールセンターのクラウド化を進めているところだという。
残るはレガシーな基幹システムだが、これはクラウド移行による遅延時間増大が課題となり、スムーズに進んではいない。こうしたネットワーク遅延時間は、「地方ならではの課題」と原子氏は言う。DaaSを活用することで解決できる可能性に期待しつつ、今はまだ技術的な解決策を模索している段階だ。
「こうした技術的な課題解決に欠かせないのが、コミュニティーの力」と原子氏は言う。JAWS-UGはもちろん、そのための有力な機会だ。「静岡県にはJAWS-UG静岡、JAWS-UG浜松が既にありますが、ご存じの通り東西に長い県で磐田市から気楽に参加できる距離ではありません。そこでJAWS-UG磐田を新たに立ち上げました」
県内のJAWS-UGとも連携しつつ、最新技術や新しい導入事例について勉強を重ねながら、そこで得た知見を社内にフィードバックしていく。2018年完全クラウド化に向けたヤマハ発動機の歩みは終盤に差し掛かっている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
「Excel至上主義」の終わらせ方 丸2日の手作業地獄から情シスと現場を救うには
-
2
急増する「AIはこう言ってる」マン 判断を狂わせる「AI忖度」を防ぐには?
-
3
取手市がVDIと決別した理由 更改費用「4倍超」を約1.7倍に圧縮
-
4
221人調査で分かった「情シス最大のストレス」は?
-
5
「データストレージの活用方法」に関するアンケート
-
6
「AI時代の統合基盤・エンタープライズAI管理」に関するアンケート
-
7
自宅のWi-Fiが「遅い」「途切れる」本当の原因は? Dellが推奨する鉄則
-
8
100億円の「Linux更新」を回避 みずほ銀行が選んだ“おきて破り”のRHEL延命策
-
9
本当に安いPCで十分か? “すぐ重くなる”を防ぐノートPC選びの絶対条件
-
10
Claudeの不可視透かしに批判殺到 著作権消失や誤判定に潜む企業リスク
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
年収2000万「クラウドセキュリティのプロ」になれる資格とは
-
2
セキュリティソフトをすり抜ける標的型攻撃メール、不審メールの見破り方とは?
-
3
Windows Updateの通信集中で回線が逼迫、ネットワーク刷新事例に学ぶ解決策
-
4
財務を戦略的組織へ進化させるAI活用術、4つの主要な障壁と解消方法
-
5
「NAS」「SAN」「DAS」は何が違う? いまさら聞けないストレージの基礎
-
6
“あのファイル転送”で暗躍するノーウェアランサム
-
7
標的型攻撃メールを見破るには? サンプル文面を例に傾向を解説
-
8
商用利用の安全性を確保し大量のコンテンツを高速で生成する、AI活用の秘訣
-
9
マンガで解説、1日で生成AI環境を構築できるワークショップの中身とは?
-
10
Dark AIが台頭する時代の新発想、「より高度なAIで対抗する」具体的方法とは?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー