セキュリティ大幅強化でiOSに対抗
「Android N」は再起動だけで最新OSに、ユーザーの不安を払拭する3つの機能強化とは(2/2 ページ)
ファイルレベルの暗号化
ファイルレベルの暗号化によって、暗号化するデータをより細かく制御できると考えられている。また、現在Androidが使用しているブロックレベルの暗号化と比較して、パフォーマンスも向上する。だが、ルーマニアのマルウェア対策企業Bitdefenderで電子脅威の上級研究者を務めるリウィウ・アルセーヌ氏によれば、ファイルレベルの暗号化機能を備えたAndroid Nもまだセキュリティホールがあるという。
「ファイルレベルの暗号化のデメリットは、使用可能なメモリ容量を増やすスワップ領域の一部に、暗号化されたファイルの暗号化されていないコピーファイルが含まれることだ。攻撃者はこのようなコピーファイルを容易に読み取ることができる」(アルセーヌ氏)
ビアズリー氏は「ファイルレベルの暗号化は、個別のコンポーネントでセキュリティが破られる可能性が高くなる」と警告する。
「ファイルレベルの暗号化は、ブロックレベルの暗号化をするかしないかに対する賢明な妥協案かもしれない。Googleがディスクの暗号化をしないことで、Androidのセキュリティ体制が弱まる懸念もある。Googleがユーザーを完全にファイルの暗号化に依存させることを意図して、一部の機種でディスクの暗号化をしないとすれば、個々のアプリの暗号化構造は破綻し、重要で機微なデータを誤って流出してしまうことが危惧される。ファイルレベルの暗号化が機能するには、全てのコンポーネントで適切に暗号化がなされていることが前提となる」(ビアズリー氏)
シームレスな更新
Googleが「シームレスな更新」と呼ぶAndroid Nの新しいセキュリティ機能は、専門家の間で最大の論点となっている。その原因は、同社がパッチ適用への影響について詳しい情報を提供していないことにある。シームレスな更新は、Googleの「Chrome OS」の更新と似た働きをする。つまり、各デバイスには古いシステムイメージ用と更新済みイメージ用の2つのシステムパーティションが含まれる。Android Nでは、再起動時に更新済みのシステムに自動で切り替わる。
機能的には、ユーザーがパッチやシステムの更新をインストールするときに必要な作業は再起動のみとなる。Googleの発表によると、Android Nにアップグレードする必要がある既存のAndroid搭載デバイスでは、シームレスな更新は利用できないという。その理由は、必要なデュアルシステムをユーザーが作成するのはリスクがあまりに高いからだ。そのため、この機能をサポートするのはAndroid Nを最初から搭載しているデバイスに限定される。
Googleがエンドユーザーに対するAndroidの更新とパッチの配信は、メーカーのカスタマイズや携帯電話会社のテストにより遅れる傾向がある。だが、この変更によってその問題に対処できるかどうかについて、Googleは明言をさけている。
「シームレスな更新がAndroidのエコシステムに効果があるとしても、その変化が目に見えるようになるには数年以上先になるかもしれない」とビアズリー氏は指摘する。
Googleの「Android 6.0 Marshmallow」のβ版は2015年5月末にリリースされ、2015年10月に一般リリースされている。同社の「デベロッパーダッシュボード」によると、Android 6.0 Marshmallowの普及率は7.5%にすぎない。現在は、2014年10月にリリースされた「Android 5.0 Lollipop」が、アクティブなAndroid搭載デバイスの中で36%と最大のシェアを占めている。「シームレスな更新は喜ばしい新機能である。だが、何百万台ものレガシーAndroidデバイスが最新の状態にならない限り、近い将来、既存の導入基盤に対してシームレスな更新が大きな影響を及ぼすことはないだろう」(ビアズリー氏)
ヘベジ氏は、この変更がIT部門社員の悩みの種になることを懸念している。
「シームレスな更新によって、OSを最新状態に保つために必要なユーザーの手間がなくなって便利になる。だが、ITに関わる問題を引き起こす可能性もある。IT部門は最新のOSを使用して、会社が保有する基幹業務アプリケーションが動作するかどうかをテストしたいと考えている。そのため、シームレスな更新による強制作用は好まれない。ただし、脆弱性管理とセキュリティ面では、セキュリティ更新によって最新かつ最高の状態にしておくことは非常に重要だ。Googleがユーザーによる直接更新を携帯電話会社に対してどれだけ推進できるかが見ものだろう」(ヘベジ氏)
Android Nのセキュリティ機能は、純粋なセキュリティのアップグレードというよりは、使用感のアップグレードと捉えることができるとアルセーヌ氏は主張する。
過去の更新プロセスは、アプリを起動して最適化している間、デバイスでダウンタイムが生じていた。そう考えると、シームレスな更新は、使いやすさへの影響を最小限にとどめ、全体の操作感を大幅に向上させる。1度再起動すれば、最新OSのスマートフォンを同じように使い始めることができる。更新がより高速かつシームレスにインストールされるとしても、Googleの脆弱性に対するパッチ配信の遅さという問題はまだ残っている。「脆弱性に対応することは、パッチを配信する迅速なパイプラインを持っていることと同等に重要である。さもなければ、セキュリティの面では何も変わらないも同然だからだ」とアルセーヌ氏は語る。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
「Excel至上主義」の終わらせ方 丸2日の手作業地獄から情シスと現場を救うには
-
2
「Microsoft 365のセキュリティ運用」に関するアンケート
-
3
取手市がVDIと決別した理由 更改費用「4倍超」を約1.7倍に圧縮
-
4
急増する「AIはこう言ってる」マン 判断を狂わせる「AI忖度」を防ぐには?
-
5
221人調査で分かった「情シス最大のストレス」は?
-
6
「Salesforceのテスト自動化ツール」に関するアンケート
-
7
「データストレージの活用方法」に関するアンケート
-
8
「AI時代の統合基盤・エンタープライズAI管理」に関するアンケート
-
9
100億円の「Linux更新」を回避 みずほ銀行が選んだ“おきて破り”のRHEL延命策
-
10
自宅のWi-Fiが「遅い」「途切れる」本当の原因は? Dellが推奨する鉄則
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
年収2000万「クラウドセキュリティのプロ」になれる資格とは
-
2
セキュリティソフトをすり抜ける標的型攻撃メール、不審メールの見破り方とは?
-
3
Windows Updateの通信集中で回線が逼迫、ネットワーク刷新事例に学ぶ解決策
-
4
財務を戦略的組織へ進化させるAI活用術、4つの主要な障壁と解消方法
-
5
「NAS」「SAN」「DAS」は何が違う? いまさら聞けないストレージの基礎
-
6
“あのファイル転送”で暗躍するノーウェアランサム
-
7
標的型攻撃メールを見破るには? サンプル文面を例に傾向を解説
-
8
商用利用の安全性を確保し大量のコンテンツを高速で生成する、AI活用の秘訣
-
9
マンガで解説、1日で生成AI環境を構築できるワークショップの中身とは?
-
10
Dark AIが台頭する時代の新発想、「より高度なAIで対抗する」具体的方法とは?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー