学校が知るべき「家庭内IT」の今【後編】
「生徒の私物タブレット利用」は“1人1台”実現の救世主となるか?(2/2 ページ)
BYODの上手な導入でデバイスの普及促進を狙う
学習者全員が教育機関でITを十分に活用するためには、BYOD(Bring Your Own Device:私物デバイスの活用)の採用以外に現実的な方法はない。
財源の問題もあり、デバイスのコスト負担を国や自治体、教育機関、保護者の間でどう配分するかは引き続き課題だ。ただし少なくとも教育機関側の管理コストは、BYODやそれに近い方式を導入することによって大幅に低下する。これは教育現場の負担を今以上に増加させないことにもつながる。デバイス普及のためにはBYODしかないと考えられる。
BYOD採用に必要な準備
教育機関がBYODを受け入れる決断をするには、それなりの準備が必要になる(図2)。まず必要になるのがネットワーク認証だ。LANにアクセスさせてはいけない不正なデバイスを排除するための仕組みである。これがないと、校外の人が自由にLANにアクセスして、LAN内部の情報を簡単に入手できる“だだ漏れ”の状況に陥ってしまう。
デバイス側にも、本来接続するべきではない無線LANのアクセスポイント(以下、AP)に接続することを防ぐ仕組みが必要だ。そのようなAPは一般的に“野良AP”などと呼ばれ、デバイスが不正なアプリケーション(マルウェア)に感染してしまうことがある。マルウェアに感染したデバイスが正規のLANに接続すると、LANの中で感染がまん延してしまう危険性がある。
この他、デバイスのセキュリティパッチ適用やマルウェア対策のパターンファイル更新、紛失時にリモート接続して情報を消去する機能を持つ「モバイルデバイス管理」(MDM)の導入などは当然必要だ。教育機関にふさわしくないWebサイトへ接続することを防ぐために、URLフィルタリングの仕組みも必要になる。
大事なのは、学習者の成績情報といった本当に重要な情報を置く校務システムと、授業で利用するシステム(授業用システム)を確実に分離することである。
授業用システムには守るべき情報はほとんどない。機密度は教科書やノートなどの情報とほぼ同じと考えてよく、外部に漏えいしても問題はない。むしろ、そこに漏れてはいけない重要な情報を置かないための設計が必要だ。加えて、校務システムから重要な情報を漏らさない対策が求められる。
重要な情報を不特定多数からアクセスされないようにするのは、セキュリティ対策の考え方の基本だ。
「家庭内IT」を学校へ持ち込むこと
スマートフォンやタブレットの家庭内での普及は、教育機関よりも大きく進んでしまっている。今後もこの状況が逆転することはまずないだろう。前編「中高生の家庭では『LINE禁止』『ネット制限』は“常識”ではない」で述べたように、家庭のIT利用環境がセキュリティを含めて完璧に考慮されていることは考えにくい。むしろ保護者の知らないところで、子どもが実質上“野放し”の状況で利用しているのが現状だろう。
しかし、だからこそ子どもは、さまざまなアプリやサービスを体験しながらITの利用法を学ぶことができる。決められた枠組みの中だけで、自由な発想や考え方を学ぶのは難しい。多様な実体験が成長につながるのだ。
インターネット犯罪などの脅威は現実にあり、メディアが連日のように報道している。脅威は日々進化しており、子どもが十分に立ち向かっていけるのかどうかは分からない。それでも教育機関は、学習者の家庭でのIT活用状況に眼を向けて理解し、それを教育に反映すべきだろう。家庭での先駆的なIT活用と教育機関の教育とを融合することで、はじめて国が目指す教育IT導入の高い目標を達成できると考えている。
執筆者紹介
武田一城(たけだ かずしろ) 日立ソリューションズ
情報セキュリティ、システムプラットフォーム、オープンソースなどさまざまな分野のマーケティング業務に従事。現在は特に学校IT分野における市場調査や企画に重点的に携わる。2011年より日本PostgreSQLユーザ会の理事を兼務し、代表的なオープンソースデータベース「PostgreSQL」の普及啓発活動も行っている。
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