「中小企業はもっとクラウドサービスを活用すべき」
「メールアドレスは全社で1つだった」、そんな会社が実現した“Evernote活用術”(2/2 ページ)
名刺から紙の資料の管理までをEvernoteで管理
HappyPrinters原宿におけるEvernoteの利用方法はシンプルだ。営業や発注などのマニュアル、機材情報、打ち合わせ内容、利用客の情報といった、店舗の運営に必要な情報を共有している。
一方、堀江織物では幅広い活用方法を模索中だ。最初にアカウント保有者全員で取り組んだのが、名刺の管理だという。「名刺をスキャンするだけで画像からテキストを認識してくれるので、後で検索するときに便利なのです」と堀江氏は話す。
またWebで気になった情報は、堀江氏が中心となり積極的にEvernoteを通じて共有しているという。こうすることで、例えば取引先のことが知りたいと思ってEvernoteを検索した時に、これまでに交換した名刺はもちろん、メールマガジンやWebでクリップした情報まで全部検索できる。登録済みの情報に関連する日本経済新聞電子版の記事も表示するので、「取引先が上場した」「社長が変わった」といった情報も把握できる。「私はTwitterの履歴もEvernoteに入れているので、取引先にいつ行ったのかもすぐに検索できますし、他の関連情報が全て見られるので非常に役立ちます」
1つのノートにファイルとそのファイルに関するメモを書き込んだり、注釈やサマリーを付けたり、PDFファイルで送られてきた見積書に直接数字を書き込む機能を使ったりと、堀江氏は幅広くEvernoteを活用している。また取引先がFAXを利用しているケースが今でも多く、堀江氏はインターネットでFAXを送受信する「インターネットFAX」を利用している。インターネットFAXに届いたFAXをEvernoteに転送し、そこで内容を編集して返送もできるので、FAXの送受信もクライアントPCで完結できている。
この他、営業担当者向けの資料や原価計算の方法、各種マニュアル、会社の決算書、競合の資料など、重要な情報も経営層の間で共有している。また、堀江氏の上司である父親は、重要な情報をシステム手帳に書き込んでいる。堀江氏はその手帳を写真に撮り、Evernoteに入れて重要なワードをノートに入力し、後で検索できるようにしているという。
また堀江氏は海外出張用のテンプレートを作成し、オフラインでも利用できる状態にしている。「出張に必要な情報は大体決まっています。パスポートのコピーや持ち物リスト、展示会情報、フライト情報、ホテル情報、予定表、訪問する顧客の連絡先など、全て1つのノートにまとめて入れます。出張時に撮影した写真やメモ、展示会場でもらったカタログもスキャンして同じノートに入れるようにしています」。こうしておくと、帰国後、Evernoteにある情報だけで出張報告書も簡単に作成できるという。
利用してもらうためのおぜん立て
堀江氏自身はかなりのEvernoteアクティブユーザーだが、なじみのない他のエンドユーザーに対して、どのようにしてEvernoteを浸透させたのだろうか。
HappyPrinters原宿に関しては、「業務マニュアルやスキャナーなど必要なものは全て私が準備し、すぐに使える状態にしておきました」と堀江氏は述べる。スタッフは、Evernoteを使い、同氏が用意した業務マニュアルを確認したり、利用客の名刺をスキャナーで取り込んだりしている。Evernoteは店舗運営に必要な情報のみを入れ、店舗の運営をスムーズにするためのインフラとして活用している。
一方、堀江織物では、できるだけ活用の幅を広げるべく、「これまで紙ベースで管理していた資料や名刺を、スキャンしてもらうところから始めました」と堀江氏は語る。「特に名刺は、スキャンしておくと検索できる点が便利なので、エンドユーザーである経営層もEvernoteの良さを実感できたようです」
また経済産業省によるものづくり産業に向けた助成金を申請した際、Evernoteを活用して申請に必要な資料を経営層と共同で作成したという。「膨大な資料を用意する必要があり、それを全てEvernoteで管理しました。仕様書や見積書、実印入りの申請書など、さまざまな資料が必要で、それを全てここで管理できたのは便利でした」と堀江氏は語る。
今でも紙中心のアナログな業務が多い堀江織物だが、堀江氏はできるだけ紙をスキャンするよう呼びかけているという。「スキャンしてEvernoteに入れておけば、検索で簡単に資料が見つかるのです。慣れないエンドユーザーにとっては、こうすれば便利だということを示してあげることで活用の後押しができます。名刺が検索できる便利さは特によく分かってもらえたので、今でも名刺はみんなスキャンしています」
機能拡充より簡単に使いたい
「Evernoteなしには仕事が成り立たない」と断言するほど、Evernoteのヘビーユーザーである堀江氏。サービスに対する不満はないのだろうか。
「Evernoteは、全社員で情報を管理するサービスというよりも、個人で集積した知識をまとめるサービスという色合いが濃いです。会社全体で管理する場合、グループウェアの方が向いているかもしれません」と、堀江氏は冷静に分析する。
提供元であるEvernoteがさまざまな企業を買収し、サービスが複雑になりつつある点を堀江氏は懸念している。「複雑な機能の拡充は、ヘビーユーザーにはいいかもしれませんが、全社で導入する場合、簡単に使える方がいい。今の状況では、エンドユーザーの作業が多いため全社導入が難しいと感じます」と同氏。ただし、サードパーティーから関連アプリケーションが数多く登場している点は高く評価しており、「Evernote経済圏が出来上がっていて、連係サービスが多いのは助かります」と話す。
堀江氏は、「中小企業はもっとクラウドサービスを活用すべき」だと話す。セキュリティに関しても、自前で対策を立てるより、クラウドの方が安心して任せられるという。今後も同氏は、Evernoteをフル活用して場所に縛られない自由な働き方を続ける考えだ。
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